子宮筋腫と卵巣嚢腫

子宮筋腫と卵巣嚢腫

子宮筋腫

子宮の図(子宮筋腫)

子宮筋腫とは

子宮筋腫は子宮にできる良性の腫瘍(しこり)です。女性ホルモンの影響を受けて大きくなるため、女性ホルモンの分泌が盛んになる20歳代以降に発症しやすく、閉経により女性ホルモンが激減すると小さくなっていきます。複数個できることも多く、大きさやできる部位によって症状が異なります。
 

症状

代表的な症状は月経痛が増強したり、月経量が増えたりします。月経量が増えると貧血になるため、貧血原因を検索中に子宮筋腫が見つかることがあります。
また、無症状のこともあります。その他、筋腫のできる部位によって、腰痛や便秘、頻尿になったり、不妊症の原因になることもあります。
 

種類

・漿膜下(しょうまくか)筋腫
子宮の外側に発育するもので、大きくなるまで無症状のことがあります。

・筋層内筋腫
子宮の壁の中に発育するもので、大きくなると月経量が増えたり、月経痛の原因になることがあります。

・粘膜下筋腫
子宮の内側に発育し、小さくても症状が強く、月経量が増えて、貧血になったり、不正出血や不妊症の原因になることがあります。
 

検査・診断

内診(腟からの触診)や超音波検査で診断します。また、粘膜下筋腫の場合には子宮の中にカメラを挿入して、観察することもあります。さらに、貧血の検査をしたり、悪性腫瘍と区別が難しい際には、MRIや腫瘍マーカーの検査などをおこなうこともあります。
 

治療

子宮筋腫が小さく、特に症状のない場合は、治療はせずに定期的な経過観察をすることも一般的ですが、子宮筋腫の大きさ、症状によっては積極的な治療が必要になります。その際には、部位や大きさ、年齢、妊娠希望の有無などに応じて治療法を選択します。

・手術療法
腹腔鏡手術/開腹手術/腟式手術/子宮鏡手術
将来的な妊娠希望がある場合は筋腫のみを摘出し、ない場合は子宮を摘出します。
また、子宮の内側に突出している筋腫の場合には子宮の中にカメラを挿入しながら、子宮筋腫を切除します。
手術について詳しくはこちらをご覧ください

・薬物療法
閉経が近い場合や手術前に子宮筋腫を縮小させる場合などに選択します。
注射剤や内服薬で女性ホルモンの分泌を抑えて閉経状態にすることにより、子宮筋腫を縮小させたり、症状の改善をはかります。ただし、骨粗鬆症のリスクがあるため、長期投与はおすすめできません。
 

卵巣嚢腫

子宮の図(卵巣嚢腫)

卵巣嚢腫とは

卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)は、卵巣から発生する腫瘍の一種で、卵巣の中に液体の入った袋状の病変を形成するものです。袋の中の液体成分の違いによって様々な種類に分けられます。

卵巣嚢腫の多くは良性で、無症状のまま健康診断や妊娠を契機に偶然発見されることが多くありますが、卵巣嚢腫が大きくなるとねじれたり(茎捻転)、破裂したりすることにより、急激な腹痛が出現し、緊急手術が必要になります。
 

症状

小さいうちは無症状で経過することが多いですが、大きくなるにつれて、腹部の違和感や膨満感、下腹部痛、頻尿などを自覚することがあります。また、卵巣嚢腫が卵巣の根本でねじれる茎捻転が起きたり、卵巣嚢腫が破裂したりすると、突然の強い下腹部痛が出現することがあります。
 

種類

卵巣嚢腫の内容物によって、様々な種類に分けられます。

・漿液性嚢胞(しょうえきせいのうほう)
卵巣の中にさらさらした水のようなものがたまるもので、最も多くみられるタイプです。

・粘液性嚢胞
卵巣の中にねばねばした粘液がたまるもので、時に巨大化することがあります。

・成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)
卵巣の中に皮膚や毛髪・歯などの体の他の部位の組織や脂肪がたまるもので、20~30歳代に多く見られます。茎捻転の原因になることもあります。

・卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)
卵巣内に古い血液のような液体がたまるもので、破裂や感染により急激な腹痛がみられることがあります。また不妊の原因になることもあります。
 

検査・診断

超音波検査で卵巣嚢腫の大きさやおおよその状態を確認します。さらに必要に応じてMRIや腫瘍マーカーなどを組み合わせて、卵巣嚢腫の種類や良悪性を予測します。ただし、腫瘍マーカーは数値だけで良悪性を診断することはできず、診断のための補助的検査となります。
 

治療

治療方法は卵巣嚢腫の種類や大きさ、年齢によって異なります。嚢腫が小さく、悪性を疑う所見が乏しい時には、超音波検査などによる定期的な経過観察となりますが、茎捻転や破裂のリスクがあったり、圧迫感や腹痛など何らかの症状を伴う時には積極的な治療が必要となります。また卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)は月経困難症を伴うことも多く、ホルモン剤による縮小が期待できることもあるため、ホルモン療法が選択されることもあります。

・手術療法
腹腔鏡手術/開腹手術
将来的な妊娠希望がある場合は、卵巣温存が可能であれば、卵巣嚢腫のみを摘出する卵巣嚢腫摘出術を選択しますが、妊娠を希望されない場合や卵巣嚢腫の大きさ・性状によって、卵巣卵管を同時に摘出する付属器切除術を選択することがあります。
手術について詳しくはこちらをご覧ください

・ホルモン療法
卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)では、低用量ピルや黄体ホルモンなどのホルモン治療によって縮小させる治療をおこなうことがあります。しかし、卵巣子宮内膜症性嚢胞では長期間でがん化することもあるため、慎重な経過観察が必要です。