消化器疾患センター消化器外科
胃がんや大腸がんなど、消化器系がんの治療
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消化器外科の診療について
河北総合病院 消化器外科は、予約優先となっております。できるだけ現在おかかりの医療機関からの紹介状をご用意の上、診療予約をお取りください。紹介状をお持ちの方は、以下の「紹介外来のご案内 (予約コールセンター)」をご覧ください。
ご予約なく来院されますと、診療の状況により後日の診療予約を設定の上でお帰りいただく場合がございます。
なお、緊急性の高い患者さんにつきましては、まず救急外来で診療させていただきます。
連携医療機関の先生方へ
- ご紹介いただくにあたり、医師のご指定がない場合は、火・木曜日の午前中をご指定ください。園田医師が担当させていただきます。
- 現在、外来が大変混雑しております。事前のご予約がなく直接来院いただきますと、後日の診療予約となる場合がございます。必ず事前にご予約いただきますよう、お願いいたします。
消化器外科について
消化器外科では、大腸がんや胃がんといった消化器(腹部)がん、胆石症や虫垂炎(いわゆる“盲腸”)、そけいヘルニア、痔核(いわゆる“イボ痔”、“切れ痔”)などの手術をおこなっています。治療方針の決定にあたっては、最新の知見に基づき、患者さんの意思を尊重しつつ、なるべく侵襲の少ない最善の治療法を選択します。
また、当院では救急医療センターに数多くの急病患者さんが来院されます。消化器外科でも24時間365日、腹部救急疾患の緊急手術に対応できる体制を整えています。
当院は杉並区の地域医療支援病院として、また杉並地域最大の総合病院として、地域に根ざした医療を心がけています。
対象疾患
- 消化器がん(大腸がん、胃がんなど)
- 胆石症、虫垂炎、胆嚢炎などの腹部良性疾患
- ヘルニア(そけいヘルニア、大腿ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなど)
- 肛門良性疾患(痔、直腸脱など)
- 腹部外傷、一般外傷、など
当院のがん治療について(地域完結型がん治療)
当科では、診断から治療、緩和ケアまで、杉並地域で完結するがん治療をおこないます。
日本は未曾有の高齢化社会を迎えており、がん患者さん、とりわけ大腸がん患者さんが増えてきています。当科では、大腸がんをはじめとして胃がん、食道がん、膵臓がん、肝臓がんなど、腹部の様々な臓器のがん治療をおこなっています。当科では今後のがん患者さんの増加に備えて、がん診療体制を強化しております。
特に大腸がんに関しては治療件数も多く、東京都がん診療連携協力病院に認定されています。2023年4月から大腸がん治療のスペシャリストである園田寛道主任部長が日本医科大学消化器外科より赴任してきました。今後は、当院でもより専門的で質の高いがん治療を受けることができます。大腸がんだけでなく、高難度で、これまで当院では対応できなかったがん手術も日本医科大学消化器外科と連携することにより、すべて対応できる体制となりました。
治療方針の決定にあたっては、共有意思決定:SDM(Shared decision making)を大切にしています。各種がん治療のガイドラインや個々の患者さんの状態を医療者と患者さんで共有し、患者さんに最適な治療法を患者さんと十分話し合って決定します。
手術は患者さんに負担の少ない低侵襲治療として、腹腔鏡手術(後述)を積極的に取り入れています。
抗がん剤治療もがん治療のもう一つの柱です。抗がん剤治療の進歩は、目覚ましいものがあります。手術前後に抗がん剤治療をおこなうことにより治癒(完治)率を高めたり、また完治できない患者さんでも適切な抗がん剤治療をおこなうことにより長期生存を期待できるようになっています。抗がん剤治療は、主に外来通院により日常生活を送りながらおこなうことが可能です。当院では外来に専用の治療室を整備し、がん看護専門看護師、がん薬物療法認定薬剤師も常駐し、患者さんが日常生活の質(QOL)を保ちながら治療が続けられるようにサポートします。
また、がん患者さんはがん以外の病気をお持ちの場合がほとんどです。当院は「がん専門病院」でなく「総合病院」です。高血圧、狭心症、糖尿病など、他の病気をお持ちの患者さんでも、当院で完結した治療を安心して受けていただけます。
腹腔鏡手術
当科では、患者さんに負担の少ない低侵襲治療として、腹腔鏡手術を積極的に取り入れています。腹腔鏡手術はお腹に小さなキズを数ヶ所あけ、高精細のカメラ、手術器具を挿入し、手術をおこなうもので、従来の開腹手術と同等以上の質の手術をおこなうことが可能です。
難易度が高い手術ですが、当科では内視鏡外科学会技術認定医(腹腔鏡手術の指導者を認定する資格)を取得している園田寛道主任部長をはじめとして、腹腔鏡手術に熟練した医師が揃っており、胃切除(胃部分切除、幽門側胃切除、胃全摘)、小腸切除、大腸切除(結腸切除、直腸切除)、虫垂切除、十二指腸潰瘍穿孔閉鎖、胆嚢摘出、肝部分切除、そけいヘルニア、腹壁ヘルニア、腸閉塞、人工肛門造設、直腸脱根治手術などほとんどの手術で腹腔鏡手術を受けることができます。
直腸がんに対する最新の集学的治療(TNT)について
局所進行直腸がんに対する治療として、TNT(Total Neoadjuvant Therapy、トータルネオアジュバントセラピー)が今、注目を集めています。局所進行直腸がんとは、他の臓器に転移はしていないが、がんのできている直腸の周囲に広がりのある直腸がんのことです。TNTとは、手術の前に放射線治療と抗がん剤治療を組み合わせておこなう治療法のことをいいます。
従来の治療法では、まずはじめに手術をして術後に抗がん剤治療をおこないます。しかし進行した直腸がんでは、骨盤という狭い場所にあるために手術で完全にがんを取り切ることが難しく、また術後に合併症が起こると抗がん剤治療が十分におこなえない場合があり、満足のいく治療成績が得られていませんでした。
欧米ではこの問題を克服するために、局所進行直腸がんに対して手術前にTNTをおこない、次々と良好な結果が報告されています。このため現在欧米では、TNTが標準治療(科学的根拠がある、現在利用できる最良かつおこなうことが推奨される治療法のこと)となっています。
当院の園田消化器外科主任部長の前任地である日本医科大学付属病院でおこなったTNTの治療成績では、約60%の患者さんで2/3以上の腫瘍の消失が確認されました。中でも約30%の患者さんに、完全に腫瘍が消失するという驚異的な結果が得られています(いずれも顕微鏡で評価しています)。
TNTの方法は、図のようになります。
はじめの5日間は連日で放射線治療を、引き続き約3ヶ月間の抗がん剤治療をおこないます。この時点で治療の効果を画像で評価し、根治が可能と判断された場合に腹腔鏡で手術をおこないます。なお、放射線や抗がん剤治療は、基本的に外来通院で受けていただきます。日本ではまだ一部のがん専門施設や大学病院でしかおこなっていないTNTですが、今後は当院でも受けていただくことが可能です。直腸がんの患者さんは、ぜひ一度ご相談ください。
- 現在、当院では放射線治療ができないため、中野の東京警察病院と連携して治療をおこないます。2025年6月に開院予定の新病院では、放射線治療が可能になる予定です。
大腸がんに対する大腸ステント治療について
近年増加している大腸がんですが、かなり進行しても症状が出にくいため、単なる便秘だと思っていたら実は破裂寸前の進行大腸がんだった…ということもめずらしくはありません。従来、このような腸閉塞となった大腸がん患者さんには、緊急で人工肛門を作る手術をおこなうことが一般的でした。しかし最近では、大腸ステント治療がおこなわれるようになっています。
大腸ステント治療とは、大腸内視鏡を使って自己拡張型の金属ステント(網目状の金属の筒)を、がんによる狭窄部位に留置する治療法です。外科手術のような全身麻酔は不要で、処置の直後から便が出て、数日で元どおりの生活が送れるようになります。
全身にがんの転移がなく根治手術を予定する場合は、ステントを留置後に一旦退院いただき、約2~3週間後に再入院して、通常の腹腔鏡下手術をおこないます。この方法により、一度も人工肛門をつけることなく治療を受けていただくことが可能です。
※病状により、一時的に人工肛門が必要になることはあります。
また、超高齢の方などで手術を受けることが難しい状態の患者さんでも、ステント治療をおこなうことで人工肛門をつけずに食事をとりながら生活することが可能になります。
部長からのメッセージ
杉並区最大の総合病院の消化器外科として、杉並中野地域にお住まいの方が、住み慣れたこの地域で満足いく治療を安心して受けられるよう努めてまいります。
診療実績(2023年度)
手術件数 | ||
---|---|---|
総手術数 | 693 | |
内 緊急手術数 | 181(26%) | |
悪性腫瘍手術 | ||
総手術数 | 内 腹腔鏡 | |
胃 | 20 | 7 |
大腸 | 64 | 59 |
肝臓 | 13 | 4 |
膵臓 | 9 | 1 |
良性疾患手術 | ||
総手術数 | 内 腹腔鏡 | |
虫垂炎 | 106 | 101 |
鼠径ヘルニア | 119 | 74 |
胆石、胆嚢炎 | 67 | 65 |
肛門良性疾患 | ||
総手術数 | 内 腹腔鏡 | |
直腸脱 | 72 | 69 |
痔核、痔瘻 | 36 | – |
化学療法実績(2023年度) | ||
入院化学療法 | 72 | |
外来化学療法 | 606 |