手外科
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当院における手外科診療
手外科とは、手指や手くびの疾患・障害に対する治療をおこなう分野です。肘の治療も手外科医が得意とする分野です。手は神経・血管・腱など機能に直結する組織が存在する繊細な部位であり、日本手外科学会が認定する専門医が中心となってさまざまなケガや病気の治療をおこなっています。当院には知識・経験が豊富な手外科専門医・指導医が在籍しており、手肘の状態を詳しく診察して、作業療法士を含めたチームとして治療に当たっています。
代表的な疾患
ばね指
腱鞘炎の一種で、指の付け根が痛くなります。指を屈伸する際にひっかかる(バネ症状)ようになり、悪化すると握れなくなったり、指をまっすぐ伸ばせなくなります。中高年女性の母指、中指、環指に好発します。ステロイド腱鞘内注射が有効ですが、再発が少なくありません。何回か注射しても再発を繰り返す場合は手術をお勧めします。むやみに注射を繰り返すと腱が断裂する恐れがあり避けるべきです。
ドケルバン腱鞘炎
腱鞘炎の一種で、手くびの親指側が痛くなります。ステロイド腱鞘内注射が有効ですが、注射しても再発を繰り返す場合は手術をお勧めします。
手根管症候群
中高年女性に好発します。おもに母指から中指がしびれます。両手に発症することも少なくありません。明け方にしびれが強く、痛みを感じる場合もあります。重症化すると母指球筋が萎縮してボタンをしめるなどの動作に支障をきたします。内服、手くびの夜間固定、手根管ブロックをおこなっても3か月以上しびれが続く場合は、手術をお勧めします。大きく分けると手根管開放術、母指対立再建術があり、重症度によって術式を選択します。
肘部管症候群
主に小指がしびれます。肘関節の変形がある人に好発しますが、変形がなくても生じ得ます。重症化すると小指をまっすぐ伸ばせなくなったり、くすり指にくっつけることができなくなったりします。また書字や箸など細かい動作がしづらくなります。保存療法が有効なことは少なく、麻痺は徐々に進行するといわれています。診断が確定したら手術をお勧めすることが多い疾患です。いったん重症化すると手術しても完全に回復することは難しく、重症化する前に治療することが大事です。
ヘバーデン結節
DIP関節(いわゆる第1関節)の変形性関節症をヘバーデン結節といいます。中高年女性に好発します。水ぶくれのような「粘液嚢腫」をともなう場合があります。サプリメントが有効との報告がありますが、大規模調査ではまだ結論が出ていません。変形と疼痛が同時に進行するとは限らず、数年テーピングや塗り薬で治療していると変形は残るけど痛みは改善することをしばしば経験します。痛みが辛くて持続する場合は関節固定手術をおこなうことがあります。
ブシャール結節
PIP関節(いわゆる第2関節)の変形性関節症をブシャール結節と呼びます。関節の動作時痛や可動域制限を生じます。日常生活動作での疼痛が強い場合は人工関節置換術をおこなうことがあります。手術をおこなっても正常な可動域を獲得することは困難ですが、疼痛改善に非常に有用と報告されています。
母指CM関節症
親指の付け根にある関節が加齢や外傷後遺症によって変形して痛みの原因となります。特に爪切りや洗濯ばさみなどをつまむ動作や、瓶・ペットボトルを開ける動作で痛みが増強します。投薬、装具、ステロイド関節内注射などをおこなっても症状が続く場合は、手術治療も選択肢のひとつとなります。手術には関節形成術や関節固定術などがあります。
変形性手関節症
加齢による変形あるいは外傷後遺症として関節が変形することがあります。投薬や装具固定をおこなっても手くびの痛みが辛い場合は、手術をおこなうことがあります。病態に応じて関節形成術や関節部分固定術などを選択します。
関節変形にともなって指を伸ばす腱が断裂することがあります。はじめに小指の伸筋腱が断裂することが多いです。腱断裂が生じた場合には、自然回復は期待できません。それだけでなく放置するとくすり指、中指の腱も順番に断裂するリスクがあります。腱一本断裂した時点で腱移行手術をお勧めします。
関節リウマチ
当院ではリウマチ・膠原病内科が積極的に内科的治療をおこなっています。全身性の病気なので投薬で炎症を抑えることが重要ですが、すでに変形してしまった関節や滑膜炎にともなう関節痛や腱断裂などは整形外科で手術をおこなっています。人工関節置換術や関節形成術、関節固定術、腱移行術など、病態に応じて術式を選択します。
デュピュイトラン拘縮
初期は手掌にしこりやつっぱりを触れるだけですが、進行すると指を伸ばせなくなります。中高年男性の小指やくすり指に好発します。リハビリや投薬をおこなっても進行を確実に防ぐ方法はなく、洗顔などに支障がある場合には手術をお勧めします。
- 「ザイヤフレックス®注射用」は北米以外での供給を停止しています。残念ながら本邦での再開の目処はたっていません。
https://www.asahi-kasei.com/jp/news/2021/me211209.html
テニス肘
物を持ち上げたり、パソコン作業などで肘の外側が痛くなります。一般的に腱鞘炎の一種と説明されていますが、滑膜ヒダ障害や関節不安定性の関与を示唆する報告もあります。もちろんテニスをしない人にも発症します。治療は日常生活動作の工夫や投薬、ストレッチ、リハビリが中心となります。多くは1年くらいすると自然に改善しますので、その間に無理をしてこじらせないことが大事です。ステロイド注射は短期的には有効ですが、長期的な効果はありません。疼痛が1年以上続く場合には手術も選択肢のひとつとなります。
舟状骨偽関節
舟状骨とは手くびの母指側にある手根骨のことで、スポーツなどで転倒した際に骨折しやすい箇所です。舟状骨骨折が骨癒合していない状態を舟状骨偽関節といいます。偽関節になるとギプス固定や投薬では骨癒合は期待できず、手術をおこなう必要があります。偽関節部を新鮮化、骨欠損に骨移植してから、スクリューなどで舟状骨を安定させる手術をおこないます。偽関節のまま長期間放置すると変形性手関節症になると報告されていますので、そうなる前に骨癒合を目指す必要があります。
有鉤骨鉤骨折・偽関節
手のひらの根元が痛くなります。転倒など直接打撲することで生じることもありますが、バット・グラブ・ラケットなどを用いるスポーツで疲労骨折として生じることもあります。プロやハイレベルアマチュアの場合、早期スポーツ復帰を目的として鉤切除手術をおこなうことが多いです。偽関節のまま放置するといずれ指を曲げる腱が断裂することが報告されています。
野球肘
内側型、外側型、後方型に分類されます。肘に対する治療と同時に、再発させないための投球フォームチェックや球数制限、肩甲骨周囲・体幹・股関節などのストレッチ、コンディショニングが重要です。投球禁止が必ず必要となりますので、本人だけでなく保護者、指導者が治療の必要性をしっかり理解することが重要です。
内側型(内側側副靱帯損傷(起始部の小さな裂離骨折を含む))
近年トミージョン手術が有名ですが、成長期の内側型損傷はしっかり休みを取ってリハビリをおこなえば多くの場合は競技復帰できます。
外側型(上腕骨小頭離断性骨軟骨炎)
病期・重症度によって治療法を選択します。軽傷(透亮期)の場合はしっかり休みを取ることで改善が期待できます。投球禁止の期間はレントゲンなどを見ながら判断しますが、残念ながら1年以上に及ぶこともあります。分離期、遊離期になると手術をお勧めしています。ドリリング、骨釘移植、骨軟骨移植など状態に応じて術式を選択します。
後方型(肘頭骨端損傷,疲労骨折)
しっかり休養をとります。超音波刺激を併用することがあります。完全に離開した骨端損傷や骨折は手術が必要です。
橈骨遠位端骨折の後遺症
長母指伸筋腱断裂
母指を伸ばす腱が経過中に断裂することがあります。断裂した腱が自然にあるいはリハビリで回復することはありません。機能回復には手術を要します。固有示指伸筋腱を移行する手術が一般的です。
長母指屈筋腱断裂
母指を曲げる腱も断裂することがあります。人差し指の腱が切れることもあります。こちらも手術が必要となります。病態に応じて腱移植あるいは腱移行を選択します。同時に腱が断裂した原因を探索し、矯正骨切り術や骨内異物除去手術を同時におこないます。
橈骨変形治癒
ある程度の変形は許容される骨折ですが、投薬をおこなったり、装具を用いたりしても疼痛のために日常生活に支障がある場合は手術を考慮します。変形の程度や方向、関節面のズレなどを総合的に判断して、矯正骨切り術、尺骨短縮術、関節形成術、尺骨頭切除術、関節部分固定術、骨移植術などをおこないます。
手指拘縮
橈骨遠位端骨折後に手指が固くなることがあります.経過中に手指を積極的に動かさなかったり、手指のむくみが遷延したことが影響します。いったん拘縮が完成すると治療はなかなか困難です、根気強くリハビリをする必要があります。
手外科 担当医師
診察日時:月曜日 午後 / 水曜日 午前
診察場所:河北総合病院(本院東館) 整形外科外来
担当医師:岡﨑 真人
担当医師経歴
慶應義塾大学医学部卒業
Department of Hand and Peripheral Nerve Surgery, Royal North Shore Hospital, Sydney, Australia 留学
荻窪病院整形外科部長、リハビリテーション科部長、手外科センター長を歴任後、2024年4月河北総合病院診療部長に着任
日本手外科学会認定専門医・指導医
日本手外科学会代議員・学術研究プログラム委員会委員
日本肘関節学会評議員・上腕骨外側上顆炎ガイドライン委員会委員・社会保険等委員会委員
手外科を受診するには
手外科の外来を受診いただくには、紹介状が必要です。現在かかりつけの先生からの紹介状をご用意の上、ご連絡ください。
紹介状をお持ちの方は以下のページをご確認いただき、ご予約をお取りください。