子宮頸がん検診で異常を指摘されたら

子宮頸がん検診で異常を指摘されたら

子宮頸部異形成について

子宮頸部異形成(子宮頸部上皮内腫瘍Cervical Intraepithelial Neoplasia:略してCIN)は子宮頸がんの前段階の病変といわれています。近年わが国の20~30歳代の若年女性に子宮頸がんや子宮頸部異形成の方が急速に増加してきています。子宮頸部異形成はその程度によって軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成(CIN3)に分かれています。この異形成から軽度→中等度→高度→上皮内癌→微小浸潤がん→浸潤がんと段階的に進展していくといわれています。

子宮頸部粘膜の変化

 
これらは子宮頸部へのHPV(ヒトパピローマウイルス)感染によって起こるといわれています。
日本産科婦人科学会HP
 
子宮頸部異形成には症状はなく、頸がん検診によって発見される病気です。検診を受けなければがんの早期発見はできないのです。残念ながら日本の頸がん検診受診率は30%程度と低く、そのため進行した子宮頸がんの状態で病院へ来られる方もまだまだ多い状況です。
 

子宮頸がん検診で異常を指摘されたら

頸がん検診の異常(細胞診の異常)を指摘されて受診していただくとまずはコルポスコープ検査(拡大カメラによる子宮頸部の観察)と組織検査(病変と思われた部分の狙い組織診)をおこないます。当院ではご希望であればご本人にその画像をお見せすることもできます。
また場合によっては異形成の原因であるHPV(ヒトパピローマウィルス)の検査をおこなって結果を確認してから、上記組織診をおこなうことがあります。
 

治療について

CIN1-2については経過観察をおこなうことが多いです。それはその段階であれば自然に治癒していく過程もありうるからです。一方CIN3の場合は20-30%の確率で子宮頸がんへの移行がみられるため、手術治療をおすすめしています。CIN2が長期持続している場合、ハイリスクHPV(とくに16.18型)陽性のCIN2の場合も手術療法を考えます。
通常は子宮頸部を一部きりとる円錐切除という手術をおこないます。
比較的若い患者さんが多いため、今後の妊娠へのリスクも考慮しなくてはいけない場合も多く、当院では若年(40歳未満)、妊娠予定がある、範囲の狭いCIN3、十分にレーザー焼灼可能、など条件を満たせる方にはレーザー蒸散術もおこなっております。
子宮温存の必要のない方の場合、子宮全摘術をおこなうこともあります。
また、まれに検査としての手術もおこないます。細胞の検査では高度異形成、上皮内がんなどが疑われるのに組織診では異常がないか、十分に診断ができない場合(高齢の方や子宮頸部が小さい方)に円錐切除をおこなうことがあります。
円錐切除術、レーザー蒸散術、どちらの手術でも当院では入院管理とし、手術前日にコルポスコピー診にて病変範囲の再確認をおこない、病変の残存なく切除できるよう努めています。手術は30分程度で麻酔科医による麻酔のもと苦痛のない状態でおこなっています。
術後1年間は3~6か月ごとに細胞診をフォローし、3年目までは、半年ごとの綿密なフォローをおこなっています。またフォローアップ時に、病変の残存・再発の早期発見に有用であるとされているハイリスクHPV検査も積極的におこなっています。
 

原因であるHPV感染について

HPV(ヒトパピローマウィルス)はヒトにのみ感染するウィルスで100種以上の種類があります。女性の生殖器関連のものは40種類、さらに子宮頸がんと関連があるもの13種をハイリスクHPVと呼んでいます。ローリスクHPVには良性のいぼである尖圭コンジローマの原因になるものもあります。
近年、ハイリスクHPVは子宮頸がんのみでなく、口腔がん、咽頭がん、外陰・膣がん、肛門がんにも関わりがあることがわかってきています。
日本産科婦人科学会HP

子宮頸部異形成はこのHPVの感染によって引き起こされるといわれています。このHPVは性交渉で感染します。女性の80%は生涯に1度は感染するといわれていますが、ほとんどの場合、一時的な感染でウィルスは自然消失します。一部の方に持続感染がおこり、それが数年~10年程度経過しますと上記のような異形成→がんへの変化が生じてくるといわれています。ハイリスクHPVに感染しても子宮頸がんにまで至るのはごくわずかではあります。しかし、がんにならないに越したことはありません。そのため、感染の予防には性交渉前の頸がんワクチン接種、がんになる前の発見のために定期的な頸がん検診が重要であるといえます。

HPVワクチンについて

こういった点から子宮頸がんワクチンが開発され、性交渉デビュー前の10歳代女性に接種する方針となり現在は世界中で接種がすすめられています。日本でも小学6年生~高校1年生相当の女子を対象として公費の定期接種がおこなわれています。
日本産科婦人科学会HP「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」