クライオバルーンアブレーション

クライオバルーンアブレーション

クライオバルーンアブレーションとは

クライオバルーンアブレーションは、心房細動の根治を目的としたカテーテルアブレーション治療のひとつです。従来からある一般的な治療として、カテーテルにより一点一点火傷させ肺静脈と左房を隔離する高周波アブレーション(RF)という方法があります。それに対し、バルーン状のカテーテルを肺静脈の入口部に当て、亜酸化窒素ガスで-60度、それぞれ約180秒間冷却し凍結させる方法がクライオバルーンアブレーションです。


不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版)
2018 JCS/JHRS Guideline on Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias

 

心房細動とは?

心房細動は、診療で見る大変一般的な不整脈です。健康診断で約90万人といわれていますが、実数ははるかに多いことが予想されます。これのみで命に関わることはありませんが、多くのデメリットが分かっています。※1
心房細動があると、脳梗塞のリスクになります。また、死亡率が上昇します。死因は脳梗塞より、心不全死、突然死が多くなっています。心房細動の10~20%が毎年何らかの理由で入院し、そのうち20~30%の患者さんが、心臓のポンプ機能の低下(左室機能障害)をおこします。心房細動と認知症の関連は最近注目されており、認知機能低下や血管性認知症が生じえるといわれています。また、多くの患者さんは動悸や合併する心不全症状によって、QOL(クオリティーオブライフ)が阻害されていることがわかっています。※2

  • 1.Inoue H, et al.: Int Cardiol 137(2):102-107, 2009
  • 2.JCS/JHRS 2020 Guideline on Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias

 

クライオバルーンアブレーションのメリットとデメリット

クライオバルーンアブレーションのメリットは、以下のとおりです。

  1. 1回の冷却で肺静脈の全周を治療できるので手技時間が短い
  2. 重篤な合併症の心穿孔左房食道瘻の発生が極めて少ない
  3. アブレーションにともなう胸痛などの症状が少ない

 
そして大切なことは、これだけのメリットがありながら、従来からある治療成績が高周波アブレーション(RF)と同等であることです。※3、※4、※5
しかしながら、デメリットもあります。肺静脈隔離術しか適応がないため、心房細動で肺静脈以外にも治療が必要な方(心房粗動併発、右心系・上大静脈隔離が必要など)はクライオバルーンアブレーションだけでは治療できません。また、形が円形なので肺静脈の形が合わないと隔離ができないことがあります。(肺静脈の共通幹など)

  • 3.Akkaya E, et al. J Cardiovasc Electrophysiol. 2018 Mar;29(3):375-384.
  • 4.Kanda, et al. Pacing Clin Electrophysiol . 2020 May 18. doi: 10.1111/pace.139
  • 5.Kuck, K et al. New Engl J Med . 2016; 374(23): 2235-2245

 

クライオバルーンアブレーションを受けるには

クライオバルーンアブレーションは、河北総合病院 循環器内科で実施しております。不整脈でお困りの方は、循環器内科外来をご受診ください。また、不整脈の患者さんを診ていただいている近隣医療機関の先生方におかれましても、どうぞお気軽にご相談ください。