文字サイズ変更

h1タイトル

新人広報と学ぶ
誤嚥性肺炎

広報課の新人が、創立94年の歴史ある河北医療財団や、杉並区のプチ情報をご案内いたします。
 
こんにちは、新人広報 阿佐美です。
厚生労働省が5年ごとにおこなっている人口動態調査。これらの結果として、出生数や死亡数、またその主な死因などが「人口動態調査」として公表されています。2017年から、それまで「肺炎」とひとくくりだった項目が、「肺炎」と「誤嚥性肺炎」とに分かれました。誤嚥性肺炎とは、それだけ特徴のあるものなのでしょうか?

 

目次

・誤嚥性肺炎とは
・誤嚥はどうして起こるのか
・誤嚥性肺炎の予防
 

誤嚥性肺炎とは

誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液などが誤って気道内に入ってしまう「誤嚥」が原因で発症する肺炎です。抵抗力や免疫力が弱っている場合、誤嚥したものに含まれる細菌などが肺の中に入ると、増殖し、炎症を起こします。肺炎球菌や口腔内の常在菌である嫌気性菌が原因となることが多いとされます。
 
肺炎を患っている方の、約7割が75歳以上の高齢者です。また、高齢者の肺炎のうち、7割以上が誤嚥性肺炎といわれています(※1)。2020年の人口動態統計によると、日本人の死因の第6位となっており、年間で男女合わせて4万2千人もの人が肺炎で亡くなっています。

主な死因の構成割合(2020年)

グラフ:主な死因の構成割合(2020年)
(厚生労働省「令和2年(2020) 人口動態統計月報年計(概数)の概況より引用」)

 
今後、誤嚥性肺炎による死亡者は増加が見込まれており、2030年には男性約7万人、女性約5万人まで上昇すると予測されています(※2)。
 
※1.厚生労働省「平成28年6月15日第2回医療計画の見直し等に関する検討会 資料2」より
※2.東京健康安全研究センター「人口動態統計からみた日本における肺炎による死亡について」より
 
3倍近く増えると予想されているのなら、項目として独立するのももっともです。
食べものが気管から肺に入ってしまうこと自体が原因で炎症を起こすのかと思っていましたが、本当の原因はそれらと一緒に入ってきた細菌によるものなのですね。そうすると、気管に入った食べ物を吐き出せたから大丈夫、という簡単なことではないのかな。

 

誤嚥はどうして起こるのか

のどの奥は肺につながる「気管」と、胃につながる「食道」に分かれています。
食べ物がのどの奥に進むと脳に信号が伝わり、脳からの指令で気管の入口がふさがるため食べ物は食道に入ります。それが加齢や病気などによりこの信号や指令がうまく伝わらなくなると、食べ物や唾液が気管に入ってしまい、誤嚥となります。

図:誤嚥はどうして起こるのか

 
様々な理由で、誤嚥は起こります。
 

飲食物を飲み込む力が弱くて誤嚥

加齢による嚥下に必要な筋力の低下、認知機能の低下やうつ病、機能障害により食道に食物をうまく送り込めないなどの理由で嚥下障害が起こり、誤嚥が生じます。
 

胃の中のものが逆流して誤嚥

寝ている時や横たわった時に、胃の内容物が逆流して気管に入ってしまい、誤嚥が生じます。
 

就寝中に唾液を誤嚥

就寝中、口の中に溜まった唾液を飲み込む際に誤嚥が生じます。
寝ている時は無意識のことが多いので、唾液が気管に入り込んでもむせなどは起こらず、誤嚥に気づきません。
 

不顕性誤嚥

食べ物が食道ではなく気管に入ってしまった場合、通常はむせて気管から排出する反射機能が働きます。むせの起きない誤嚥を、不顕性誤嚥といいます。就寝中に起きる、唾液や逆流物の誤嚥も、不顕性誤嚥と呼ばれます。

 
誤嚥は、食べ物を飲み込む時に起こるものとばかり思いこんでいたから、寝ている間の唾液でも誤嚥が起こるとは知りませんでした!
気づかず誤嚥していると思うと、ちょっと怖いな…

 

誤嚥性肺炎の予防

すべての誤嚥が肺炎につながるわけではありません。たとえ誤嚥しても、強い咳でしっかり吐き出すか、細菌が入っても対抗できる体力・免疫力があれば、肺炎に発展しない可能性もあります。
 

口の中を清潔に

口の中が清潔に保たれていないと、肺炎を起こす菌が増殖します。口腔内細菌を最小限にしましょう。
 

誤嚥を予防

食事中の姿勢や、食事の内容にも配慮しましょう。呼吸機能を高めるトレーニングや、飲み込みに必要な筋肉をほぐす体操、唾液の分泌を促すマッサージなども効果的です。
 

免疫力を高める

細菌と戦う力をつけましょう。規則正しい生活や栄養バランスのよい食事などを心がけてください。
 
こちらの動画では、「アクティブサイクル呼吸法」をご紹介しています。痰の喀出を促すことで、誤嚥防止や気道防御機能を高める効果が期待できます。

■【web河健】Lesson.32「アクティブサイクル呼吸法」■

 
歯磨きをさぼることによる悪影響は虫歯か歯槽膿漏くらいしか思いつかなかったけど、そこで増えた菌が肺まで届いて、肺炎の原因になることもあるなんて…身だしなみとしてだけでなく、健康のためにも口腔ケアは大事ですね。高齢者が罹患しやすいとのことですから、家族のことも気にかけていこうと思います。
 

監修:河北総合病院 呼吸器内科副部長 大嶋 ナガミ

呼吸器内科・呼吸器外科

■特色:肺がんの診断から治療まで対応しています。/肺がんを含めた呼吸器疾患の手術は胸腔鏡を用いた低侵襲治療を心がけます。/気胸や膿胸に対して外科的治療や内視鏡的治療を併用して取り組みます。/確定診断が困難な腫瘍性病変に対しては病理診断科と連携し、術中迅速診断をおこなっています。

河北総合病院 呼吸器内科について詳しくはこちら

河北総合病院 呼吸器外科について詳しくはこちら

 

2023.2.8

 


 

関連記事

vol.76 新人広報と学ぶ「気胸 ~呼吸器外科~」(2021.12.8)
vol.37 新人広報と学ぶ「呼吸器内科 ~禁煙外来について~」(2021.3.17)
vol.8 新人広報が伝える「呼吸器外科」(2020.9.18)
 


 

阿佐美

プロフィール
広報課に2020年中途入社。前職はITベンチャーの企画など。医療業界は初めての28才。趣味は舞台鑑賞・食べること・ヨガ。
 


 

  • 本記事は、社会医療法人 河北医療財団 広報課の企画編集により制作し、医師など医療従事者の監修を経た上で掲載しています。
  • 本記事は診療科に関する情報の提供を目的としているものであり、診療・治療行為を目的としたものではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当財団は責任を負いかねます。
  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。また、記事の内容はすべての医療機関に共通するとは限りません。あらかじめご了承ください。
  • 「阿佐美」は、読者の皆さまにわかりやすくお伝えするためのフィクションです。実在しておりません。


 
 
 

TOP