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理事長挨拶

社会医療法人 河北医療財団理事長 河北 博文

現職

  • 社会医療法人 河北医療財団
    理事長(1988年10月31日~)
  • 公益財団法人 日本医療機能評価機構
    理事長 (2016年6月〜)
  • 一般社団法人 東京都病院協会
    名誉会長(2019年6月~)
  • 東京大学大学院医学系研究科
    講師(1991年10月~)
  • 京都大学大学院 医学研究科
    講師(2000年10月~)
  • 慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科
    講師(2005年4月~)

学歴

前職

表彰

挨拶

社会医療法人 河北医療財団 河北総合病院は地域医療を担っていきたいという理念を掲げ、30床の内科、小児科の病院として、1928年に創立されました。当時、結核の患者さんが多く、結核病棟を作り、内科的に対応するのが主な役割でした。その後、時代が変遷し、地域の人の期待も変わり、それに合わせて医学の進歩、医療技術の高度化を取り入れた診療内容の改善、設備等の整備を行なってきました。現在では行政区である杉並区に止まらず、周辺地域を含めた住人のみなさんや患者さんたちが「医療に期待すること」に対して、どのように応えるかが、最大の使命であると考えています。この使命にともない、私どもが掲げる5つの方針をご紹介いたします。

1.地域を考える
2.教育の充実
3.生きがいの実現
4.良い経営
5.地域環境保全

 

1.地域を考える

というのは、これまで私が考えていた地域医療は「いつでも、何でも、相談できる医療」が身近にあるということでした。ところが、昨今の状況を見ますと、それだけでは不充分であると言えます。最近、期待されている地域医療の第一は、「その時、その場で行う医療」。いわゆる、救急医療を確立することです。直接、命にかかわる救急医療というのは、その場で、そのときに対応しなければなりません。しかし、日本の救急医療は片手間な状況であるといわざるをえません。日中の外来・入院診療が主な医療機能であり、その付加機能としてしか救急医療を捉えてこなかった感があります。特に病院医療としての本来の医療は救急医療が本業であるべきではないのかと考え、05年に救命救急センター(ER)を開設しました。

そして、地域の診療所の先生ができない診療を担うことが河北総合病院の役割であると認識しています。言い換えれば、地域医療を支援する病院でなければならず、その為には、地域からの紹介をできるだけ受ける立場として他の医療機関から支援されることも不可欠なのです。河北総合病院の診療各科が自分たちが地域のなかで完結すべき診療と、多少離れていても地域外の高度医療センターなどに紹介すべき診療を区別していくことも、今後は必要だと考えています。

2.教育の充実

とは人を育てることではなく、人が育つものであるべきです。私どもは創立後、早い時期からインターンを受け入れ、医師の教育歴に関しては実績を持っております。当時、無給での受け入れ病院も多い中、彼らの生活を確立できるようにした数少ない病院のひとつでもありました。その後、インターン制度が廃止になり、研修医制度に変わりましたが、1988年に研修医を受け入れる臨床研修病院の指定も取得し、積極的に研修医を採用し、医学、人間教育を推進しています。一方、1971年には看護学校を創立し、看護師の育成にも努力してきました。もちろん、医師、看護師以外の職員に対しての教育プログラムも社会人、組織職員、専門者として各職種、経験、役職に基づいて整備してきました。医療者はプロフェッショナルでなければなりません。プロフェッショナルという言葉は非常に冷たい響きがありますが、プロフェッショナルであることの前提はあくまで、暖かい人間性がもっとも重要視されなければなりません。さらに、柔軟な社会性と高い専門性も前提となります。私は医師、看護師、他の専門職種、事務職員すべてがプロフェッショナルであって欲しいと考えています。

3.生きがいの実現

とは職員に関してのものだけではなく、患者さん、地域の人たちも含めた総合的な「生きがい」のことです。杉並区堀の内に135床の河北リハビリテーション病院があります。リハビリテーションとは「人間の復権」であり、人が人らしく生きるということを確立していくものだと考えています。機能訓練はそのための方法でありそれが目的ではありません。新たな生活を作ることは患者さんにとっても試練であり、まずは患者さんが人として「生きたい」という意思を持つことです。残念ながら、日本のリハビリテーション医療は機能の回復が中心で「人間の復権」という、言い換えればQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の確立に目を向けていませんでした。患者さん自身が、どういう自分でありたいかを考えるところから出発しなければなりません。 リハビリテーションは、「生きがいの実現」の表現の一例でありますが、すなわち、私ども財団は人間一人ひとりが自己を確立し自己実現していくことを支援する組織でありたいと考えます。

4.良い経営

とは私ども財団の存在の継続ということです。財団の存在を継続するということはビジョナリーでなくてはいけません。過去の業績を踏まえ、常に将来を見据え、自分たちのあるべき姿を社会に示し続けることがビジョナリーという言葉の意味です。
経営というと、とかく黒字、赤字という事業活動の経営収支のみを捉える人が多いと思いますが、このことももちろん重要ですが、それはあくまで結果であり、さらに大切なことは継続だと考えています。私どもが、地域から何を期待されているのか、それにどう応えていくのかという理念を実行することが第一であります。医療経営とは理念の実現、日常の活動、そして経営収支の調和が重要であると考えます。

5.地域環境保全

とは、3.の「生きがいの実現」にも結びつくことです。人間が存在しているからこそ、地球環境問題が発生します。人間以外の生物、ウィルスも含めて、彼らは決して地球規模の破壊という現象は起こしません。それはなぜでしょう?存在の歴史を累積しないからです。人間だけが高度に言葉を使うことが出来ます。言葉を使うことが文明を累積することになり、人間が創造してきた文明の累積が地球の自浄能力を超えたことによってもたらされたものが地球環境問題です。
人間一人ひとりひとりの生きることのすべての過程に直接的にかかわっているものが医療です。ですから、医療の視点から地球環境を捉えるということは、一人ひとりの人間が“どのように生きたいか”ということを語り合える医療を目指さなければならないということです。すなわち「生きがい」を追求する医療の確立です。もちろん、高度な医療も必要ですが決してそれだけではありません。医療とは地域の人の期待に応え、個人が安心し、納得し、満足できる医療をまじめに実践することです。「当たり前のことを着実に実行する」ということが、高い価値を持つことであると確信しています。

私どもはパブリック・リレーションズを大切にします

この5つの方針を実行するために、パブリック・リレーションズを創り上げていくことが非常に大切です。それにはまず、私どものアイデンティティの確立が基本となります。アイデンティティとは自分が何者であり、何を考え、何をしようとしているのか、自分自身の言葉で説明できることです。私どもが考えるパフリック・リレーションズ(PR)とは、ただパンフレットを作ればよいというような広告、広報という意味ではありません。自らの理念を地域に浸透させるために、地域社会とどのような関係を保つかを常に思考し、双方向の関係を維持し、私どもからも情報を発信し、地域の方々にも参加していただくということです。たとえば具体的には、医療提供者と患者さんが良いコミュニケーションをとれる場所として「健康生活支援室」を開いています。「健康生活支援室」は、患者さん自身が、自分自身の病気や治療を理解し、生活の中で実践し行動できる「ヘルスリテラシー」を持っていただくことを目的とした場所でもあります。また、公開講座も開催し、地域住民や患者さんに健康や疾患、症状を理解していただくように勤め、行政(区役所、消防署、警察署等)にも出向き、地域医療、救急医療についての連携も深めています。“あたたかく やさしく 人にも 地球にも”という医療を目指すことが私どもの姿勢です。そして、患者さんが医療者に全てを委ねるのではなく、自分の健康は自分の責任であるということが生き方の基本であると考えます。医療を育てるのは患者さんであり、地域なのです。

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