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新人広報と学ぶ
大腸とがん
~消化器内科~

広報課の新人が、創立93周年の歴史ある河北医療財団や、杉並区のプチ情報をご案内いたします。
 
こんにちは、新人広報 阿佐美です。
近年、腸活や腸マッサージなど、腸に関する話題が多くなりました。腸は第2の脳といわれているほど神経細胞の数が多く、脳と腸は緊密に連携しています。腸には大腸と小腸がありますが、今回は「大腸」についてご紹介します。

 

大腸はどんな臓器?

大腸とは

大腸は約1.5mの管腔臓器で、結腸と直腸に分かれています。結腸は更に、盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸に分かれています。
 

大腸の役割

1.水分の吸収と便の排出
結腸は、小腸から液状となって送られてきた内容物から水分を吸収し、直腸に送ります。内容物が送られてきた直腸は、糞便の貯留と肛門からの排便をおこないます。この水分を吸収してから便が排泄されるまでの過程は、通常24~72時間かかるといわれています。
 
2.ビタミンの生成
大腸にいる腸内細菌の中には、ビタミンを合成する能力がある細菌が存在します。8種のビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビオチン、葉酸、ビタミンB12)と、脂溶性ビタミンであるビタミンKが生成されています。
 
3.短鎖脂肪酸の生成
短鎖脂肪酸は、腸内で簡単に消化吸収できない難消化性炭水化物(オリゴ糖、食物繊維類)を腸内細菌が分解することによって生成されます。この短鎖脂肪酸は大腸の粘膜細胞のエネルギー源であり、大腸の粘膜にあるセンサーを刺激し腸管の蠕動(ぜんどう)運動を促進する働きや、水・ナトリウムの吸収促進と粘液の分泌や腸上皮細胞の増殖をおこなっています。
 
では、どうして水・ナトリウムの吸収促進と粘液の分泌や腸上皮細胞の増殖をおこなうとよいのでしょうか?
 

大腸の重要な機能:水・ナトリウムの吸収促進と粘液の分泌

図:便の流れ便は、結腸で水分を吸収しつくられており、他にナトリウムなどの電解質を吸収しています。腸の中の便と腸管壁の間には粘液の層があり、このため便が滑りやすくなります。この粘液層によって便がスムーズに進むことができます。腸管壁に直接触れることなく排便ができるので、便に含まれる菌の侵入を防ぐバリアにもなります。この短鎖脂肪酸が減ると水分の吸収がうまくできず、軟便や下痢を引き起こします。またバリアが弱くなることで感染症にかかりやすくなったり、病気が治りにくくなる可能性が高くなります。
 

腸上皮細胞の増殖
腸上皮細胞は、多くの腸内細菌から腸管の組織を守っているため、増殖することで免疫力を上げることができるといわれています。
 
ビタミンB群などのビタミンの生成をおこなっている上に、免疫力を上げてくれる役割もあるなんて、大腸はとても優秀な臓器ですね!最近、腸活という言葉をよく聞きます。私が趣味でやっているヨガでも、腸の働きをよくするといわれます。どうして腸活をススメられるのか理解をしていなかったのですが、正しく学べたので「なるほど!」と納得できました。
 

腸内環境は人それぞれ

赤ちゃんは産まれたとき、基本的に無菌といわれています。その後、様々な状況下で色々な菌を獲得し、3歳頃までにその人の常在腸内細菌の種類が決まります。お母さんが持っている腸内細菌の種類や、帝王切開か自然分娩か、いつから固形物を食べ始めたか、生まれて6ヶ月ごろまでに抗生物質を飲んだかなど、様々な要因で個人特有の常在腸内細菌が決まります。
 
遺伝子やお母さんの菌などで、生まれる前から腸内細菌は決まっていると思っていました。産まれてすぐの赤ちゃんは、基本的に無菌と知って驚きました!
 

代表的な大腸の病気

感染性胃腸炎(ウイルス性腸炎・細菌性腸炎)

細菌性、ウイルス性、寄生虫・原虫性など原因により分類され、主に下痢・腹痛・嘔吐・発熱などの症状があらわれます。細菌性の場合は相対的に症状は強く、血便をともなう場合があります。
 

潰瘍性大腸炎

大腸に炎症がおこり、腸の粘膜にびらん(ただれ)や潰瘍ができ、下痢・腹痛・血便などの症状があらわれます。主な合併症に、関節炎や結膜炎、胆管炎などがあります。
 

クローン病

口から肛門までの全消化管に炎症性の潰瘍ができ、腹痛・下痢・発熱・体重減少などの症状があらわれます。
 

虚血性腸炎

大腸に流れる動脈の細い枝が閉塞したり狭くなることで、腸の粘膜に血流がいかなくなり、炎症を起こします。50歳以上の女性や高齢者に多いといわれていましたが、近年は若者の発症も増えています。突然の腹痛(解剖学的に左側にできることが多いため左側の腹部が多い)・下痢・血便・微熱・嘔吐などの症状があらわれます。
 

過敏性腸症候群(IBS)

腸に潰瘍や腫瘍などはないのに、便通異常(便秘・下痢)・腹痛が続きます。女性に発症することが多く、近年増加傾向にあります。
 

大腸ポリープ

大腸粘膜から発症する腫瘍です。腺腫、鋸歯状病変(きょしじょうびょうへん)、過誤腫性(かごしゅせい)、その他に分けられます。
 
潰瘍性大腸炎やクローン病など名前は知っていましたが、実際にどんな病気なのかは知りませんでした。実際に自分の腸にできたらと思うと…本当に痛そうですね。腹痛や下痢などのとても苦しい症状があらわれる病気なので、気になる症状が出たら早めの受診を心がけます。
 

大腸がん

国立がん研究センターによると、大腸がんは日本人のがん罹患率1位、女性の死亡率1位となっている疾患で、とてもかかりやすいがんです。 女性の死亡率は1位ですが、死亡数の比較をすると女性は24,070人、男性は27,718人と、男性の方が多いがんでもあります。部位別に見てみると、S状結腸と直腸に多く発生するといわれています。

早期に発見できれば、5年生存率はほぼ100%とされています。しかしながら初期症状がでないことも特徴なので、注意が必要です。
 

大腸がんの部位別発生頻度

図:大腸がんの部位別発生頻度

参考:大腸癌全国登録(大腸癌研究会)

 

症状

初期症状はほとんどありませんが、進行すると血便・腹痛・便秘・下痢・体重減少などの症状があらわれます。
 

リスク因子

生活習慣 喫煙、飲酒、赤身肉(牛・豚・羊など)や加工肉(ベーコン・ハム・ソーセージなど)の摂取過多、野菜や果物の摂取不足、運動不足など
身体的特徴 肥満、体脂肪率が高い

牛肉や豚肉は、日本人の食事には欠かせなくなっています。私も魚よりお肉の方が多い食生活になっているので、バランスのよい食事を心がけようと思います。
 

大腸がんにならないためには

大腸がんの発症リスクを高める喫煙、過度な飲酒、赤身肉や加工肉の摂取過多に気を付け、禁煙やバランスのよい食事を心がけましょう。また大腸がんに対しては、食物繊維を多く含む野菜の摂取量を増やしたり、標準体型を維持する程度の運動をおこなうことがよいといわれています。
 
適切な飲酒量
図:適切な飲酒量
 
わたしもお酒を飲む際は、飲み過ぎないように気を付けようと思います。
 

消化器内科

■診療内容:消化器内科は消化管から肝胆膵まで広い範囲の臓器をあつかう診療科で、内科系では最も患者数が多く、専門とする医師も最も多い科です。/腹部症状(痛み、吐き気、吐血、血便、下痢、腹部膨満感など)や食欲不振、黄疸などの症状に対して対応しております。/健診後の精査の胃内視鏡、便潜血陽性に対する二次検査としての大腸内視鏡も多数おこなっております。
■医師数:常勤医師:7名/非常勤医師:1名
■主要機器設備:Olympus社製各種内視鏡/Olympus社製EUS/小腸用カプセル内視鏡/SIEMENS社製血管造影装置/GE社製造影超音波装置

消化器内科について詳しくはこちら

 

2022.4.13

 


 

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阿佐美

プロフィール
広報課に2020年中途入社。前職はITベンチャーの企画など。医療業界は初めての28才。趣味は舞台鑑賞・食べること・ヨガ。
 


 

  • 本記事は、社会医療法人 河北医療財団 広報課の企画編集により制作し、医師など医療従事者の監修を経た上で掲載しています。
  • 本記事は診療科に関する情報の提供を目的としているものであり、診療・治療行為を目的としたものではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当財団は責任を負いかねます。
  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。また、記事の内容はすべての医療機関に共通するとは限りません。あらかじめご了承ください。
  • 「阿佐美」は、読者の皆さまにわかりやすくお伝えするためのフィクションです。実在しておりません。


 
 
 

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