新人広報と学ぶ
沈黙の臓器、肝臓
~消化器内科~
広報課の新人が、創立93周年の歴史ある河北医療財団や、杉並区のプチ情報をご案内いたします。
こんにちは、新人広報 阿佐美です。
胃という臓器は、脂っこいものを食べたらもたれるし、気に病むことがあったらシクシク痛むし、結構饒舌(じょうぜつ)です。半面、沈黙の臓器といわれているのが肝臓です。確かに、肝臓から自己アピールをされた覚えがありません。どのような臓器なのでしょうか?
肝臓、という臓器
肝臓は、一般的に腹部の右上に肋骨に守られるようにして存在しています。人の体の中で最も大きな臓器であり、重さは体重の約2.5%、成人で1kg以上にもなります。食べ物の摂取から分解・消化、吸収、排出までをおこなう「消化器系」と呼ばれる臓器のひとつです。消化器系は、口、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肛門と続く「消化管」と、その外側にある肝臓、膵臓(すいぞう)、胆嚢(たんのう)で構成されています。
臓器名 | 重さ |
---|---|
肝臓 | 1,000~1,400g |
心臓 | 250~300g |
腎臓 | 100~150g |
脾臓 | 100~120g |
膵臓 | 60~90g |
そんなに大きな臓器だったとは知りませんでした。腸や胃の上に位置していて、胃の曲線と対になる感じ…でも、やはり空気の出入りがある肺や、食べ物が通っていく消化器と違って、ここにある!という感覚がまったくありません。その大きさで、体内でどのような役割を担っているのでしょうか。
肝臓の働き
肝臓は、様々な働きを担っています。
代謝
肝臓は、消化器官から取り込まれた栄養素などの様々な物質を、化学的に作り変える働きをしています。何千という酵素を使い500以上の複雑な化学変化を起こしており、肝臓と同じ働きをする化学工場を、人間はまだ作ることができないといわれるほどです。
- 糖代謝:
糖質は胃や腸で消化吸収され、ブドウ糖となってエネルギー源として使用されます。肝臓はブドウ糖を集めてグリコーゲンを合成し、貯えます。必要に応じて貯えておいたグリコーゲンを再びブドウ糖に変えて体内へ送り出します。 - タンパク質代謝:
タンパク質はアミノ酸に分解され、消化吸収されます。肝臓では、取り込んだアミノ酸を人体に必要な様々なタンパク質に作り替えます。 - 脂質代謝:
脂質は、脂肪酸とグリセリンに分解されて吸収されます。肝臓では、脂肪酸からコレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)などの物質を合成します。合成されたコレステロールは細胞膜やホルモン、胆汁酸を作る材料となり、中性脂肪はエネルギー源となります。
栄養素の貯蔵
肝臓は、合成したグリコーゲンや中性脂肪のほか、血液の赤血球を作るために必要な葉酸や、ビタミンB12なども貯蔵し、必要に応じて体内に送り出しています。必要以上のエネルギーを摂取すると(アルコールの飲み過ぎや、糖尿病、肥満など)、肝臓に脂肪が多く蓄積し、肝臓機能の低下の原因にもなります。
解毒
肝臓には、血液中の有毒物質を分解して無毒化する働きもあります。有害物質には、アルコール、栄養素を代謝する時や過度の運動によって体内で発生するアンモニア、薬などがあります。アルコールを飲みすぎると肝臓によくないといわれるのは、このような解毒の働きをたくさんおこなうことによって肝臓に負担がかかるからです。
胆汁生成
胆汁には、脂質の消化吸収を助ける働きと、肝臓で処理された不要物を排出する働きがあります。肝臓では、コレステロールと胆汁酸から胆汁を作り出しています。
肝臓はとてつもない働き者ですね!擬人化したら寡黙な職人だろうな、きっと…機能しなくなったら大変なことになりそう。肝臓の病気にはどのようなものがあるのでしょうか。
肝臓の病気
肝臓は病気になっても症状が出にくいことから「沈黙の臓器」と呼ばれることもあります。再生力の強い臓器ですが、炎症が慢性化すると元に戻らなくなります。
急性肝炎
肝炎ウイルスやアルコール、薬などによって肝細胞が壊され、炎症が起こる疾患です。原因には、ウイルス性、自己免疫性、薬物性など様々なものがあります。主な症状は、倦怠感、食欲不振、白目や皮膚が黄色っぽくなる黄疸などです。
慢性肝炎
慢性的に肝臓に炎症が生じている疾患です。肝炎が6ヶ月以上持続している状態です。主に急性肝炎が治りきらないために起こりますが、肝硬変や肝がんなどのさらに重い疾患に進展していく場合があるため、早期発見、早期治療が非常に大切です。
肝硬変
慢性肝炎などによって肝臓の細胞が破壊と再生を繰り返すうちに、徐々に繊維状になり肝臓が固くなる病気です。肝臓の働きが低下して、元に戻らなくなります。肝硬変がさらに進行すると、肝がんまで進展する可能性が高くなります。
肝炎や肝硬変の治療は、原則的には原因に対しておこなわれます。ウイルス性の場合は抗ウイルス薬を使い、肝細胞の破壊や炎症を抑えます。バランスの良い食事をとることや、禁酒、激しいスポーツを避けることも大切です。
「沈黙」と言われるほどですから、病気かもと自覚するのは難しそうですね。どうしたら病気を早期に見つけられるでしょうか。
代表的な肝臓の血液検査値
肝臓に障害が起こっても、なかなか症状が現れません。黄疸などの症状が現れてきた時には、かなり症状が進行しています。肝臓の異変には、血液検査で気付くことができます。代表的な検査値をご紹介します。
検査項目 | 概要 | 基準範囲 | 要注意 | 異常 |
---|---|---|---|---|
アルブミン | 肝臓だけで作られるタンパク質で、血液中に最も多く含まれるタンパク質です。肝臓の機能が低下すると値が下がってきます。 | 3.9g/dL以上 | 3.7~3.8g/dL | 3.6g/dL以下 |
AST(GOT) | 心臓、筋肉、肝臓に多く存在する酵素です。肝細胞が壊されると血液中に出てくるため値が高くなります。 | 30 U/L以下 | 31~50 U/L | 51U/L以上 |
ALT(GPT) | 肝臓に多く存在する酵素です。肝細胞が壊されると血液中に出てくるため値が高くなります。 | 30U/L以下 | 31~50U/L | 51U/L以上 |
γ-GTP | 肝臓の解毒作用に関係している酵素です。肝細胞が壊されると血液中に出てくるため値が高くなります。 | 50U/L以下 | 51~100U/L | 101U/L以上 |
総ビリルビン | ビリルビンは、赤血球に含まれる黄色い色素です。肝臓の機能が低下すると値が上がります。 | 0.2~1.2mg/dL |
健康診断で見かける項目ですね。今までは異常値の指摘がないから気にしたことはなかったけれど、それがどういうものかわかると、意識するようになりそう。幸い再生力が強い臓器だそうだから、再生可能なうちに気付いて対応したいですね。
河北総合病院 消化器内科では消化管・肝臓・膵臓・胆道など多くの臓器の疾患を対象にしていますが、消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・肝臓専門医などの専門医が在籍しており高度な検査、治療を迅速におこなっております。
消化器内科■診療内容:消化器内科は消化管から肝胆膵まで広い範囲の臓器を扱う診療科で、内科系では最も患者数が多く、専門とする医師も最も多い科です。/腹部症状(痛み、吐き気、吐血、血便、下痢、腹部膨満感など)や食欲不振、黄疸などの症状に対して対応しております。/健診後の精査の胃内視鏡、便潜血陽性に対する二次検査としての大腸内視鏡も多数おこなっております。 |
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阿佐美
プロフィール
広報課に2020年中途入社。前職はITベンチャーの企画など。医療業界は初めての28才。趣味は舞台鑑賞・食べること・ヨガ。
- 本記事は、社会医療法人 河北医療財団 広報課の企画編集により制作し、医師など医療従事者の監修を経た上で掲載しています。
- 本記事は診療科に関する情報の提供を目的としているものであり、診療・治療行為を目的としたものではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当財団は責任を負いかねます。
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