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新人広報と学ぶ
油断できない失神
~日常生活でおこりえます~

広報課の新人が、創立93周年の歴史ある河北医療財団や、杉並区のプチ情報をご案内いたします。
 
こんにちは!新人広報 阿佐美です。
皆さん、失神の危険性をご存知ですか?「元に戻ったから大丈夫」と受診を控えてしまいがちですが、実は怖い病気が隠れていることがあります。日常生活で失神をよく起こす方や、家族にそういう方がいらっしゃる場合は、ぜひご覧になってください。

 

どうして失神が起こるの?

失神とは、短期間脳の血流が低下してしまうことで、脳の機能が全般的に低下してしまい、意識を失ってしまうものです。通常は、数分以内に回復します。病院を受診する頃には意識が清明であることが特徴の一つで、脳卒中の発作と関係があるケースもあります。意識を失い転倒してしまったことで、頭を地面へ打ち脳出血を起こしてしまう可能性もあります。また、頭部外傷や繰り返し転倒をしてしまう患者さんの中には、失神が隠れているケースも散見されます。
 
失神の発生率は6.2/1000人・年(参考:N Engl J Med 2002;347:878-885)。つまり、1000人の集落があったら1年間で6人ほどが失神します。杉並区の人口で考えると、57.3万人年間の中で3557人が失神している計算になります。恐らく、ほとんどの方が受診をしていません。こう考えると、自分には関係のないこととは思えないですね。意識を失うということはとても重大なことです。失神を放置してしまうことで、命に関わる病気を見逃してしまうのは怖いです。なぜ転んだのかと意識的に疑問に思えるといいですね。
 

失神が起こる原因は?

失神の原因を大きく分けると、神経原性失神:10%、心原性失神:30%、その他の失神:40%(主には起立性低血圧と反射性失神)で分類しています。残りの20%は心因性などになります。

参考:Framingham研究、N Engl J Med. 2002 Sep 19;347(12):878-85

 

参考:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa012407

 
反射性失神患者さんの予後(病気、手術などの経過)は、失神を経験していない方と同じなので心配するものではありませんが、日常生活に支障をきたす場合もあります。失神外来では、失神の原因を調べるために、ヘッドアップティルトという検査をおこない、どのような条件で失神するかの動きを確認し、予防法や対策などを提案しています。
 

心原性失神

心原性失神を放置すると、5年生存率は50%といわれています。そのため、失神した時点でその原因が心臓由来なのかを確認する必要があります。心臓が原因で起こる病気は不整脈、弁膜症、狭心症であることが多いです。
 
不整脈
不整脈を調べるには、心電図検査をおこないます。失神患者さんは、「完全に意識が元に戻っている」ので救急搬送されても、病院の心電図はほとんどが正常です。また、不整脈の話を患者さんにしても、口を揃えて「今まで健康診断で不整脈といわれたことがない」という方が多いです。大切なのは、失神が起きた時に不整脈がでているかどうかであり、通常の生活で不整脈があるかどうかではありません。通常の心電図は10秒程度の記録で終了してしまうため、その10秒間しか評価ができないので、まずはホルター心電図という24時間記録可能な心電図で検査をおこないます。
 
弁膜症
心臓は、4つの部屋に分かれておりそれぞれに扉がついています。それを弁といいます。生まれつき弁の構造に異常がある方もいれば、加齢と共に弁に不具合が生じる方もいます。大動脈弁狭窄症はその1つであり、心臓の出口にある扉が開きにくくなる弁膜症です。これにより、心臓から出ていく血液量が少なくなるので、脳へ向かう血液量も少なくなり失神を起こす原因となります。
 
狭心症
心臓そのものを養う冠動脈という血管の血の巡りが発作的に悪くなる疾患です。その発作が生じた際に、心臓の機能も一時的に低下し失神を起こします。多くは、加齢による動脈硬化ですが、若い方でも冠動脈が痙攣することで発症する方もいます。緊急性の高い疾患なので、失神前に胸痛を自覚していれば早めの受診をしましょう。
 

その他の失神

 
神経調節性失神
神経調節性失神は、血圧の調節がうまくできない方に起きることが多いです。首筋にある頸動脈洞には、血圧や脈拍を調節するのに重要な器官が存在しています。頸部のマッサージやひげ剃りやネクタイの締めすぎなどで頸動脈洞を圧迫してしまった際に徐脈、血圧低下から失神に至ります。他には、排尿や排便、嚥下(えんげ:飲み込む動作)、恐怖や驚きを感じた時などの特定の状況に起こることもあります。
 
起立性低血圧
普段、脳に血液を送っているのは心臓ですが、心臓はポンプとして働いているため、血液を送り出すには心臓にも血液が戻ってくる必要があります。通常、人が寝ている状態から立ち上がると、約500~800mLの血液が体の中心から足側へ一気に移動します。その分心臓に戻ってくる血液が減ってしまうため血圧が低下し、脳へ送り出す血液の量も減ってしまいます。 この際、体の中の様々な代償機能が働いて血圧が下がりすぎることなく元の状態に戻るので立ちくらみで済みます。しかし、この代償機能が働きにくい方は、そのまま血圧が低下しすぎてしまい失神することもあります。この現象を起立性低血圧といいます。
 
一番お伝えしたいことは、失神の原因を調べることが大切だということ。不整脈、弁膜症、狭心症と大きな循環器の病気に気づき、早期に治療をすることができるかもしれないのです。
 

神経調節性失神の特徴

・失神を繰り返している病歴がある
・長時間の立位
・食事中の失神
・混雑している場所、あるいは暑い場所にいたときの失神
・失神前の前兆となる症状の存在:顔面蒼白、発汗、あるいは嘔気・嘔吐などの自律神経が活性化したときの症状
 
緊張すると、顔が真っ青になったり、汗をかいたりしますよね。緊張しすぎて失神してしまう方もいらっしゃるのかな…
 

河北総合病院 分院では、失神外来があります!

河北総合病院 分院 内科外来では、水曜日(第2・4)と木曜日の12:00~失神外来をおこなっています。今回は、当院でできる検査と失神外来を担当している循環器内科 片野 晧介医師にメッセージをうかがいました。
 

当院でできる検査

様々な検査で原因がわからない場合や不整脈による失神を強く疑う場合に、植込み型心電計を使用した検査をおこないます。植込み型心電計は、左胸に植込むことで3年間心電図測定を続けてくれます。24時間では、検知できなかった不整脈が3年間検査をすることでみつかることがあります。植え込む際の処置は、局所麻酔で日帰り手術でおこなうことが可能です。手術時間は、1分ほどで、機器の説明や診察などを含めて多くの方は、1時間ほどで帰宅できます。

提供:メドトロニック株式会社

 

片野医師メッセージ

失神した、もしくは家族など身の回りの人で失神をした人がいる場合は自分で大丈夫と思わずに、受診してください。特に、失神により顔面や頭部を打撲している方は要注意です。失神に関する病気が原因で5年生存率が50%になる可能性があります。失神が原因で今まで健康診断などで見つからなかった病気が見つかるかもしれません。早期発見がとても大切です。
 

失神外来についてはこちら

 

【循環器内科】ページはこちら
■診察内容:心不全をはじめ循環器疾患全般に対応/24時間体制で急性冠症候群に対するカテーテル治療などの緊急対応/末梢動脈疾患(下肢動脈、腸骨動脈、腎動脈など)に対する血管内治療/心房細動はじめ各種不整脈に対するカテーテルアブレーション治療/重症心不全に対する心臓再同期療法/致死性不整脈に対する植込み型除細動器治療/肺血栓塞栓症、深部静脈塞栓症に対する各種治療
■特色:東京都CCUネットワーク加盟/24時間循環器科医師常駐/CCU 6床稼働/末梢動脈のカテーテル治療件数は都内有数/手術適応症例に対して心臓血管外科をはじめ関連職種とのハートチームカンファランスをおこない、最適な治療を提供/ペースメーカ外来、アブレーション外来、末梢動脈疾患外来、動脈硬化外来、失神外来などの専門外来を設置/リードレスペースメーカ、植込み型心電計などの植込み可能
■医師数:常勤9名・非常勤4名
■主要機器・設備:(2室)デジタルシネアンギオ装置/心臓電気生理学3Dマッピングシステム/心臓核医学シンチカメラ/冠動脈CT/トレッドミル/ホルター心電図/心エコー/経食道心エコー/下肢静脈・動脈エコー/ABI/SPP/24時間血圧計/PCPS/IABP

 

2021.6.2

 

阿佐美

プロフィール
広報課に2020年中途入社。前職はITベンチャーの企画など。医療業界は初めての28才。趣味は舞台鑑賞・食べること・ヨガ。
 


 
※本記事は、社会医療法人 河北医療財団 広報課の企画編集により制作し、医師など医療従事者の監修を経た上で掲載しています。
※本記事は診療科に関する情報の提供を目的としているものであり、診療・治療行為を目的としたものではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当財団は責任を負いかねます。
※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。また、記事の内容はすべての医療機関に共通するとは限りません。予めご了承ください。
※「阿佐美」は、読者の皆さまにわかりやすくお伝えするためのフィクションです。実在しておりません。

 
 
 

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