新人広報と学ぶ
おしりのトラブル
~日本人に多い「痔」の話~
広報課の新人が、創立93周年の歴史ある河北医療財団や、杉並区のプチ情報をご案内いたします。
こんにちは、新人広報 阿佐美です。
今回は、あまり大きな声で周囲に相談できない「おしり」のお話です。恥ずかしいからと症状から目をそらして受診が遅れてしまってはいけませんから、どんな症状でどんな治療法があるのか、学んできました!
日本人に多い「痔」
おしりのトラブルの代表とも言える、痔(じ)。日本人の3人に1人が痔に悩んでいるとも言われています。診断や調査方法に一定の基準を作るのが難しいため疫学的な調査はされていないのですが、2011年にQLife(民間調査会社) がインターネットでおこなったアンケートによると、実に75.2%の人が痔で悩んだことがあり、「よく気になる」以上に限ってもその割合は26%となっています。
痔で悩んだことはありますか
出典:QLife「痔の治療」大規模患者調査
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実は多くの人が悩んでいるのですね。まったく気になったことがない人が羨ましいな。
痔の症状や、痔と似た症状がある病気
出血などの症状は、痔ではなくもっと重い病気のサインであることがあります。痔かな、と安易に自己判断せずに、いつもと様子が違ったら早めに専門医に相談しましょう。痔が原因と思ってしまいがちな症状の病気には、以下のようなものがあります。
大腸がん
痔ともっとも間違いやすい病気です。症状は、便に血が混じる、便秘や下痢を繰り返す、残便感があるなどです。がんの中でも、罹患数が多い部位で、男性3位、女性2位となっています。出血量だけでは、痔か大腸がんかの判断はつきません。
直腸ポリープ
直腸にできたポリープが大きくなると、出血の原因になったり、肛門から飛び出したりします。
直腸粘膜脱
排便のいきみにより、直腸(肛門に近い部分の大腸)の粘膜が肛門から脱出する病気です。ひどくなると常に脱出した状態になる場合もあります。
クローン病
口から肛門までの消化管に、潰瘍や線維化した肉芽種ができる原因不明の病気です。主な症状は腹痛や下痢、発熱などで、20~30歳代での発症が多くみられます。痔ろうや裂肛を併存する場合があります。
他にも、潰瘍性大腸炎、虚血性大腸炎、大腸憩室症、皮膚びらん、尖形コンジロームなど、痔と似た症状を呈する病気はたくさんあります。
出血があったけど痔があるからそのせいだろう、と思って放置していたら実は大腸がんだった…ということもあり得るのですね。そもそも痔とは、どういうものなのでしょう?
痔の種類
「痔」とは「肛門の病気の総称」で、「痔核(いぼ痔)」「裂肛(きれ痔)」「痔ろう」の3タイプがあります。最も多いのが痔核で患者さんの5~6割を占めます。裂肛、痔ろうはそれぞれ1~2割程度です。
痔核(いぼ痔)
肛門の血管がうっ血してこぶ状になったものです。形がいぼに似ていることからいぼ痔と呼ばれます。痔核は発生場所により「内痔核」「外痔核」に分けられます。
内痔核:歯状線より直腸側にできた痔核
排便時のいきみが原因となる場合がほとんどです。
外痔核:歯状線より外側にできた痔核
血栓(血まめ)により生じたものは出血や痛みをともなうことがあります。
裂肛(きれ痔)
固い便によって肛門付近が切れたり裂けたりするもので、男性より女性に多く見られます。
痔ろう
肛門の分泌腺が細菌に感染して炎症を起こし、膿を出すおでき状の「ろう管」ができたものです。痔瘻の発端となる肛門周囲膿瘍では、発熱や肛門付近の痛みをともないます。どちらかというと若年~中年に多く、男性に多いのが特徴です。
痔のタイプにも男女差があるものなのですね。女性は便秘がちの人が多いから、固い便をいきんで出そうとすることによるものかな。
痔の治療方法
痔の治療には大きく分けて薬物療法と注射療法、手術があります。多くの痔疾患は便通の調整や薬物療法で改善しますので、いきなり手術をすすめることはあまり多くありません。医師が肛門の状態に応じて最適な方法を選択します。
薬物療法
痔の治療薬には「坐薬」「塗り薬(軟膏・クリーム)」「内服薬」の3種類があります。市販品で十分な効果が得られなかったり、再発を繰り返す場合などは、早めに医師の診断を受けて、症状に合った薬を処方してもらいましょう。
坐薬:肛門に挿入しやすいように紡すい形をしたやわらかい固形の薬。痛み止めや止血の作用があります。
塗り薬:肛門周囲に塗るタイプと注入タイプがあります。痛み止めや止血の作用があります。
内服薬:便秘の時に便をやわらかくする緩下剤や消炎剤、抗生物質などが用いられます。
痔核に対する注射療法
内痔核で出血を繰り返す場合などに、硬化剤を注入して止血させ、痔核を固める治療法です。術後の痛みが少ないのが特徴です。
痔核に対する手術
代表的な手術法の「結紮(けっさつ)切除法」は、痔核に血液を送っている痔核動脈を縛ったうえで、痔核自体を切り取る方法です。注射療法だけでは治せないようなどんなタイプの痔核にも対応できます。
いきなり手術になったら怖いな、と思っていたけれど、指導や薬で改善することもあるのですね。一人で悩んでいないで、まずは医師に相談しないとですね。もし同性じゃないと話しにくい…という女性がいらしたら、河北総合病院 消化器外科には女性医師もおりますので、ご相談ください。
痔を未然に防ぐ日常生活のケア
痔は生活習慣病です。予防のためには、日常の生活習慣を見直すことが大切です。
出典:ジェイドルフ製薬株式会社「おしりSOS」
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病気には早期発見・対応が大事だけど、ならないことが一番ですものね!日常から生活習慣を意識して、おしりで悩むことのない日々を過ごします!
河北総合病院には、大腸肛門病専門医が診察する直腸肛門外来を開設しております。直腸肛門疾患の診療は、専門外来だけではなく、通常の消化器外科外来でもおこなっております。時間の都合のつかない方や急ぎ受診を希望される方は、消化器外科へご相談ください。
消化器外科■診療内容:消化器全般(食道・胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓・膵臓・胆嚢・胆管など)の良性・悪性疾患の手術および内視鏡治療/腹腔鏡などの鏡視下手術を積極的に導入しています/大腸がんに関しては治療件数も多く、東京都がん診療連携協力病院に認定されています/救急外科診療(虫垂炎・胆嚢炎・消化管穿孔・腹膜炎・消化管出血など)/肛門疾患(痔核・肛門周囲膿瘍・痔瘻・直腸脱など):専門外来あり/消化器悪性腫瘍に対する抗がん剤治療:専門医在籍/がん終末期の緩和ケア(チームあり) |
阿佐美
プロフィール
広報課に2020年中途入社。前職はITベンチャーの企画など。医療業界は初めての28才。趣味は舞台鑑賞・食べること・ヨガ。
- 本記事は、社会医療法人 河北医療財団 広報課の企画編集により制作し、医師など医療従事者の監修を経た上で掲載しています。
- 本記事は診療科に関する情報の提供を目的としているものであり、診療・治療行為を目的としたものではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当財団は責任を負いかねます。
- 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。また、記事の内容はすべての医療機関に共通するとは限りません。あらかじめご了承ください。
- 「阿佐美」は、読者の皆さまにわかりやすくお伝えするためのフィクションです。実在しておりません。