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新人広報が伝える
がん診療部

広報課の新人が、創立92年の歴史ある河北医療財団や、杉並区のプチ情報などをご案内いたします。
 
こんにちは!2020年度中途入社の新人広報 阿佐美です。
今回は、7月に新設しました、がん診療部について梅谷がん診療部長にインタビューをしました。

皆さんは、がんって聞いたらどんなイメージがありますか?河北総合病院は、大腸がんの治療件数が多く、東京都がん診療連携協力病院に認定されています。日本人の生涯がん罹患リスクは、2人に1人といわれている時代です。そんな時代の中で1人でも多くの患者さんの治療をめざしていきたいと思います。
 

Q.がん診療部ってどんな科?

がん診療部は、がんの迅速かつ正確な診断、最適な治療計画の策定、診療科の枠を超えた包括的なチーム医療の提供を目的として、横断的な役割を担う部門です。科学的根拠に基づいた最適な集学的治療、個別化治療、低侵襲治療をおこなうためには、内科、外科、放射線科、病理診断科、疼痛緩和内科などが協力する必要があります。また、患者さんの状態に応じた緩和ケアやリハビリテーションをおこなうためには、医師・専門看護師・薬剤師などの協力が必要となります。これらの仕組みを支えることで患者さんの治療効果や生活の質を改善する助けになると考えています。

がん診療部って初めて聞く科ですね。がんの治療は長期戦ってイメージがあります。がんって言葉はよく聞き、芸能人ががんになるとよくテレビで特集されるけど、そもそもがんってどんな病気なんだろう?
 

Q.そもそもがんってどんな病気?

人間の細胞は、決まった場所で、プログラムに従って増殖し、それぞれが特定の機能を発揮します。しかし、そのようなルールに従わずに無限に増殖する能力を獲得してしまった細胞が発生することがあり、それがいわゆる「がん細胞」です。がん細胞が発生する原因は様々ですが、遺伝子の変異が主な原因と考えられています。よく知られているのは放射線、タバコに含まれる発がん物質といった外的要因ですが、細胞分裂の際にたまたま生じた染色体・遺伝子の複製エラー、慢性の炎症、ピロリ菌など特定の感染症も変異の原因となります。ですので、発がん物質に長期間曝露されれば確率は上がりますし、高齢になり複製エラーが増えたり修復力が落ちたりしても確率は上がります。また、生まれつき変異を持っていたり複製エラーを修復する能力が低いといった方もいらっしゃいます。そのような様々な要因によって、無限増殖能を持つがん細胞が日々たくさん発生しますが、その大部分は免疫反応によって排除されると考えられています。そして免疫反応にて排除されなかった一部のがん細胞が、増殖する間にさらに遺伝子変異を蓄積し、組織に浸潤する能力や遠隔転移する能力を獲得して、最終的に生命を脅かす存在となるのです。

放射線やタバコが原因っていうのはよく聞きますね。いつ、誰の細胞がエラーを起こすか分からないから定期的な健診が必要なんですね。定期健診が必要っていうけど、どんな項目を検査すればよいのかな?
 

Q.男女でなりやすいがんの差はあるの?

国立がん研究センターのがん統計は、河北総合病院も含めた全国の病院のがん患者さんの情報が集約された最も正確なものです。この数字を見ますと、罹患率、死亡率には男女差があり、多くは臓器の男女差によるものです。喫煙率の差による違いもあると思います。がん検診などでは費用対効果も考慮する必要がありますので、統計的に多いものを重点的に調べることは当然ですから、このような統計の数字は重要です。しかし、個々の患者さんにとっては、確率の問題ではなく実際に病気にかかるかどうかが問題ですから、確率が低いから心配しなくてよいとは思わないでください。

男女で多いがんの部位を検査項目に増やすっていう手もあるんですね。
 

Q.どうして若い人は進行が早く、お年寄りは進行が遅いの?

「若い人のがんは進行が早くお年寄りは進行が遅い」とまことしやかに言われることがありますが、実際には違います。比較的若年者に発生する胃がんでは非常に悪性度の高いものがあるので、そのようなイメージが定着したのかもしれません。しかし、がんの悪性度は、その遺伝子変異などの個々の内容で決まりますから、千差万別です。決して「もう高齢で進行が遅いから治療しなくても大丈夫」など、間違った思い込みに左右されないようにお願いしたいです。

情報量が多い現代では、間違った知識に左右されることってありますよね。私も梅谷がん診療部長に質問するまで若い人は進行が早いって思っていました。ここでがんステージについて私が調べた内容を確認してもらいました。
 

Q.がんステージとは?

ここでは固形がんについてお伝えします。

がんは発生した段階では肉眼では見えませんが、次第に増殖し、周囲の組織に浸潤してゆき、血流やリンパ流に乗って、または膜を破って散らばるようにして遠隔転移を起こします。がんとして診断可能な最も早期の段階がステージ0またはⅠ(がんの種類で異なります)、遠隔転移を生じた段階がステージⅣです。進行につれてステージが上がってゆくわけですね。ステージⅡ、Ⅲはその途中の段階ですが、定義はがんの種類ごとに詳細に定められており、基本的には「その段階ではどの程度の治りやすさが見込めるか」で決められています。また、例えばステージⅢa、Ⅲb…のように細分類されている場合もあります。ですので、がんの大まかな状態を表現する分かりやすい数字として便利なだけでなく、治療方針を決める上で非常に重要となります。

ということで阿佐美さんがご自分で調べられた内容を見させていただきましたが、医学的には間違っているものでした。たぶん、複雑な内容を素人がまとめ直したためだと思います。ネット検索して上位にヒットした記事の内容なんですよね?一般の方が目にする医学に関する情報には不正確なものが多く、中には儲けるために意図的に誤った治療に誘導する記事さえあります。十分注意して、信頼性の高いページを選ぶ必要があります。とはいっても、そもそも知らないわけですから難しいですね。もっともおすすめしたいのは、国立がんセンターの情報のページを参考にすることです。分かりやすく解説されており、内容も正確です。医学情報に限りませんが、ネット情報では書いてある内容が信頼できるものなのかどうか、まずそこを見極めることが大事なのかなと思います。

あー間違いだった(恥)医療ドラマでよくがんのステージを医師から伝えられているシーンをよく目にしていたけど、ステージの進行度の規定は上記が正しかった。皆さんもネットでは、たくさんある情報の中に医師の監修があるかどうか分からないから本当に気を付けましょう。

私たちが日常生活でがんができる原因ってあるのかな?日差しを浴びたり、こげや添加物を食べるとがんができやすいと聞くけど、本当なのでしょうか?
 

Q.日常生活でがんができる原因はありますか?

「こげたものを食べるとがんになる」と私も子供の頃に教わって、焦がしてしまったトーストの表面をがりがり削って食べた記憶があります。こげをネズミに大量摂取させ発癌実験に成功したことを根拠として、1978年に公益財団法人がん研究振興財団から発表された「がん予防の12か条」に書かれたため、広く信じられてきました。
現在は、以下の「がん予防の新12か条」に改訂されていますので、こちらを参考にしてください。こちらには「こげ」については書かれていません。詳しい説明はがん研究振興財団のホームページに書かれています。
公益財団法人がん研究振興財団

1.たばこは吸わない
2.他人のたばこの煙を避ける
3.お酒はほどほどに
4.バランスのとれた食生活を
5.塩辛い食品は控えめに
6.野菜や果物は不足にならないように
7.適度に運動
8.適切な体重維持
9.ウイルスや細菌の感染予防と治療
10.定期的ながん検診を
11.身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
12.正しいがん情報でがんを知ることから

では、ご質問にある、添加物を食べるとがんになる、は本当でしょうか?私はそうは思いません。少なくとも認可されている食品添加物はすべて発がん性が(ほぼ)ないことが確認されたものばかりです。逆に、天然の野菜や果物には、害虫を忌避するための化学物質が含まれ、その多くには発がん性が確認されています。にもかかわらず、野菜や果物は不足にならないようにすることががん予防に大事だなんて不思議ですね。

日差しががんの原因になるのは、紫外線がDNAを切断しその修復過程のエラーで遺伝子変異が生じるからです。皮膚のメラニンの量などに発がんのリスクは影響されます。ほかにもいろいろありますが、絶対に確実なのはタバコです。様々ながんの原因であることが示されており、まさに百害あって一利なしという代物です。ですので、タバコだけはぜひやめていただくようにお願いしたいです。

「がんができる原因」とは少しずれますが、がんの再発についても少しだけお伝えさせてください。私は外科医ですので、手術をした患者さんを定期的に診察しますが、「がんが再発しないように、手術の後は好きだったお酒も一切やめて、お肉もほとんど食べないように我慢しています」と言われることがあります。そんなときには私は次のように答えます。「がんが再発するかどうかは、手術をした時点で目に見えないがん細胞がすでに広がっていて体のどこかに残っていたかどうかで決まります。ですから、お酒をやめても、お肉をやめても、ほとんど影響しません。それよりも、おいしいものを食べてほどほどにお酒を飲んで、楽しく笑って過ごすほうが免疫力が上がっていいですよ」と。

 
がんは幅広い病気で、日本人の死因第1位の病気です。がんになった際にどうして自分ががんに?、治療にはお金がかかるのではないか、自分の死が近くなったなど不安に思う方がほとんどではないでしょうか?当院を受診していただくことで、そんな不安を取り除き、がんの治療に前向きになっていただける方が増えていったらいいなと思います。総合病院だからできる治療があります。ぜひ、不安に感じる方は、お問い合わせくださいませ。
 

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■診察内容:がん診療各科および検査部などからなるキャンサーボードを主宰し、当院におけるがん診療を統括/がん(固形腫瘍・血液腫瘍)の迅速かつ正確な診断、最適な治療計画の策定、診療科の枠を超えた包括的ながん医療を提供/科学的根拠に基づき、がんの集学的治療、個別化治療、低侵襲治療を提供/進行度に応じて、医師・専門看護師・薬剤師などからなるチームで緩和ケアを提供/がんの進行や治療による身体的な障害並びにこれらに伴う運動療法や生活機能の低下に対し、がんのリハビリテーションをおこないQOLの向上をめざす/がん治療の臨床情報を管理し、各科担当医と協力して治療を最適化し、副作用などの軽減に努め、見落としを根絶する
■特色:総合病院としての強みを生かし、高齢の患者さんや合併症のある患者さんに、QOLとADLを保ちつつ適切な治療/各科の協力と小回りのきく体制を生かして必要な諸検査を短期間で済ませ、初診から診断と治療方針決定までの期間を最小限として速やかに治療を開始/抗がん剤化学療法では、その多くを外来でおこなうことで仕事や日常生活への支障を最小限とする。また、高齢者への積極的な治療/当院での新規診断および治療数(院内がん登録実績)年間1,000件以上/特に大腸がんに関しては治療件数が多く、東京都がん診療連携協力病院に認定/地域の診療所と連携したがん医療をおこなっている
■医師数:常勤2名

 

2020.9.8

 

阿佐美

プロフィール
広報課に2020年中途入社。前職はITベンチャーの企画など。医療業界は初めての28才。趣味は舞台鑑賞・食べること・ヨガ。
 


 
※本記事は、社会医療法人 河北医療財団 広報課の企画編集により制作し、医師など医療従事者の監修を経た上で掲載しています。
※本記事は診療科に関する情報の提供を目的としているものであり、診療・治療行為を目的としたものではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当財団は責任を負いかねます。
※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。また、記事の内容はすべての医療機関に共通するとは限りません。予めご了承ください。
※「阿佐美」は、読者の皆さまにわかりやすくお伝えするためのフィクションです。実在しておりません。

 
 

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