新人広報と学ぶ
和痛分娩(無痛分娩)
~多様性な時代だからこそ、出産方法を選ぼう~
広報課の新人が、創立95年の歴史ある河北医療財団や、杉並区のプチ情報をご案内いたします。
こんにちは、新人広報 阿佐美です。最近よく耳にする無痛分娩(和通分娩)。無痛と聞くと痛みが無くなるの?と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。私も実際にそう思いました。今回はそんな無痛分娩(和通分娩)について紹介します。
目次
・和痛分娩は出産時の痛みは本当に感じないの?
・出産はなぜ痛みを感じるの?
・和通分娩の麻酔方法
・和通分娩のメリット・デメリット
・和通分娩の流れ
・赤ちゃんへの影響はあるの?
和痛分娩は出産時の痛みは本当に感じないの?
和痛分娩(無痛分娩)とは、麻酔を使用することで出産にともなう陣痛を抑えることを目的としていますが、すべての方が完全に無痛・無感覚になるわけではありません。最小限に痛みを和らげることで可能な限り自然な分娩を経験していただくことを目的とした出産方法となるため、河北総合病院では無痛分娩ではなく和痛分娩と呼んでいます。方法としては、硬膜外無痛分娩と呼ばれるものです。
無痛や和痛と聞くと、出産するときに痛みが完全になくなるというイメージを持つ方がいらっしゃるのではないでしょうか。私も初めて聞いた時は完全に痛みがなくなるならやりたいと思いました。ですが、出産のメカニズムから痛みを完全になくすことは難しいということを知り勉強になりました。
出産はなぜ痛みを感じるの?
分娩は、3つの段階に分けられ、段階で痛みが増えていきます。
その前に、胎児を外側に押し出すために発生する子宮の収縮である陣痛が起こりますが、段階によって痛みの種類が異なります。このため、分娩進行に合わせて痛みを和らげる必要があります。
Ⅰ期
陣痛が始まってから子宮の出口が完全に開くまで(内蔵痛)
子宮の収縮や子宮の出口が引き伸ばされることで下腹部に痛みが生じます。子宮周辺にある神経を介して脊髄にまとまって痛みが伝わり、脊髄を上って脳に伝わることで痛みとして感じられます。
Ⅱ期
赤ちゃんが子宮から生まれるまで(体性痛)
腟と外陰部が伸展することで、刺激が腟や外陰部にある神経から脊髄、脳へと伝わって下腹部から外陰部の痛みも感じるようになります。
Ⅲ期
胎盤がでてくるまで
赤ちゃんが産まれてから胎盤が娩出(べんしゅつ)されるまで大体、10~30分ほどかかり、胎盤は自然にはがれて娩出しますが、このとき多少の出血があります。
出産は大変と聞きますが、3段階に分かれて痛みの波がやってくることを知ると、本当に大変なことが分かります。
和通分娩の麻酔方法
一般的には、無痛分娩には硬膜外鎮痛法という麻酔方法が用いられています。硬膜外鎮痛法とは、背骨付近にある硬膜外腔という部位に細くて柔らかい管を挿入し、管を介して麻酔薬を注入する方法です。上記でお話した神経から脊髄に伝わる刺激や背中の痛みを背骨あたりに麻酔薬を入れることで痛みを緩和します。
昨年一年間に全国で産まれた赤ちゃんの1割が無痛分娩で産まれ、23区内ではすでに3割近くが無痛分娩と聞きました。私の友人も無痛分娩で出産したと聞きました。確かに完全に痛みがなくなった訳ではないけど、想像していた出産の痛いイメージとは違う経験ができたと教えてくれました。
和通分娩のメリット・デメリット
メリット
お産の痛み(産痛)を和らげることで、妊婦さんやご家族が抱いているお産に対する不安を取り除きます。産痛を和らげるため、分娩時の血圧上昇を防ぎ、心臓への負担が軽くなることも報告されています。分娩後に産道縫合が必要となった場合にも、鎮痛効果があるため不快感がありません。分娩における体力の消耗を少なくすることで、赤ちゃんのお世話が楽になったという方もいます。
デメリット
当院ではお母さんと赤ちゃんの安全を最優先するため、計画分娩としています。また通常の分娩と異なり、食事や歩行制限があります。子宮口が全部開いてから分娩に至るまでやや時間を要し、吸引分娩となる事があります(全例ではありません)。一時的に血圧が低下し、胎児心音が悪化した場合には、昇圧剤を投与することがあります。
和通分娩の流れ
最初にとても細い針を使用し、皮膚へ痛み止めを打ちます。そして管を入れるための針を刺します、このときに硬膜にごく小さな穴を開け、その後柔らかい管を硬膜外腔へゆっくり挿入します(DPE)。上の処置をする時にはもう皮膚の痛み止めが効いているので痛みはありませんが、押される感じがあります。この硬膜外の管を入れるのは、数分~10分程度の処置です。この管を挿入したときに、最初の痛み止めを投与します。その後麻酔範囲を確認し、正しい位置にカテーテルが挿入留置されているかを判断します。この管だけが体に残りますので、お産中に背中を下にして体勢を横にしたり、体を動かしたりしても大丈夫です。硬膜外の管から薬を注入すると、10分で徐々に鎮痛効果が現れます。一般的な硬膜外カテーテルのみの方法に比べ、DPEでは効果発現が素早く、効果部位も広いことが特徴です。効果が現れはじめたときには、陣痛が弱くなっていることに気付くと思います。当院では和痛分娩用にプログラムされている機器を用いて、1時間に1回は痛み止めを注入します。その後、分娩進行にともない、痛みが強くなってきたときには、妊婦さんご自身でボタンを押して痛み止めを併用注入します。無事分娩が終了し、縫合などの処置が必要な場合には、痛み止めを追加しながらおこないます。分娩後は通常どおりに歩行可能となり食事をとっていただきます。挿入した管は、分娩翌日の採血結果を確認したのちに抜去します。
麻酔の管を入れると身動きが取れないイメージがありましたが、横になったり体を動かすことができるのは楽ですね。
赤ちゃんへの影響はあるの?
胎盤を通じて赤ちゃんに麻酔薬の影響が出ることはほとんどありません。また、仮死状態で生まれる頻度も麻酔をしていない分娩と差はないとされています。ただし、出産はすべての方が同じではないので、急激に麻酔が効いたり、母体の血圧が下がった場合など一時的に赤ちゃんの心音が下がってしまうことはあります。硬膜外投与された麻酔薬による授乳への影響はほとんどありません。
参考:日本産科麻酔学会
監修:産婦人科医長 大橋 昌尚 医師産婦人科■診察内容 |
阿佐美
プロフィール
広報課に2020年中途入社。前職はITベンチャーの企画など。医療業界は初めての28才。趣味は舞台鑑賞・食べること・ヨガ。
- 本記事は、社会医療法人 河北医療財団 広報課の企画編集により制作し、医師など医療従事者の監修を経た上で掲載しています。
- 本記事は診療科に関する情報の提供を目的としているものであり、診療・治療行為を目的としたものではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当財団は責任を負いかねます。
- 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。また、記事の内容はすべての医療機関に共通するとは限りません。あらかじめご了承ください。
- 「阿佐美」は、読者の皆さまにわかりやすくお伝えするためのフィクションです。実在しておりません。