天本宏 人生百年時代の羅針盤③

天本宏 人生百年時代の羅針盤③

△開設時の天本病院(現あいクリニック)

こんにちは。天本宏です。
1980年、37歳の時に多摩市の街中に天本病院を開設しました。
私としてはヨーロッパ流のコミュニティケアを実践するための第一歩でした。
しかし老人病院を建てるという噂を聞きつけた一部の住民から反対運動がおきました。
「ボケや褥瘡(じょくそう)がうつる」「近所を徘徊されたら困る」など、当時は高齢者医療に対する誤解と偏見がありました。
私はみなさんに言いました。
「長生きすれば、誰でもいずれ病気になったり、認知症になることもある。みなさんがそうなった時に、今の生活の場から隔離されて遠くの病院に収容されたらどうでしょうか」と。
多摩ニュータウンはこの先必ず高齢化が進むのだから、その時にこのような病院が必要になることは分かっていました。
そして実際そうなりました。
開設から40年余り。
今はご夫婦や親子二代にわたって通ってくださる地域の方に支えられています。
高齢者を社会から隔絶させる時代から、一員として尊厳を守り、最期の日まで地域で暮らせる時代へ。
私が理想とした構想は、あいセーフティネットとして形作られていきました。(つづく)

(広報誌『あっぱれ』2023年秋号掲載)

△老人病院に当時は珍しかったリハビリ室

第2回のコラムはこちら
第1回のコラムはこちら

執筆者プロフィール


天本 宏(あまもと・ひろし)
医学博士
1943年生まれ。広島県出身。東京慈恵会医科大学卒業
1980年天本病院開設。厚生省老人保健審議会委員、全日本病院協会副会長、日本医師会常任理事などを歴任。
河北医療財団 理事長相談役。

 


2023年10月13日 カテゴリー(財団): コラム・レシピ

ブログカテゴリー

ブログ記事一覧