天本宏 人生百年時代の羅針盤②
こんにちは。天本宏です。
先日80歳の誕生日を迎え、職員を前にこれまでの自分の人生を話す機会に恵まれました。
私は広島で医者の次男坊として生まれました。2歳の時に被爆したので、自分は早く死ぬのではと思い、若いうちにやりたいことをし尽くしました(笑)。
高齢者医療に目覚めたのは医学部の研究室にいた頃です。
当時は認知症がまだ痴呆症と呼ばれ、何科を受診したらよいのかも明確ではなく、家族も困っているような時代でした。
症状が出始めた高齢者は隠されるように郊外の病院に隔離収容され、適切なケアも受けられずに寝たきりにされる。
そんな惨状を当直のアルバイト先で目の当たりにした私は「これはおかしい」と思い、認知症になっても生涯地域で暮らし続けるべきだ、そのための安全網をつくろうと思い始めました。
それがあいセーフティネットの始まりです。
ヨーロッパではすでにコミュニティケアという考えがあり、私はそれを参考にしました。
本人の意思を尊重し、人生の最期までその人らしく生きれるように。そのための医療であり、リハビリであり、自立支援としての介護を提供するということ。
地域の中に居場所を創ろうと決めたのです。(つづく)
(広報誌『あっぱれ』2023年夏号掲載)
前回のコラムはこちら
執筆者プロフィール
天本 宏(あまもと・ひろし)
医学博士
1943年生まれ。広島県出身。東京慈恵会医科大学卒業
1980年天本病院開設。厚生省老人保健審議会委員、全日本病院協会副会長、日本医師会常任理事などを歴任。
河北医療財団 理事長相談役。
2023年7月11日 カテゴリー(財団): コラム・レシピ。
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