新人広報と学ぶ
脳血管内科
~脳卒中について知る~
広報課の新人が、創立92周年の歴史ある河北医療財団や、杉並区のプチ情報をご案内いたします。
こんにちは、新人広報 阿佐美です。
日中の気温差が大きい季節の変わり目には、脳卒中の発症リスクが高いと聞きました。突然起こって命の危険がある病気、という認識しかありませんでしたが、どのような病気なのでしょう。
脳卒中とは
日本人の死因の第4位で、全体の約1割を占め、年間で約10万6千人が亡くなっています(1)。命が助かっても、言語障害や麻痺などの後遺症に悩むことも多く、要介護状態になる原因の第2位となっています(2)。
※出典
(1)厚生労働省、2019年「人口動態統計(確定数)の概況」
(2)厚生労働省、2019年「国民生活基礎調査の概況」
脳梗塞:脳卒中の大半を占めます。脳の血管が詰まることにより血液が十分に供給できなくなり、神経細胞が障害されます。
脳出血:脳の細い血管が破れ、あふれでた血液により神経細胞が障害されます。
くも膜下出血:脳の血管にできた小さな瘤が破れ、脳の表面を覆うくも膜という薄い膜の内側に出血します。
命を救うだけではなく、障害をできるだけ少なくするために、一刻も早く専門的な治療ができる病院にかかることが大切です。自宅で様子を見ている間に、できる治療が少なくなってしまう場合もありますので、すぐに救急車を呼びましょう。
場所は脳の血管ということで共通しているけれど、「詰まる」「破れる」というパターンがあるのですね。そもそも「卒中」がどういう状態かというと、「卒」は「にわかに」「突然」という意味(「卒倒」がそうですね)、「中」は「あたる」という意味で(「命中」や「的中」)、突然に急激な症状を発作的に起こす場合を指すのだそうです。…時代劇で聞いたことがあるような…?
脳卒中の症状
次のような症状が突然起こった場合は、脳卒中が疑われます。
□片側の手足が動きにくい、しびれる感じ
□呂律が回りにくい、言葉が出にくい、相手の言うことが理解できない
□力はあるのに手足がいつものように動かない、歩くとふらつく
□片目が全く見えなくなる、左右の目の視野が一部欠ける、物が二重に見える
□意識がもうろうとする、意識がなくなる
□これまでに経験したことのないような激しい頭痛
脳卒中が疑われる場合には、脳への血流をたもつために体を横にすることが原則です。意識がない時には、楽に呼吸ができ、吐いたものが喉に詰まらないよう、側臥位にして、すぐに救急車を呼びましょう。
とにかく、突然疑わしい症状が出たら、すぐに119番ですね!
河北総合病院には、脳卒中の内科治療をおこなうだけでなく、カテーテルを用いて脳卒中の治療をおこなうことを得意とする「脳血管内科」があります。そこではどんな治療をするのでしょうか。
脳梗塞の治療
脳梗塞は脳血管が詰まり脳細胞が死んでしまう病気です。脳細胞に血液が流れなくなるので酸素や栄養が供給されず、脳細胞が死んでしまいます。太い血管が閉塞すればより多くの脳細胞が死に、より強い症状が出ます。
急性閉塞した太い脳血管を、脳細胞が死滅する(脳梗塞に陥る)前に再開通させれば、症状が劇的に改善する可能性があります。治療方法として、点滴治療(t-PA)とカテーテル治療があります。
点滴治療 t-PA
2005年にt-PAという薬が登場し、それまでの治療から大きく進歩しました。t-PAは、脳の血管を詰まらせていた血栓を溶かし、再び血液を脳の神経細胞に行きわたらせる効果があります。早い段階でt-PAを投与すれば、壊死の範囲を最小限にとどめることができます。ただし、t-PAは脳梗塞を起こしてから4.5時間以内に点滴開始しなければいけません。それを過ぎてから投与すると脳出血を起こす危険性が高くなるとされています。
カテーテル治療
血管内治療はt-PAが受けられない場合や、太い血管に大きな血栓が詰まっていてt-PAの効果が得られにくい場合などにおこなわれます。カテーテルと呼ばれる細い管を足の付根または腕から血管内に挿入し、血管の内側から病気を治療する技術です。 従来の開頭手術と違い頭を切らないため、全身麻酔をかけずに治療することも可能な場合が多く、開頭手術と比べて身体の負担が小さい治療法です。こちらも、脳梗塞を発症してから24時間以内という時間制限があります。
本当に、時間との勝負なのですね。病院に到着しても、手術の前に検査や診断の時間もありますから、様子見なんてしている時間はありませんね…ちょっと怖くなってきました。ならないように、気を付けるべきことはないのでしょうか。
脳梗塞を防ぐには
脳梗塞の原因はなんでしょう。多くは糖尿病、高血圧、脂質異常、喫煙、そして不整脈です。健康診断を受け事前にこれらを治療し、必要に応じて血液さらさらの薬を内服していただくことで、多くの脳梗塞は防ぐことができます。脳梗塞は起こってしまうと後遺症が残ることも多いので、起こさないことの方が大切です。ぜひ、健康診断を受けましょう。
しかし長期間動脈硬化が進み、すでに血管がかなり細くなっていると、糖尿病、高血圧、脂質異常などを治療し、さらに血液さらさらの薬を服用しても脳梗塞を起こしてしまう場合があります。頚動脈狭窄症(けいどうみゃくきょうさくしょう)といわれるものが、これに当たります。頚動脈が細くなると脳に流れる血液の量が減ったり、動脈硬化のかけらが脳に流れて詰まるなどして脳梗塞を起こします。内服薬でコントロールできない場合、手術療法をおこなうことがあります。頚動脈内膜剥離術(けいどうみゃくないまくはくりじゅつ)といわれる手術と、頚動脈ステント留置術(けいどうみゃくすてんとりゅうちじゅつ)といわれるカテーテル治療があります。
健康に暮らすには、バランスの良い食事と、規則正しい生活をするのが第一ですね。ある病気が、また別の病気の原因になることがあるので、不調は早めに対応したほうがよさそう。
河北総合病院 脳血管内科は2019年1月に新設された脳血管内治療をおこなう診療科です。脳血管内治療は開頭手術と比べ体への負担が少なく、高齢者や合併症を持った方にも施行可能です。状況により局所麻酔でも施行可能な場合もあります。脳外科手術をおこなうか、脳血管内治療をおこなうかは、脳外科医師と相談し決定しています。また当科は脳血管内治療をおこなうのみでなく、脳卒中患者さんの内科治療をおこなう診療科です。
【脳血管内科】 ■診療内容:脳血管内治療(脳梗塞再開通治療、頸動脈ステント留置術、脳動脈瘤コイル塞栓術)/脳血管造影検査/脳梗塞再開通治療に関しては原則24時間対応/急性期脳卒中診療(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血) ■外来診療:常勤医師:1名 ■主要機器設備:血管造影装置/CT/MRI/脳血流シンチ/心エコー/経食道心エコー/頸動脈エコー/ABI ※2021年10月以降、脳血管の治療は神経内科または脳神経外科にて対応しております。 |
阿佐美
プロフィール
広報課に2020年中途入社。前職はITベンチャーの企画など。医療業界は初めての28才。趣味は舞台鑑賞・食べること・ヨガ。
※本記事は、社会医療法人 河北医療財団 広報課の企画編集により制作し、医師など医療従事者の監修を経た上で掲載しています。
※本記事は診療科に関する情報の提供を目的としているものであり、診療・治療行為を目的としたものではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当財団は責任を負いかねます。
※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。また、記事の内容はすべての医療機関に共通するとは限りません。予めご了承ください。
※「阿佐美」は、読者の皆さまにわかりやすくお伝えするためのフィクションです。実在しておりません。