新人広報と学ぶ
皮膚の乾燥
~肌トラブルとスキンケア~
広報課の新人が、創立95年の歴史ある河北医療財団や、杉並区のプチ情報をご案内いたします。
こんにちは、新人広報 阿佐美です。毎日同じスキンケアをおこなっているのに、冬になった途端に肌が乾燥して大変です。保湿しても暖房や冷たい風で気づいたら肌がカサカサになっていたり...。いつの間にか指が切れていてお風呂に入ったらヒリヒリと痛かったり...。そんな冬に起こりやすい肌トラブルについて紹介します。
目次
・皮膚の構造
・寒くなると起こりやすい皮膚トラブル
・トラブルが起こりやすい原因
・皮膚疾患の対処法と主な治療薬
皮膚の構造
体全体を包んでいる皮膚は体の中で唯一、外と接する最も大きな臓器です。外部からの刺激や細菌から体を守るバリアとなり、体内の水分が失われるのを防ぐなど、生命維持に欠かせない役割を果たしています。気温が低いと、冷えや寒さで血液の循環が悪くなり、しもやけや網状皮斑(もうじょうひはん:赤~紫がかった赤色の編み目のような模様)などの血行障害が現れます。また、冷たい風があたることで皮膚の機能が弱くなり、脂腺や汗腺の働きが低下します。そのため水分がでずらくなり、皮膚の表面が乾燥し、かさつきやかゆみ、あかぎれなどができやすくなります。さらに、皮膚のバリア機能は年齢とともに低下しますので、皮膚の調子を整え正常な働きを保つことは老若男女、誰の健康のためにも非常に大切なことなのです。
冷たい風が当たった後に電車やオフィスで暖房の風邪に当たるので、乾燥する要因が多いのが冬ですね。肌を常に健康な状態に保ちたいです。
寒くなると起こりやすい皮膚トラブル
しもやけ(凍瘡)
寒さによる血行障害が原因で、主に発赤、腫脹がでます。かゆみや痛みがでることもあります。手足の指を筆頭に、足の裏のふち、耳たぶ、鼻、頬などにもできます。膠原病の全身性エリテマトーデスや、凍瘡状狼瘡(とうそうじょうろうそう)などでも似た症状が現れるので、たかがしもやけと思わずに注意が必要です。
あかぎれ
手湿疹が悪化し、亀裂が深く、真っ赤に腫れ、ひび割れが重症化した状態です。何もしていなくても痛みを感じます。初期の乾燥の段階で保湿をして皮膚のバリア機能を正常に保つことが重要です。
網状皮斑(もうじょうひはん)
温度の急激な変化により、血管の微妙な調整がうまくいかないことで起こります。真皮と皮下脂肪の境界部にある血管叢(そう)において、血管拡張や充血が起こることで脚などに網目のような紅斑ができます。背景に何らかの疾患が隠れていないか調べることが重要です。ただし、子どもや若い女性の足にも起こりやすく、その場合は一過性で自覚症状がなく出現し、寒い時に増強し温めると消失します。また、ストーブなどが同じ部位に長時間当たった際にもできることがあります。(火だこ)
低温熱傷
湯たんぽ、電気カーペット、カイロなどの使用により起こり、短時間の接触では問題とならない温度でも、長時間接触することによって生じる皮膚傷害です。放置すると、植皮が必要になるほど深い潰瘍を生じることもあります。
乾皮症・皮脂欠乏性湿疹
乾燥することで角質がはがれてしまい、皮膚のバリア機能が失われてしまった状態。 皮膚表面がガサガサしたり、白い粉をふいたり、ひび割れやかゆみ・痛みがでます。
知っている症状から知らないものまでありました。温めるために使用しているカイロや湯たんぽで火傷しないよう気を付けたいですね。
トラブルが起こりやすい原因
気温が低くなり、冷え込むと、温かいお風呂に長時間入ったり、熱いお湯で食器を洗ったりすることが多くなります。しかし、お湯は皮膚表面の皮脂を取ってしまうため、長時間お湯を浴びることはバリア機能低下の原因となります。洗剤に含まれる油落とし成分でも、皮脂は奪われます。また、冷え性の方は、血行不良による皮膚の栄養不足で皮膚トラブルが起こりやすくなります。どんな病気にもいえることですが、睡眠不足や、不規則でストレスフルな生活は、体の抵抗力を弱め皮膚の回復力を低下させます。
次のことには気を付けましょう。
・お湯で手を洗う
・手を濡れたまま放置する
・熱いシャワーを浴びる
・長湯する習慣がある
・洗剤の原液をつけて素手で食器を洗う
・足が冷えやすい、冷え性
・忙しく、ストレスが多い
・食事が不規則
・睡眠不足
温めたくてお湯を使うことで肌が乾燥してしますうのは困ります。
皮膚疾患の対処法と主な治療薬
保湿をしましょう!
入浴後、お湯での手洗い、水仕事後は皮脂が取れて乾燥しやすくなっているため、マメな保湿をしましょう。全身にクリームを塗ったり、手にハンドクリームを塗ったり、保湿効果のある入浴剤もよいです。また、かかともガサガサになりやすいので、就寝前に保湿剤を塗って靴下を履くことも有効です。食器洗いをする際は、ゴム手袋をしてお湯はぬるめにしましょう。保湿剤を塗るときにはすりこまず、1~2回優しくなでて塗布するようにしましょう。すりこむ行為も肌への刺激になります。
保湿剤には下記のようなものがあります。
<モイスチャライザー:角質に水分を与えるもの>
- ヘパリン類似物質
保湿効果が高く、角質の水分含有量を増加させ、皮膚のうるおいを保ちます。血行を良くするはたらきもあります。軟膏、クリーム、ローション、フォーム、スプレーなど剤形が豊富です。 - 尿素製剤
角質に水分を含ませる作用があります。角質の硬くなった部分を取り去る角質融解作用もあります。炎症部位に塗ると刺激や痛みを感じることがあります。 - セラミド
角質の水分保持に重要な細胞間脂質であり、べたつきが少ないです。角質をやわらかくして皮膚の柔軟性を高め、バリア機能を補強し、水分保持作用も優れています。 - ワセリン
角質に水分を付与する作用はなく、皮膚の表面に油脂性の膜をつくり、水分の蒸発を防ぎます。 刺激が少ないため肌のどの部位にも使いやすく、肌が弱い方でも使用できます。べたつきが強く、就寝中などに熱がこもってかゆみが増す場合があります。 - 本記事は、社会医療法人 河北医療財団 広報課の企画編集により制作し、医師など医療従事者の監修を経た上で掲載しています。
- 本記事は診療科に関する情報の提供を目的としているものであり、診療・治療行為を目的としたものではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当財団は責任を負いかねます。
- 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。また、記事の内容はすべての医療機関に共通するとは限りません。あらかじめご了承ください。
- 「阿佐美」は、読者の皆さまにわかりやすくお伝えするためのフィクションです。実在しておりません。
<エモリエント:水分の蒸散を防ぐための“ふた”をするもの>
体を洗うときはこうしよう!
お風呂で体を洗う際は、石鹸やボディソープをよく泡立て、手で身体をなでるように洗いましょう。タオルでゴシゴシと洗うことは気持ちよいですが、皮膚の角層を傷つけ皮膚の炎症につながります。ひどい場合は、色素沈着を起こし肌が黒ずむこともあります(摩擦黒皮症)。乾燥しやすい部分は、石鹸を使用せずともお湯につかるだけで十分汚れは落ちます。洗いすぎに注意しましょう。また、シャンプー、ボディーソープ、石鹸、ハンドソープなども低刺激性のものを選びましょう。
綿100%の下着を!
直接肌に触れる下着などは、吸水性・吸湿性が高い綿100%のものを身に着けるとよいでしょう。ナイロンやポリエステルなどの化学繊維は、丈夫で防寒対策にはよいですが、冬は乾燥により静電気が起こりやすくなるため、肌への刺激を感じチクチクしたりかゆみにつながったりします。また、下着の経年劣化にも注意してください。硬くなった生地が長時間肌に触れると、その摩擦によって皮膚が傷つくことがあります。下着に付いている品質表示をしっかり確認することが大切です。
加湿器を使用しよう!
エアコンやヒーターなどの温風で室内は乾燥していますので、加湿器を利用し、皮膚を乾燥から守りましょう。
参考:あたらしい皮膚科学第3版
参考HP:マルホ株式会社、日本化粧品工業会
監修:皮膚科副医長 嵩 幸恵 医師皮膚科■診療内容 |
阿佐美
プロフィール
広報課に2020年中途入社。前職はITベンチャーの企画など。医療業界は初めての28才。趣味は舞台鑑賞・食べること・ヨガ。