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新人広報と学ぶ
食道がん
~お酒に強い人・弱い人~

広報課の新人が、創立95年の歴史ある河北医療財団や、杉並区のプチ情報をご案内いたします。
 
病気について学んでいると、「タバコ」「お酒」が巨悪のように扱われている疾患が多いことに気づきます。確かにたばこは年々制約されていますし、副流煙が近くにいる人にも影響を及ぼしますが、お酒は「百薬の長」ともいわれますし、そこまで悪者扱いしなくても…と思う気持ちがあります。そこでお酒がリスク要因といわれる「食道がん」について、お酒の影響という点を意識して学んできました。
 

目次

食道がんとは
食道がんの原因
飲酒と喫煙のリスク
お酒が強い人と弱い人

 

食道がんとは

食道は、咽頭(のど)と胃の間をつなぐ管状の臓器です。文字通り、食物の通り道となります。咽頭から胃の入り口まで約25cm、厚さ4mmほどの臓器で、粘膜や筋肉の層で構成されています。
背骨のすぐ前、体の中心部の奥深いところにあり、前面には気管や心臓といった重要臓器があります。
食道がんとは、この食道の粘膜からできるがんです。

 
食道は体の前から見ても、横から見ても内側にあるのですね。後ろからだと背骨、前からだと気管や心臓、横からは肺に挟まれているとあっては、外科手術になるととても大変そう。
 

食道がんの原因

食道がんの大きな原因の1つは生活習慣です。特にリスクと言われている生活習慣が下記になります。

・飲酒
・喫煙
・熱いものや辛いものをよく食べる

食道は口から入った食べ物に直接触れる器官です。
アルコールやタバコ、熱いものや辛いものなどの強い刺激を受けると、食道の細胞の遺伝子が傷つきやすくなります。何度も傷つくとそれを修復するために細胞分裂が頻繁におこなわれますので、その過程でがん細胞ができやすくなるのではないかと考えられます。
 
飲食物に含まれる悪い成分を吸収・蓄積したことが悪影響を及ぼすのかとばかり思っていたけれど、直接的な刺激もよくないのですね。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」なんて言っていてはいけませんね。
 

飲酒と喫煙のリスク

食道がんにつながるリスクである飲酒量と喫煙量の相互作用を示した表です。

(参考文献:Isao Oze , Hadrien Charvat , Keitaro Matsuo , Hidemi Ito , Akiko Tamakoshi , Chisato Nagata , Keiko Wada , Yumi Sugawara , Norie Sawada , Taiki Yamaji , Mariko Naito , Keitaro Tanaka , Taichi Shimazu , Tetsuya Mizoue , Shoichiro Tsugane , Manami Inoue
Revisit of an unanswered question by pooled analysis of eight cohort studies in Japan: Does cigarette smoking and alcohol drinking have interaction for the risk of esophageal cancer?
2019 Oct;8(14):6414-6425. doi: 10.1002/cam4.2514. Epub 2019 Sep 1.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/cam4.2514(参照2023.12.27))

飲酒も喫煙をしない人を1とすると、お酒を飲む人は約3.5倍、大酒飲みの人は約5倍以上、タバコを吸う人は約3倍、ヘビースモーカーは約5倍、食道がんへのリスクが高まります。お酒もたばこもとなると、更に高くなるのがわかります。
 
タバコとお酒の相互の影響はほぼ掛け算ですね。お酒は量の他に、強い弱いにも関係があるのでしょうか。
 

お酒が強い人と弱い人

特に、飲酒をすると顔が赤くなるタイプの人は注意が必要といわれていますが、それはアルコールの代謝に関係しています。
少量の飲酒で起こる顔面紅潮、眠気、動悸、吐き気、頭痛などの不快な反応をフラッシング反応といい、この体質の人をフラッシャーと呼びます。アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドの分解が遅いため、毒性のあるアセトアルデヒドが体に貯まることが主な原因です。フラッシャーは、アルコールを分解する酵素(ALDH2)の働きが弱い遺伝子型の人に多くみられ、日本人の約半数が該当します。
 
しかし、お酒に弱い人でも習慣的に飲んでいると耐性ができて不快な反応が起こりにくくなり、習慣飲酒者になることがあります。
本来お酒に弱い遺伝子を持つ人が習慣飲酒者になると、アセトアルデヒドがなかなか分解されずに体内に長く残り、がんのリスクが高まります。唾液中のアセトアルデヒド濃度は血中濃度よりも高いので、口から食道に至る粘膜は高い濃度のアセトアルデヒドにさらされます。このことも食道がんの発生に関与するといわれています。
 
「お酒に強くなった」という人は危ないのですね。確かに、成人してすぐの頃に比べると、同じくらいの量でもそんなに酔っぱらうことがなくなったような…あまり良いことではなかったのですね。習慣的に飲むことがないよう気を付けます!
 
早期の食道がんは、自覚症状がほとんどありませんが、進行すると、飲食時の違和感、胸や背中の痛み、咳、声のかすれなどの自覚症状が現れます。危険因子に当てはまる人で何か違和感がある場合は、すぐに消化器外科や消化器内科を受診し、検査を受けるようにしましょう。

監修:消化器外科主任部長 園田 寛道 医師

消化器外科

■診療内容
消化器悪性腫瘍に対する手術、抗がん剤治療、内視鏡治療
腹部救急疾患(虫垂炎、胆嚢炎、消化管穿孔、腹膜炎など)に対する手術
肛門疾患、鼠径ヘルニアなどの良性疾患に対する手術

■外来診療
常勤医師:7名

■主要機器設備
腹腔鏡手術装置
ICG蛍光血流装置
上下部内視鏡

河北総合病院 消化器外科についてはこちら

消化器内科

■診療内容
消化器内科は消化管から肝胆膵まで広い範囲の臓器を扱う診療科で、内科系では最も患者数が多く、専門とする医師も最も多い科です。
腹部症状(痛み、吐き気、吐血、血便、下痢、腹部膨満感など)や食欲不振、黄疸などの症状に対して対応しております。
健診後の精査の胃内視鏡、便潜血陽性に対する二次検査としての大腸内視鏡も多数おこなっております。

■外来診療
常勤医師:6名
非常勤医師:3名

■主要機器設備
OLYMPUS社製各種内視鏡
OLYMPUS社製EUS
小腸用カプセル内視鏡
SIEMENS社製血管造影装置
GE社製造影超音波装置

河北総合病院 分院 消化器内科についてはこちら

2024.1.10

 


 

阿佐美

プロフィール
広報課に2020年中途入社。前職はITベンチャーの企画など。医療業界は初めての28才。趣味は舞台鑑賞・食べること・ヨガ。
 


 

  • 本記事は、社会医療法人 河北医療財団 広報課の企画編集により制作し、医師など医療従事者の監修を経た上で掲載しています。
  • 本記事は診療科に関する情報の提供を目的としているものであり、診療・治療行為を目的としたものではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当財団は責任を負いかねます。
  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。また、記事の内容はすべての医療機関に共通するとは限りません。あらかじめご了承ください。
  • 「阿佐美」は、読者の皆さまにわかりやすくお伝えするためのフィクションです。実在しておりません。

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