入院中のお食事
食べる喜びを大切に、安全でおいしいお食事の提供を目指しています
病院食の役割
当院では、以下の3つの項目に重点を置いています。
食欲が低下している方でも、栄養状態を維持・改善できるような食事を提供します。
食事療法が必要な方には、退院後もご自宅で実践していただけるような食事を提供します。
入院中の食事が楽しみになるように、季節に合わせたイベント食も提供します。
日々のお食事
入院中のお食事は、医師の指示のもと管理栄養士が監修し、患者さんお一人おひとりの状態に合わせたものをご用意しています。
ご高齢の方でも食べやすいように挽肉は二度挽きしてやわらかくしたものを使用したり、野菜の食感をいかすための冷却器を導入するなど、「病院食はおいしくない」というイメージから、「今日の食事はなんだろう」と楽しみにしていただけるよう、日々心がけています。「美味しかった」「食べ残しが多かった」など、患者さんの反応は調理師や厨房の管理栄養士と情報共有しながら、メニューに活かしています。
また、HACCP(ハサップ)に基づいた食品衛生管理を徹底し、安心・安全な食事の提供に取り組んでいます。
(手作りメニューの一例:ミートローフ、さつま揚げ)
季節を感じる行事食
お正月・ひな祭り・七夕など、季節の行事に合わせた特別メニューもご用意しています(年5回)。入院生活の潤いになればと、毎年創意工夫を凝らし、ご好評をいただいています。
(敬老の日の一例:天ぷら盛り合わせ・茶碗蒸し他)
(七夕の一例:あなごちらし)※噛む力などに合わせ形態を変えてご提供しています。
リハビリテーションと栄養
入院時には栄養スクリーニングを実施し、個々の患者さんに合わせた必要栄養量の設定を行っています。また、定期的に多職種によるカンファレンスを行い、身体状況や活動量、食事摂取状況などを考慮した、リハビリテーション効果を向上させるための栄養管理を目指しています。
歳を重ねると、さまざまな疾患が食事摂取に影響を及ぼします。噛む力や飲み込む力が低下する、食が細くなり量が食べられなくなるなど、気がついた時には「低栄養」に陥っていることも少なくありません。そのため、低栄養対策に有効的な栄養補助食品を採用し、「天本パワー食」を提供しています。
天本パワー食とは
MCTオイル
食事の量を減らしながらエネルギー補給もできるよう、主食に添加しています。
■エネルギー:108kcal/日
MCTオイル 小さじ1杯(4g)×3食
→ごはん70g、全粥166g、食パン(8枚切)約1枚分に相当
プロテインパウダー
筋たんぱくの合成に効果的な乳清たんぱく質を、汁物に添加しています。
■たんぱく質:7.2g/日
汁物100㏄+プロテイン4g×朝・夕食時
→卵約1個(6.8g)に相当
ご高齢の患者さんが多いため、それぞれの噛む・飲み込む力(咀嚼や嚥下機能)に配慮した食形態にてご提供しています。食物アレルギーをお持ちの方には、必要に応じて個別対応をしています。
食形態について
常菜(普通食)
通常のお食事です。患者さんの年齢を考慮し、食材の切り方や窒息の危険性があると判断した食材を避けるなど、安全面や食べやすさに配慮しています。
▼常菜
▼常菜(一口大)
嚥下調整食
食材や調理法の工夫により、硬さやばらつきなどに配慮しています。必要に応じて『 副食あんかけ(中間のとろみ)』の対応をしています。
▼嚥下調整食4(軟菜食)
かたさ・ばらけやすさ・貼りつきやすさなどがない、箸やスプーンで切れる程度のやわらかさのものを提供しています。
【形態】ふつう、一口大
▼嚥下調整食3(ソフト食)
少量ずつ取り分けるなど、離水に配慮した粥と、形はあるが歯や入れ歯がなくとも口腔内で押しつぶし、食塊形成が容易なものを提供しています。
▼嚥下調整食2-2(ミキサー食)
ミキサーで均質になめらか・べたつかず・まとまりやすく加工したものです。とろみ剤を使用し、かたさを2段階に調整しています。
【形態】ふつう、かため
▼嚥下調整食1j(ゼリー食)
ミキサー粥をゲル化剤で固形化し、つぶがなく、貼りつきやすさや離水に配慮したゼリー状のものを提供しています。たんぱく質含有量は問わないプリン、ゼリー、ムースなどが対象となります。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会
嚥下調整食学会分類早見表
専門的サポート・食支援の取り組み
食事の安心・安全は、多職種連携で取り組んでいます。
院内の栄養委員会では、医師・管理栄養士・調理師・看護師・言語聴覚士(飲み込みなどのリハビリ専門職)・介護職・医事事務職から構成されるメンバーが定期的に集まり、それぞれの専門的知見をもとに、日々のメニュー内容から食器の選定にいたるまで安全性を確認しています。
管理栄養士
入院患者さんの一人ひとりの疾患や栄養状態をきめ細やかに把握し、食事内容や治療に反映させるのが管理栄養士の仕事です。お食事の時間には病棟を巡回しお声がけしながら、きちんと召し上がっているかなどの確認をしています。食欲の低下や食事量が少なさは体力低下につながり、治療やリハビリにも影響します。召し上がれない原因を探り、必要に応じて栄養補助食品を導入するなどして無理なく必要な栄養素が摂れるよう、サポートします。
また、入院時・退院後の個別栄養指導もご希望にあわせて実施しています。
言語聴覚士
言語聴覚士はお口まわりの機能の専門職です。言語・聴覚障害のリハビリを行うイメージがありますが、入院中の患者さんの摂食・嚥下(飲み込み)機能の検査や評価なども担当します。食事中の椅子の角度や姿勢、食材の硬さ・大きさの確認など、さまざまな視点から安全な食事のためのお手伝いをしています。
訪問歯科医
地域の歯科医院と提携し、入院中の患者さんの歯科診療を行っています。ご自身で歯磨きなどが難しい方の口腔ケアや、入れ歯の作成、虫歯の治療なども病棟内でお受けいただけます。食欲の低下は歯の状態に起因していることもあります。口腔内を清潔に保ち、美味しく食べられる歯の状態を維持することは栄養状態の改善にもつながります。
ごあいさつ
「当院では、患者さんのさまざまな疾病や嗜好などに配慮しながら、安心・安全な食事の提供を心がけています。
加齢に伴う疾病や身体機能の変化は、高齢者の健康と栄養状態に大きな影響を与えます。生活していく上で欠かすことのできない『食』を通じて、多職種と連携しながら患者さんの入院生活をサポートさせていただければと考えています。お気軽にお声がけください」
(天本病院栄養科・厨房スタッフ一同)