心不全は治るのか?高齢者で治る確率は?余命や治療について解説

心不全は治る病気なのか?

そのように悩んでいるのではないでしょうか。

特に高齢の家族が心不全を患っていると治るのかどうかや今後について悩んでしまいますよね。

当記事では上記の悩みを抱えている方に向けて心不全が治るのかどうか、その確率について解説します。

心不全の余命や治療についても解説するため、気になる方はぜひ参考にしてみてください。

この記事のまとめ
  • 心不全は治る病気ではなく進行していく病気
  • 息切れ、体重増加、むくみが主な症状
  • 再発を防止すれば、延命も可能
  • 心不全かも?と思ったら医療機関で検査を受け、適切な治療薬を処方してもらうことが必要
目次

心不全とは

心不全とは、『心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気』と定義されています。

実は心不全は病気の名前ではありません。

心臓の機能が低下していき、さまざまな症状が出てくる状態のことを示す言葉となります。

そのため、心不全とひとことで言ってもその人によって見られる症状や原因は異なります。

原因

心不全の原因は大別すると2つあります。

  • 病気によって起こる心不全
  • 加齢によって起こる心不全

病気によって起こる心不全

先天的な心臓の病気に加えて心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患が心不全の原因となります。

また、高血圧といった循環に関する病気や弁膜症、不整脈も心不全発症の原因となります。

加齢によって起こる心不全

高齢になればなるほど心筋が硬くなる傾向にあります。

そうすると、血液を取り込む機能が低下したり、問題が起こったりするため、上記の病気にかかっていなかったとしても、心不全になってしまうのです。

症状

心不全になると心臓から十分な血液送り出せなくなります。

その結果、必要な栄養や酸素が十分に身体に送られなくなってしまい、次のような症状が起こります。

  • 息切れ:坂道や階段で特に起こる
  • 体重増加:1週間で2~3Kgの増加
  • 腹部膨満
  • 足のむくみ
  • 呼吸が苦しく横になれない

ほかにも疲れやすくなったり、手足が冷たくなったり、不眠になったりします。

高齢者の場合、上記の症状のほとんどを「年を取ったから」と思って放置してしまい、気が付いたら症状が進んでしまうケースもあります。

経過

心不全は完治することはありません。

症状が良くなったり、悪くなったりを繰り返しながらだんだんと状態が進行していきます。

心不全の経過は一般社団法人 日本循環器協会が発表している心不全のステージ分類によると次のようになります。

ステージA器質的心疾患のない心不全となるリスクのある病気がなく、心不全の兆候もない
ステージ B器質的心疾患のある心不全のリスクがある心疾患はあるものの、心不全の兆候がない
ステージ C心不全心不全のリスクがある心疾患を有し、
さらには心不全の兆候がある状態
ここから症状が出てくることが多く、
心不全と診断されるのもこのタイミングからとなる。
ステージD治療抵抗性心不全おおむね年間2回以上の心不全入院を繰り返し、
有効性が確立している薬物治療・非薬物治療について
治療ないしは治療が考慮されたにもかかわらず改善が見られない
心不全の末期の状態

心不全が治る確率と再発防止方法

心不全の状態や症状などが分かったところで気になるのが心不全の治る確率です。

心不全は治るのかどうかをここで詳しく解説します。

治る確率

心不全は治らない病気とされています。

そのため、治療を行い、症状の進行をゆっくりにしなければなりません。

ただし、医療の進歩により心不全の死亡率は徐々に低くなっています。

欧米の報告によると、心不全入院後30日の死亡率は1993年と2005年の比較で12.6%から10.8%へと改善したとされています。

つまり、完治はできないものの適切な治療を受けていれば、死亡率を下げることができ、余命を長くできるでしょう。

参考:日本心臓財団

再発防止方法

心不全は再発を防止できれば、ゆっくりと進行していくため、余命の延長などにもつなげられるかもしれません。

再発を防止するためには次のことを意識していきましょう。

薬と経過観察

心不全は、ほとんどの場合において薬物による治療となります。

薬物以外の治療はステージDのみとなるため、薬物の治療は極めて重要です。

心不全となっている理由から、その理由を排除できるような薬が選択されます。

そのため、まずは医療機関を受診して検査を受け、検査結果にあわせて処方された薬を服用し、経過観察をしましょう。

もしも、変わったことがあった場合にはすぐに医療機関を受診するのがよいです。

そのため、かかりつけの医師と常に連携する体制を整えていきましょう。

塩分を控えた食事

塩分の過剰な摂取は血圧の上昇へとつながります。

血圧が上昇すると血液量が増えてしまい、心臓に負荷をかけてしまいます。

そのため、塩分を控えた食事が心不全の再発防止に重要となるのです。

理想の塩分量塩分量
心不全の方6グラム未満
男性7.5グラム未満
女性7.5グラム未満

毎日飲む方が多い味噌汁の塩分量は1杯1.5g程度です。

さらに、好んで食べる方が多い麺類は汁まで飲み干せば1杯当たり8g程度の塩分を含みます。

このことからも、塩分を1日6グラム未満に抑えるためには食べるものや食べ方を工夫する必要があるといえるでしょう。

節酒や禁煙

アルコールやたばこは血圧や血管に影響を及ぼすため、心不全を悪化させるリスクファクターとなります。

そのため、心不全の場合は極力アルコールもたばこも控えるのが望ましいです。

特に喫煙は、心不全による息苦しさを増悪させてしまうため禁煙をしましょう。

また、アルコールについても約1~2ドリンクの飲酒なら心臓に対して保護的に働きますが、それ以上の飲酒は心不全発症率を上昇させてしまうため適度な飲酒を心がけましょう。

しかし、大量の飲酒によってアルコール心筋症を発症したことがある場合には、禁酒が必要です。

適度な運動

心臓が悪いと運動をしてはならないと思われるかもしれませんが、適度な運動は体力の向上や筋力の維持、さらに心臓の負担を減らすことにもつながります。

息切れせず、会話をしながらできる程度の運動を1回30~60分程度、1週間に3回程度行うと良いでしょう。

ただし、急性心不全の症状がみられている場合や、医師から運動を留められている場合には無理に行わないようにしましょう。

心臓に負担をかけない入浴

入浴は心臓へ負担がかかります。

軽症であり、慢性の心不全の方の入浴では、40度の湯温で、10分以内の入浴を心がけましょう。

お風呂に つかるときも肩までつからず胸ぐらいにしたほうが心臓への負担も軽くなるので、おすすめです。

急性心不全や軽症以上の状態である心不全の場合はこの限りではありません。

入浴は、ダイレクトに心臓へ負担をかけるため、入浴については必ず医師に確認をしたうえで行いましょう。

心不全と診断されたときの余命

心不全は5年生存率が50%といわれています。

つまり、心不全と診断された方の約半分が5年以内に亡くなっているという計算です。

心不全によって入院した方の1割弱は入院中にそのまま亡くなっています

心不全はがんなどのほかの病気と比較しても生存率が低い病気であるからこそ、医師の指示を受けながらの薬物治療や再発防止策をとることが重要なのです。

心不全の検査と治療方法

心不全は検査をして原因や状態を把握したうえで適切な治療を受けることが必要です。

心不全の検査と治療方法についてここからは詳しく解説します。

検査

心不全を疑ったときにはまず以下の検査を受けます

検査検査内容
採血糖尿病や高脂血症の有無腎臓や肝臓の機能BNPの濃度を測定し、
心不全の有無や程度を評価します。
胸部レントゲン心臓の拡大肺水腫、胸水の有無を調べる
心臓超音波検査心臓の形や動き、血液の流れを調べます。
心電図検査心不全の原因となる不整脈の有無や、心筋梗塞・狭心症などがないか、
心臓の筋肉に障害がないのかを調べます

さらに重症の心不全の場合においては以下の検査も併せて行います。

  • 心臓カテーテル検査
  • 心臓MRI検査

これらの検査を行い、総合的に心不全の重症度を評価して治療方法を決めます。

治療方法

心不全の治療は、おもに薬物によって行われます。

心不全の治療対象となるのはステージCの方からです。

心不全の薬は主に血管拡張薬β遮断薬抗アルドステロン薬の3つです。

この3つの薬を基本としたうえで症状に合わせてほかの薬も使用します。

重症心不全などによって治療薬が使えない場合には、埋め込み型除細動器や両心室ペーシングを挿入する治療や、カテーテルを挿入して血管を拡張する外科的治療を行います。

心不全の薬

心不全の薬には、上記でもお伝えしたようにさまざまな種類があります。

心不全の薬には次のように心臓の薬と心臓以外の薬に分類されます。

心臓の薬

心臓の薬には心臓の機能を守るお薬と、心臓へ負担をかけるホルモンの分泌を抑える薬があります。

それぞれの薬については以下の通りです。

ホルモンを抑える薬

ホルモンを抑える薬には、β遮断薬と抗アルドステロン薬の2種類があります。

ベータ遮断薬

心臓に障害を与えやすい神経やホルモンの作用を抑制する効果を期待して使用します。

抗アルドステロン薬

アルドステロンという体内に水を保持する役割を持つホルモンの働きをおさえるために使用する薬です。

アルドステロンというホルモンの働きを抑えることで、利尿作用と降圧作用を期待しています。

心臓を守る薬

心臓を守る薬には、血管拡張薬とジギタリスがあります。

血管拡張薬

心臓の血管を拡張させる作用を持つ薬で、血管を拡張することで心臓に血液や酸素を供給しやすくさせます。

くわえて、全身の静脈血管の抵抗を減らし、心臓の負担を軽くすることで、心臓を守る効果が期待できるのです。

ジギタリス

心臓の働きを助ける効果が期待できるお薬です。

心臓の収縮力を増加させる強心作用と迷走神経などへ作用して心拍数を減少させる作用によって心臓の負担を軽くするとして1700年代から使用されてきました。

しかし、副作用や合併症のリスクから使用できない方がいることや、近年の研究により、最近は率先して使われておらず、第二選択として使用されることが多い傾向にあります。

その他の薬

心臓に直接作用はしないものの、心不全に効果が期待できるお薬もあります。

それは次の2種類です。

利尿薬

利尿薬は体内にたまった余分な水分を排出する効果のあるお薬です。

体内に貯まった余分な水分を尿として体外に排出することで、心臓の負担を減らす効果が期待されています。

特に、むくみや呼吸困難の症状に悩まされているという方には症状の改善が期待できるでしょう。

血栓をできにくくする薬

血栓をできにくくするために、抗血小板薬が処方されるケースもあります。

抗血小板薬

血液をサラサラにしてくれる薬です。

抗血小板薬で血栓をできにくくすることで、血流が良くなるため、心臓の負担を軽減できるでしょう。

心不全でよくある質問

ここからは、心不全でよくある質問をまとめました。

心不全について気になることがあるという方はここでおさらいをしておきましょう。

心不全はどのような人に多い?

もともと心臓の病気を持っている方

心不全になるリスクが高まります。

心臓の病気以外にも糖尿病や脂質異常症などの病気も動脈硬化になりやすく、心不全のリスクを高めてしまうのです

高齢者

加齢に伴い心筋が硬くなってくるので、心不全になるリスクは若い頃よりも高まってきます

生活習慣

生活習慣が心不全の引き金になると考えられています。

具体的には、喫煙、飲酒過多、塩分の過剰摂取、運動不足、過労、ストレスが心不全のリスクとなるでしょう。

心不全かどうか疑うべき症状は?

心不全にはさまざまな症状がありますが、心不全かどうかを疑うべき症状は次の通りです。

  • むくみ
  • 呼吸困難
  • 体重増加(1週間で2~3Kg増加)

これらの症状は、心不全意外にも起こる可能性がありますが、特に思い当たる病気がなければまずは心不全を疑っても良いでしょう。

心不全ですぐに病院へ行くべき症状は?

心不全かどうかわからないという方も、心不全と既に診断されている方も、次のような症状の場合は、すぐに病院へ行くべきです。

  • 安静時の息苦しさ・夜間の咳

動いたわけではないのに息が苦しい、咳が出ていて眠れないという場合には心不全の可能性が極めて高いです。

横になると息苦しいけれど、座ると楽になるという場合には、心不全が悪化している可能性があります。

これらの症状により、命のリスクも高まるのでなるべく早く医療機関を受診しましょう。

  • ふらふらする

めまいやふらつきなどは、ほかの病気でも起こりうる可能性はありますが、これが低血圧によるものですと心不全の悪化が考えられます。

血圧を測定して、明らかに低い時も医療機関を早めに受診しましょう。

心不全は治るのかについてのまとめ

心不全は進行性の病気であるため、完治をすることはありません。

しかし、生活習慣を見直したり、適切な治療を受けていれば進行を緩やかにでき、延命につながるかもしれません。

また、心不全の症状は心不全意外の症状でも見られます。

そのため、心不全かどうかわからずに放置をして悪化するリスクもあります。

息切れやむくみ、急激な体重増加が見られたら心不全を疑ってなるべく早く医療機関を受診し、専門医から適切な検査や治療を受けることも、余命の延長につなげられるでしょう。

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