尿酸値を下げるには?食事や運動で生活習慣を改善する方法を解説します

「尿酸値を下げるにはどうすればいい?」

そのような悩みを抱えているのではないでしょうか?

確かに尿酸値が高いと痛風など様々な疾患を引き起こすリスクが高まるため、症状を自覚する前に検査値を下げておきたいですよね。

そこで当記事では上記の悩みを抱えている方に向けて、尿酸値を下げる方法について解説していきます。

尿酸値が高いと起こる病気や症状についても紹介していますので、検査値を改善したいと考えている方はぜひ参考にしてみてくださいね。

記事のまとめ

・尿酸値を下げるには、食生活や運動などの生活習慣の改善と薬やサプリメントの併用が効果的
・尿酸値が7.0mg/dlを超えると「高尿酸血症」と診断される
・尿酸値が高くなる原因には遺伝的要因と生活習慣が大きく関与している
・高尿酸血症を放置すると、痛風・尿路結石・腎障害・動脈硬化などを合併するリスクが高まる

目次

尿酸値を下げるには

検査項目用紙の尿酸にマーカを引いている

血清尿酸値(尿酸値)を下げるには、食事や運動などの生活習慣を改善するとともに、薬やサプリメントを併用することが効果的です。

尿酸とは、体内でプリン体が肝臓で分解されることで生じる老廃物で、1日に約700mlの尿酸が体内で作られています。

その後、腎臓でろ過された尿酸は尿とともに体外へ排泄されていくため、体内の尿酸量は一定に維持されています。

しかし何らかの原因により体内で生成される尿酸が著しく増加したり、尿酸の排出量が減少することで血液中の尿酸値を一定に維持することができなくなるため尿酸値(血液中に含まれる尿酸の量を示す数値)が上昇します。

その原因は後述しますが、遺伝的要素のほかに生活習慣が深く関わっているとされています。

今回は、尿酸値の高値を指摘された方が、尿酸値を下げるためにはどのような対策を講じればよいのかについて詳しく解説していきます。

尿酸値を下げるには|食事 

尿酸値を下げるためには、食生活の見直しをすることが非常に重要となります。

ここからは食事面で気をつけたいこと、積極的に摂った方が良い食品や控えた方がいい食品について詳しく解説していきます。

食事に気を配る

レバー盛り合わせ

体内で尿酸に変化する“プリン体”を多く含む食品の食べ過ぎに注意しましょう。

プリン体は、運動をしたり臓器を働かせるためのエネルギー源です。

食品から摂取しているプリン体は全体の20%、体内で合成される老廃物やプリン体の燃えカスが全体の80%を占めます。

プリン体は尿酸のもとになっているため、多く含む食品を多量に食べることで尿酸値は上昇します(参考:高尿酸血症の食事 | e-ヘルスネット(厚生労働省))。

一般的に、100gあたり200mgのプリン体を含む食品を“高プリン体食品”といいます。

食事から摂取しているプリン体は2割程度であるため厳密な食事制限は行われないことが多いですが、尿酸値が高い方はプリン体の摂取量が400mg/日を超えないよう気をつける必要があります。

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プリン体を多く含む食品(100gあたり)
非常に多い(300mg以上)多い(200~300mg)やや多い(100~200mg)
鶏レバー  いさき白子 あんこう肝の酒蒸し まいわしの干物 煮干し 干しシイタケ ローヤルゼリー豚・牛のレバー かつお(刺身など) まいわし 大正エビ  オキアミ まあじ・さんまの干物牛肉(ハツ・モモ・スネ) 鶏肉(ささみ・砂肝・手羽・モモ) 豚肉(ヒレ・ランプ) 車海老 スルメイカ 牡蠣 ニジマス まあじ 乾燥大豆

次に、アルカリ性食品を積極的に摂取することが大切です。

私たちの体内で作られた尿酸は、1日約700mg(健康な人の場合)が尿や便・汗として排出されています。

元々弱酸性である尿が酸性に傾くと尿酸が排出しにくくなるため、尿をアルカリ性に傾ける必要があります。

そのため、海藻やきのこ、野菜などのアルカリ性食品を意識的に食べ、PH6.2~6.8程度の弱酸性の尿を目安に維持することが必要です。

ただし、アルカリ性食品のうちほうれん草や青菜などは結石の材料となるため、食べ過ぎに注意しましょう。

尿をアルカリ性に傾ける食品尿を酸性に傾ける食品
ひじき・ワカメ・こんぶ 干しシイタケ・大豆 ほうれん草 ゴボウ・サツマイモ 人参 里芋・バナナ キャベツ・メロン 大根・カブ・ナス じゃがいも・グレープフルーツ卵・豚肉・サバ 牛肉・ カツオ・ホタテ 白米・ブリ マグロ・さんま アジ・カマス イワシ・カレイ 穴子・芝エビ 大正エビ

さらに、肥満は尿酸値の上昇と密接に関連しています。

尿酸値を改善するためにはカロリー(エネルギー)や脂肪の摂り過ぎに注意し、肥満を改善することが重要です。

暴飲暴食は他の生活習慣病(糖尿病や高脂血症など)の合併リスクを高め、命に関わるような重大な疾患を発症する可能性もあります。

適正エネルギー=標準体重×身体活動量
標準体重=身長(m)×身長(m)×22
身体活動量:
35kcal/kg(力仕事の多い人)
30kcal/kg(立ち仕事が多い人)
25kcal/kg(デスクワークの多い人・主婦)

しかし、高プリン体食を避けたり適正エネルギー量を守っていたとしても、栄養バランスが崩れていると十分な予防効果が得られません。

炭水化物・タンパク質・脂質に加えてビタミン・ミネラル・食物繊維を十分に摂取し、1日3食の中で栄養バランスに考慮した献立を意識しましょう。

水をたくさん飲む

コップを持つ中年男性

水分(食べ物に含まれる水分を除く)は、1日の尿量を2L確保することを目標に摂取しましょう(参考:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン)。

健康な成人の尿量は1~1.5L/日であり、一般的に飲み水で摂る水分量は1.2L/日です。

2L/日の尿量を確保するには約800ml多く、つまり2L/日の水分を摂取する必要があるということです。

体内にある尿酸の7割は尿として排出されるため、体内の水分量が多くなるほど尿酸の排出量が増加します。

逆に体内の水分が不足した場合、血液中の尿酸値が上昇し、尿酸が結晶化して痛風や尿路結石などを発症する可能性があります。

水分摂取のポイント
・水分摂取の目安は1日2L程度
・果糖を多く含む飲み物は避け、水やお茶を選択する
・一気に大量の水分を摂るのではなく、約200ml(コップ1杯)をこまめに飲む
・起床後や就寝前、入浴前後は意識的に水分を摂る
・心臓や腎臓障害がある場合は医師に相談する
・食事に汁物をプラスするのも有効

果糖を多量に含む清涼飲料水などは肥満や痛風発症のリスクを高めるため、基本的に水やお茶を選ぶことをおすすめします。

また、運動後や夏の暑い日などで大量の汗をかいた後は体内の水分量が不足し、尿酸値が上昇するため通常よりも水分を多めに摂取しましょう。

飲酒は控える

ビールジョッキを持つ2人組

尿酸値が高い場合は、種類に限らずアルコールの摂取を控えましょう

その理由には4つあります(参考:アルコールと高尿酸血症・痛風 | e-ヘルスネット(厚生労働省))。

1.ビール・紹興酒などには多量のプリン体が含まれている
2.アルコールが尿酸の産生を促進し、排泄を抑制する
3.アルコールの利尿作用で水分量が減り、尿酸値が上昇する
4.食欲が増進する

ビール・紹興酒などには多量のプリン体が含まれており、飲み過ぎると尿酸値を上昇させる原因となります。

ビールにはワインの10倍、ウイスキーの40倍以上のプリン体が含まれています。

プリン体の少ないその他のアルコールにも注意が必要でアルコール自体にも肝臓での尿酸の産生を促し、腎臓でからの尿酸排出を抑える働きがあります。

また、アルコールには利尿作用があり、体内の水分量が減るため尿酸が高まるという問題も生じてきます。

さらにアルコールには食欲増進作用もあるため、高エネルギー食や高プリン体食を食べ過ぎてしまうことも尿酸値を高める一因となるとされています。

尿酸値を上昇させないアルコール摂取量
ビール:ロング館1本(500ml)
ウイスキー:ダブル1杯60ml
ワイン:グラス2杯弱(200ml
チューハイ(7%):缶1杯(350ml)
日本酒:1合(180ml)
焼酎お湯割り:200ml

アルコールの適正量は1日あたり約20g(純アルコール)程度までが目安です。

今後も上手にお酒と付き合っていくためには自分の摂取量をしっかりと把握し、適切な飲酒量を守りましょう。

1週間に1、2日程度の休肝日を設定することもおすすめです。

尿酸値を下げるには|運動

尿酸値を上昇させる大きな原因は、“肥満”といわれています。

運動を行うことで消費エネルギーを増やし、減量を行うことが尿酸値の改善に有効です。

ここからは尿酸値を下げるために効果のある運動や逆効果となる運動について詳しく解説していきます。

有酸素運動をする

ウォーキングをする男女

尿酸値を上昇させる大きな原因である“肥満”を解消するためには有酸素運動が効果的です。

有酸素運動とは、少し息が切れる程度(会話しながら運動できる程度)の動きをある程度の時間継続して行うことです。

これから運動を始められる方は、軽めの有酸素運動を週3~5回、1日20~60分程度からスタートするとをおすすめします。

無理に運動の負荷やペースを上げることは尿酸値の上昇につながるため、適度な有酸素運動を気長に継続していくことが重要です。

おすすめの有酸素運動
・ジョギング
・速歩
・エアロビクス
・水泳
・サイクリング

運動中は、体内の水分が不足して尿酸値が上昇することのないよう、こまめな水分補給を心掛けましょう

有酸素運動を行うことは肥満の解消に効果的であるとともに、高尿酸血症に併発しやすい高血圧・糖尿病などの生活習慣病、動脈硬化の予防や改善にも役立ちます

気候や勤務形態によって屋外で有酸素運動を行う時間を確保できない場合は、もも上げ運動や踏み台昇降などの室内でできる有酸素運動を運動メニューに取り入れることがおすすめです。

無酸素運動は避ける

無酸素運動は、尿酸値を急激に上昇させるため注意しましょう。

無酸素運動とは、短時間に強い負荷を必要とする運動のことです。

酸素を使わずに筋肉を動かすためのエネルギーを作り出すことから、無酸素運動と言われています。

無酸素運動の具体例
・短距離走
・高負荷の筋肉トレーニング
(バーベルなど)
・相撲
・投擲(とうてき)

健康診断や病院の検査などで尿酸値の高値を指摘された場合や長期間尿酸値が高い状態が続いている場合は、自己判断で上記のような運動をすると高尿酸血症や痛風発作などの疾患を発症する恐れがあります。

負荷の少ない自重トレーニング(自分の体重を負荷して行うトレーニング)や軽めのウエイトトレーニングであれば行ってもよいケースもありますが、必ず始める前にかかりつけの医師へ相談してみましょう。

病院の理学療法士や専門のトレーナーなどに指導を依頼し、自分の状態に合ったトレーニングメニューを作ってもらうこともおすすめです。

尿酸値を下げるには|薬やサプリメント

検査結果と薬

尿酸値を下げるためには、病院や市販の薬やサプリメントの活用が効果的です。

ただし、それらは「生活習慣を改善するまでの期間に尿酸値を抑え、痛風や腎機能の低下などを予防するためのもの」と認識しましょう。

根本的治療には、薬による治療と生活習慣の改善をどちらも継続することが大切です。

ここからは、尿酸値を下げるために有効な薬やサプリメントについて解説していきます。

尿酸値を下げる薬

尿酸値を下げる薬(尿酸降下薬)には、尿酸生成抑制薬・尿酸排泄促進薬・尿酸再吸収阻害薬の3種類があります。

毎日継続的に服用することで体内に溜まった尿酸を少なくし、痛風発作や尿路結石の予防や腎障害の改善につながります。

分類作用薬剤名
尿酸生成抑制薬体内で尿酸を生成しにくくするアロプリノール フェブキソスタット トピロキソスタット など
尿酸排泄促進薬体外へ尿酸を排出しやすくするベンズブロマロン プロベネシドなど
尿酸再吸収阻害薬尿酸の再吸収を妨げるドチヌラド

尿酸値が7.0mg/dlを超える場合に「高尿酸血症」と診断されますが、すぐに薬での治療を開始するわけではありません。

生活習慣を改善しても効果がみられない場合や尿酸値8.0mg以上で合併症を併発している場合などに薬での治療が検討されます。

また、すでに痛風発作が起きているときに尿酸降下薬を服用すると症状が悪化する危険があります。

そのため、まずは痛風の治療を行い症状が治まった時点で尿酸値を下げる薬の使用を検討します。

高尿酸血症の薬物治療を検討する基準
・生活習慣を改善しているにもかかわらず、尿酸値が7.0mg/dl以下にならない場合
・痛風関節炎の症状を起こしたことがある、痛風結節がある場合
・尿酸値8.0mg/dl以上で、尿路結石などの合併症がある場合
・尿酸値9.0mg/dl以上の場合(痛風の発症率が著しく上昇するため)
(参考:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン

高尿酸血症には「尿酸産生過剰型」と「尿酸排泄低下型」の2つのタイプがありますが、このようなタイプや現在服用している薬、副作用のリスクなどを考慮して適切な薬が選択されます。

尿酸値が急激に低下すると痛風発作を引き起こすリスクがあるため、尿酸降下薬は3ヶ月~6ヶ月ほどかけて徐々に内服する量を増やしていきます

治療の目標は尿酸値6.0mg/dl以下に設定されており、この状態を維持するため長期間薬を内服することが求められます。

自己判断で薬の服用を中止すると尿酸値はすぐに再上昇してしまうため、医師の指示に従って決められた量・期間を守って根気よく内服を継続することが大切です。

また、尿酸値を下げる市販薬をドラッグストアで購入することができます

市販薬にはプリン体の分解を抑える成分が含まれており、結果的に作られる尿酸が減少するという作用があります。

「病院を受診するほどではないものの、尿酸値が上昇してきた」という方は、市販薬を活用してみることもおすすめです。

尿酸値を下げるサプリメント

サプリメント

「尿酸値が高め(5.5~7.0mg/dl以下)だけど病院に行くほどではない」という方には、市販で購入できるサプリメントの活用も有効です。

尿酸値を下げるために効果的なサプリメント

尿酸値の上昇を抑える主な成分は、ルテオリン・アンセリン・アンペロプシン・キトサンなどです。

成分名作用
ルテオリン・プリン体から尿酸を生成する酵素を阻害し、尿酸の生成を抑える
アンセリン・プリン体から尿酸を生成する酵素の働きを阻害し、尿酸の生成を抑える ・プリン体を再合成する酵素の作用を促進する ・乳酸の排泄を抑制する「乳酸」を代謝する酵素を増やし、尿酸の排泄を促進する
アンペロプシン・プリン体から尿酸を生成する酵素の働きを抑える ・プリン体を再合成するタンパク質の働きを抑制し、尿酸の排泄を促進する
キトサン・プリン体の吸収を抑える

また、サプリメントを選ぶ際には「機能性表示食品」と明記されている商品を選びましょう。

機能性表示食品は、臨床試験において成分の有効性を確認されているため、しっかりと有効な配合量を配合・表記されているため信頼性が高いです。

食事や運動面の生活習慣の改善を心掛けながら、栄養面のサポート的な役割としてサプリメントをうまく取り入れてみましょう。

尿酸値の正常値

検査の正常値一覧

血液中の尿酸値(血清尿酸値)の正常値は、一般的に7.0mg/dl以下す。

基準値・基準範囲(参照:尿酸(UA) | SRL総合検査案内
男性:3.7~7.0mg/dl
女性:2.5~7.0mg/dl

「高尿酸血症」と診断されるのは、男女ともに尿酸値が7.0mg/dlを超える場合です(参考:高尿酸血症 | e-ヘルスネット(厚生労働省))。

また30~40代の男性のうち、3割の方が高尿酸血症の患者とされています(参考:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン)。

女性は女性ホルモンの働きによって腎臓からの尿酸の排出が促されることから、女性の尿酸値は男性よりも低い傾向があります。

しかし、閉経などにより女性ホルモンの分泌が減少すると尿酸値は少し増加するため、女性も50代頃から高尿酸血症になるリスクが高まります。

尿酸値が高くなる原因

缶ビールを片手にピザを食べるふくよかな男性

尿酸値が高くなる原因には、生活習慣や遺伝的要素が影響を及ぼしています

遺伝的要素がある方はそれだけで高尿酸血症になるわけではなく、偏った食事や過剰飲酒などの生活習慣も影響しているケースが多いです。

高尿酸血症は、尿酸を過剰に生成してしまう「尿酸産生過剰型」尿酸がうまく排出されない「尿酸排泄低下型」の2種類に分類できます。

日本では、尿酸排泄低下型の患者さんが全体の6割程度を占めるとされています。

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分類尿酸値が高くなる原因
体内で尿酸が過剰に作られてしまい、尿酸値が上昇する(尿酸産生過剰型アルコールの摂取(すべての種類)
・偏った食生活(過食・早食い・絶食・高カロリー食・果糖や脂質の過剰摂取)
・高プリン体食(肉類、魚介類、ビール、鶏卵、魚卵など)の過剰摂取
過度な運動、無酸素性運動(短距離走や強度の高いレジスタンス運動)による過剰な筋肉への負担
・閉経(エストロゲンの分泌量低下)
・ストレスの蓄積
・薬の副作用
・代謝系の疾患
不要な尿酸を体外へうまく排出できず、尿酸値が高い状態が持続する(尿酸排出低下型・腎臓や腸管の機能低下
・アルコール(すべての種類)の多飲、果糖の過剰摂取、偏った食生活により尿が酸性になる
・水分摂取不足
・薬の副作用
尿酸産生過剰型と尿酸排出低下型が混ざったタイプ(混合型)・肥満
参考:高尿酸血症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

なかでも肥満の方は混合型とされ、食べ過ぎ・運動不足・ストレスによる尿酸の増加(尿酸産生過剰型)、インスリン分泌が増加し腎臓での尿酸の排出量の減少(尿酸排出低下型)が起きるため特に注意が必要です。

生活習慣を原因として尿酸値が上昇している場合、尿酸値を改善するには乱れた食生活や運動不足などの生活習慣を管理していくことが大切です。

尿酸値が高い状態を放置していると起こる病気

尿酸値が高いと、高尿酸血症をはじめに様々な疾患を引き起こすリスクが高まります。

ここからは、尿酸値の高値によって起きる可能性ある疾患について解説していきます。

高尿酸血症

高尿酸血症は生活習慣病の1つで、血液中の尿酸値が基準値より高い状態です。

高尿酸血症の診断基準
血液中の尿酸値>7.0mg/dl
(参考:高尿酸血症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

高尿酸血症は基本的に自覚症状がありません。

そのため、健康診断などの検査結果で尿酸値が高いと指摘され、病院を受診して診断される方も多いでしょう。

しかし、進行すると痛風や尿路結石・膀胱結石など様々な病気を発症する可能性があるため注意が必要です。

高尿酸血症が進行するとリスクのある疾患
・痛風
・尿路結石
・腎障害
・動脈硬化による心筋梗塞・脳梗塞

さらに、高血圧症・脂質異常症・メタボリックシンドローム・糖尿病などの他の生活習慣病を伴う患者さんが多いことも特徴の1つです。

また、高尿酸血症(血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超える)と診断された場合、すぐに治療の対象とはなるわけではありません。

痛風関節炎の症状を起こしたことがある・痛風結節がある場合に薬物治療が開始されます。

治療の目標は痛風の発症・再発防止を考慮し、尿酸値6.0mg/dl以下に設定されています。

薬を内服すればすぐに尿酸値は下がりますが、内服を中断すると再び上昇してしまうため医師に決められた期間・量に従って治療を継続することが重要です。

また、尿酸値8.0mg/dl未満で、痛風関節炎の症状や痛風結節がない場合は、尿酸値を下げるための生活習慣の改善を行うだけで高尿酸血症が改善する場合もあります。

健康診断などで尿酸値の高値を指摘された場合には、自覚症状の有無に関わらずすぐに内科を受診して医師へ相談しましょう。

痛風

痛風で赤くなった足

痛風とは、尿酸値の上昇によりある日突然に関節が赤く腫れて激しい痛みが起こる疾患です。

尿酸値が高まると、関節の軟骨や関節を守る滑膜(かつまく)に尿酸の結晶が蓄積します。

剥がれた尿酸を異物と判断して攻撃する白血球は炎症物質を分泌しますが、これが関節の腫れや痛みを引き起こしています。

痛風の経過特徴
痛風予備軍 (尿酸値が高い)・痛風の前兆として関節に違和感・不快感・むずむず感が起きることがある
痛風発作・痛みのピークは発症から2~3日間
・2週間以内に痛みは消失する
間欠期・適切な治療を受けない、生活習慣の改善をしない場合に移行する可能性がある
・痛風発作を何度も繰り返し起こす
・段階的に発作の頻度が多くなったり、持続期間が長くなったりする
慢性期・常に関節の痛みや腫れが持続する

痛風発作は足の甲・アキレス腱・足首・膝・手首など様々な部位に起こりますが、特に親指の付け根に好発(全体の70%程度)します。

治療はまず痛風の炎症を抑える治療を行い、その後に高尿酸血症に対する治療(尿酸値を下げる薬の内服)という2本立てです。

痛風発作の治療には、非ステロイド系抗炎症薬やステロイド薬を使用します。

非ステロイド系抗炎症薬:主に痛風発作の治療に用いる
ステロイド薬:腎機能障害や胃潰瘍の既往がある場合や非ステロイド抗炎症薬があまり効かなかった場合に用いる
コルヒチン:痛風の前兆を感じた場合に服用すると、原因となる白血球の動きを妨げて痛風発作を予防する効果がある

痛風発作が治まったら、前述した尿酸値を下げる薬の服用や生活習慣の改善による治療を長期的に継続していきます。

関節に蓄積した尿酸を完全になくすためには、約33ヶ月程度の尿酸降下薬の継続が必要です。

適切な治療を受けずに痛風を放置すると、尿路結石・膀胱結石・腎障害・動脈硬化に加え、痛風結節を生じる可能性があります

痛風結節
増加した尿酸が蓄積し、発作が起こった部位にコブのようなものができる状態です。これを放置すると徐々に結節が大きくなり、関節が動かしにくくなったり皮膚を突き破って感染症を引き起こすこともあります。

痛風は初期の状態で治療すれば薬を飲んだり生活習慣を改善するだけで完治する疾患であるため、健康診断で尿酸値の高値を指摘された場合はすぐに病院を受診しましょう。

尿路結石

脇腹を押さえる人

高尿酸血症を原因とした尿路結石は、尿路(腎臓・尿管・膀胱・尿道のこと)の中で尿酸が結晶化し、部位によっては激しい痛みや血尿が生じます

結石のできる部位によって「上部尿路結石」「下部尿路結石」の2種類があり、日本では全体の95%が上部尿路結石であるとされています。

上部尿路結石:腎臓・尿管に結石ができた場合
下部尿路結石:膀胱・尿道に結石ができた場合

結石が小さいうちは自覚症状がないケースもありますが、結石が尿路に詰まってしまうと背中・下腹部・脇腹などに激痛が生じます

尿路結石の症状
・腎結石では無症状のケースが大半を占める
・2~3時間程度続く、背中・下腹部・脇腹の激痛
・血尿
・発熱(尿路感染を起こしている場合)
・激痛による吐き気や嘔吐
・頻尿や残尿感(下部尿路結石の場合

高尿酸血症を原因とした尿路結石の治療は、尿酸を減らすための薬の服用と、尿管に生じた結石を取り除く治療の2本立てです。

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分類治療方法
尿酸を減らすための薬の服用尿酸生成抑制薬・尿酸排泄促進薬・尿酸再吸収阻害薬の服用
尿管に生じた結石を取り除く治療結石が小さい場合 (4~5mm以下)・水分の摂取量を増やす ・薬や食品を活用して尿をアルカリ性に傾け尿路結石を溶かす ・生活指導
結石が大きい場合レーザーや衝撃波を発生させる機械を用いて、結石を粉砕し排出させる

尿路結石を発症すると、完治しても40~60%の患者さんは再発するとされています。

再発を予防するには高尿酸血症や痛風の治療をしっかりと行うとともに、食生活や運動習慣など生活習慣の改善を併行して行うことが大切です。

腎障害

尿検査

腎臓で尿酸の結晶化が起こることにより、腎障害を引き起こされることがあります。

結晶化した尿酸が溜まり、腎臓に炎症を起こしている状態を「痛風腎」といいます。

初期状態では自覚症状はほとんどありませんが、かなり進行すると腎臓が損傷し慢性腎不全と同様の症状が現れます

痛風腎の症状
・タンパク尿
・血尿(尿路結石を合併していると高確率で現れる)
・尿が出にくくなる
・身体のむくみ
・倦怠感、疲れやすい
・食欲低下
・吐き気

また、痛風関節炎や痛風結節、尿路結石を合併するケースが多いことが特徴です。

痛風腎の治療は、慢性腎臓病に対する治療と高尿酸血症に対する治療を行います。

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治療方法内容具体例
尿酸を減らすための薬の服用尿酸生成抑制薬・尿酸排泄促進薬の服用
慢性腎臓病の進行を防ぐための治療生活習慣の改善禁煙、減量、塩分とタンパク質の制限、血圧管理、血糖値管理
薬の服用・貧血の薬物治療 ・尿毒素への対処 ・腎機能を保護する薬 ・カリウムの上昇、アシドーシス(血液の酸性度が急上昇する状態)を防ぐ治療 ・ミネラル管理(カルシウム、リンなど)

痛風腎による慢性腎臓病が進行すると、腎臓で尿が作れなくなり毒素や水分を排泄できない状態(末期腎不全)となります。

末期腎不全に進行した場合には血液透析・腹膜透析・腎移植などの治療が検討されます。

腎臓は一度傷害されると回復することが難しい臓器の1つです。

高尿酸血症を指摘された場合には腎障害が進行しないよう、尿酸値を下げる治療を適切に行っていきましょう。

その他

心臓の位置にハートを構える女性

尿酸値が高い状態が続くと、他にも動脈硬化や他の生活習慣病などを合併するリスクが高まります

動脈硬化:結晶化した尿酸が過剰に蓄積された結果、体内の異物として白血球に攻撃され血管に炎症反応が起きる場合があります。この炎症が動脈壁を損傷し、動脈硬化を進行させます。

生活習慣病:高尿酸血症は生活習慣病の1つであるため、乱れた食生活や運動不足などの生活習慣を原因として他の生活習慣病(高血圧症・脂質異常症・肥満症・糖尿病など)を併発しやすいとされています(参照:高尿酸血症の食事 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

他の生活習慣病が併発した場合、動脈硬化の進行をさらに早める可能性があります。

また動脈硬化が進行すると、狭心症や心筋梗塞・脳梗塞などの死に至る恐れのある重大な疾患を発症する危険があるため注意が必要です。

尿酸値の高さを指摘された際には併発している可能性のある生活習慣病をチェックし、それぞれの疾患の治療や生活習慣の改善を積極的に行うことをおすすめします。

尿酸値を下げる方法でよくある質問

マルバツの札を持つ看護師

ここからは、尿酸値を下げる方法でよくある疑問についてお答えしていきます。

尿酸値を下げる方法で気になることがあるという方は、ぜひ参考にしてみてください。

尿酸値を下げる食品は?

尿酸値を下げる作用のある食品は、乳製品やアルカリ性食品、ビタミンC・食物繊維を多く含む食品です。

1日2Lの水分摂取も尿酸値対策には効果的とされています。

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尿酸値を下げるもの作用食品
乳製品・尿酸の排泄を促す牛乳やヨーグルト・チーズなど
ビタミンCを多く含む食品・尿酸の排泄量を増加させる ・強力な抗酸化作用があり、生活習慣病やがんの予防に効果的果物、キャベツ、ジャガイモなど
食物繊維を含む食品・プリン体の吸収を阻害し、便からの排泄を増加させる海藻類・野菜・キノコ
アルカリ性食品・尿をアルカリ化させ、尿酸の排出量が増加する海藻(ワカメ・ひじき・のり・昆布)・大豆・ゴボウ・サツマイモ・人参・里芋・バナナ・キャベツ・メロン・大根・カブ・ナス・じゃがいも・グレープフルーツ など
水分・尿量が増え、尿酸の排出量が増加する水、お茶、コーヒー(無糖)など

プリン体は全体の80%が体内で合成されているため、プリン体を多く含む食品を控えているだけではあまり効果が得られません。

上記の表を参考に献立を1日3食の中で調整し、栄養バランスの取れた食事を摂れるよう意識することが重要です。

尿酸値が高くなる食品は?

尿酸値を上昇させるのは、プリン体を多く含む食品・果糖を多く含む飲料・アルコール飲料です。

プリン体は1日400mg以内を目安に摂取量を制限し、過剰摂取を避けましょう。

アルコールの適正量は1日あたり約20g(純アルコール)程度に留め、適切なお酒との付き合い方を意識づけることが必要です。

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尿酸値を上昇させるもの作用食品
プリン体を多く含む食品・尿酸のもとになるプリン体を摂り過ぎると、尿酸値が上昇する肉類(レバー等の内臓系に多い)・干物・魚の内臓(あんこうの肝・白子)・カツオ・マイワシ・納豆・ビール など
果糖を多く含む食品や飲料・体内で分解されるときに尿酸の産生を促進する甘いスイーツ・甘い清涼飲料水・ジュース・白砂糖など
アルコール飲料・アルコール自体に尿酸値を増加させ、排泄を妨げる作用がある ・利尿作用により体内の水分量が減り、尿酸値が上昇する全てのアルコール飲料

あまりに厳しい制限を設けるとストレスが溜まり、継続していくことが困難となりかねません。

尿酸値を上昇する作用のある食品を控えるだけでなく、尿酸値を下げる作用のある食品を摂ったり有酸素運動を併行して行うことが非常に大切です。

コーヒーを飲むと尿酸値は下がる?

コーヒーの摂取と尿酸値の増減に関連性はありません。

しかし、コーヒーは痛風の予防に効果があると研究で明らかにされています。(参考:PMC

1日に4杯以上コーヒーを飲む人が痛風を発症する相対危険度は、全くコーヒーを飲まない人と比較すると40%程度です。

その関連性には諸説ありますが、最も有力なのは“コーヒーに抗炎症作用がある”という説です。

痛風で関節内に溜まった尿酸の結晶によって引き起こされる急性炎症であるため、炎症を抑制するポリフェノールが痛風予防に関与している可能性も指摘されています。

痛風予防の効果的なコーヒーの飲み方
・痛風予防目的の場合、2杯/日以上のコーヒーを飲むと効果的
・カフェインの影響を受けにくい体質の方は、3~4杯/日摂取することも可能
・コーヒーに低脂肪牛乳を入れて飲む
・無糖で飲む

厚生労働省では、健康な成人が摂取するコーヒーの1日量は3杯以内を推奨しています(参考:食品に含まれるカフェインの過剰摂取について)。

痛風予防を目的としてコーヒーを飲みたい場合は、2~4杯程度を目安にコーヒーを飲むことをおすすめします。

また、砂糖を入れると尿酸値が上昇するリスクが高まるため注意が必要です。

一方で、牛乳などの乳製品(特に低脂肪牛乳)は尿酸値を低下させる効果が認められるため、カフェオレやカフェラテで飲むとより効果的でしょう。

尿酸値が基準値内になると薬の服用はやめられる?

薬物治療の開始後は、尿酸値が6.0mg/dl以下を維持することが原則です。

しかし、薬を飲み続ける期間は特に定められておらず、治療に1~2年かかることも少なくありません。

尿酸値をコントロールできていると思っても、中断すると2週間程度で尿酸値が再上昇する可能性が高いです。

自己判断で薬の量を変更したり中断することなく、医師に処方された薬をしっかりと飲み続けることが大切です。

薬での治療をやめるためには、尿酸値を6.0mg/dl以下に維持するとともに、生活習慣の改善を継続していけるように心掛けましょう。

尿酸値を下げる方法のまとめ

尿酸値が高くなると、高尿酸血症や痛風発作をはじめとした様々な疾患を発症するリスクにつながります。

健康診断や病院の検査などで尿酸値が高いことを指摘されたら、そのまま放置することなくかかりつけ医を受診することが大切です。

尿酸値を改善するために最も重要なのは、「生活習慣の改善」です。

尿酸値が基準値を超えて高尿酸血症を発症しないよう、食事や運動などの生活習慣の改善やサプリメントの活用を心掛けましょう。

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