このように悩んでいるのではないでしょうか?
「健康診断でコレステロール値を指摘されたけど、お薬を飲まないといけないの?」
たしかに薬の服用が本当に必要なのかどうか、気になりますよね。
そこでこの記事では、コレステロールおよび脂質異常症に使われる薬について説明しています!
これを読んで、どのようにコレステロールの薬と付き合えば良いのかを学びましょう!
・コレステロールにはLDLコレステロールとHDLコレステロールの2種類がある
・脂質異常症を改善するための基本は「生活習慣の改善」
・コレステロール値を下げるには、食物繊維や青魚を積極的に食べよう!
・お薬の服用は医師と相談しながら進めていこう!
コレステロールの種類や基準値
脂質は活動するのに必要なエネルギーのもとであり、体を作るためにも必須の栄養素です。
体内には4種類の脂質が存在しており、そのうちの1つがコレステロールです。
コレステロールにはLDLコレステロールと、HDLコレステロールの2種類があります。
次の項目からは2種類のコレステロールを、詳しく説明していきます。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
肝臓のコレステロールを全身に届ける役目を持っているのが、LDLコレステロールです。
しかし余ったLDLコレステロールが血管の壁にくっつき溜まっていくと、動脈硬化の原因になってしまいます。
動脈硬化は心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などのように、命をおびやかす危険性のある疾患を引き起こす原因です。
LDLコレステロールは動脈硬化の危険性を高めてしまう性質を持っているため「悪玉コレステロール」とも呼ばれています。
正常範囲は140mg/dL未満です。
140mg/dL以上の値を示している場合は高LDLコレステロール血症と診断されます。
HDLコレステロール(善玉コレステロール)
HDLコレステロールには余ったコレステロールを全身から集めて、肝臓に戻す働きがあります。
LDLコレステロールとは逆に、動脈硬化の危険性を下げてくれるので「善玉コレステロール」と呼ばれているのです。
正常範囲は40gm/dL以上です。
40gm/dL未満の場合、低HDLコレステロール血症と診断されます。
コレステロールと中性脂肪の違い
中性脂肪もコレステロールと同様、脂質の1種です。
中性脂肪は別名トリグリセライド(TG)と呼ばれています。
中性脂肪の役割は、エネルギーの貯蔵庫です。
普段、中性脂肪は肝臓や脂肪組織に蓄えられています。
食事量を減らしたり有酸素運動をしたりして体がエネルギー不足を感知すると、中性脂肪が分解されエネルギーに変換されるしくみです。
コレステロール値が高い原因と影響
コレステロール値が高くなる原因と、それによって起こる影響について解説します。
高い原因と影響
コレステロール値と最も関連しているのは、生活習慣の乱れです。
バランスの乱れた食事、カロリーの摂り過ぎ、運動不足、喫煙などが続くとコレステロール値が高くなってしまいます。
生活習慣の乱れは、コレステロール値が高くなるほかにもメタボリックシンドロームや高血圧、糖尿病の原因です。
これらの疾患は全て動脈硬化といって血管をもろくしたり、血液の通り道を狭くしたりという病態につながる恐れがあります。
脂質異常症
血液中のLDLコレステロールや中性脂肪が正常値を超えて高くなったり、HDLコレステロールが正常値よりも低くなったりする状態を「脂質異常症」と呼びます。
以下に、脂質異常症の診断基準となる各コレステロール値を示します。
診断基準
LDLコレステロール
140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
120~139mg/dL | 境界域高コレステロール血症 |
HDLコレステロール
40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
TG(中性脂肪)
空腹時採血 | 170mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
随時採血 | 175mg/dL以上 |
Non-HDLコレステロール
170mg/dL以上 | 高non-HDLコレステロール血症 |
150~169mg/dL | 境界線高non-HDLコレステロール血症 |
参考:日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. 一般社団法人日本動脈硬化学会:東京,2022
治療方法
脂質異常症の治療は、食事の見直しや運動習慣をつけるといった生活習慣の改善が第一です。
生活習慣を改善してもコレステロール値が下がらない場合に、薬物療法が始められます。
コレステロール値を下げる薬
ここからは、コレステロール値を下げる薬について解説していきます。
スタチン系製剤(HMG-CoA還元酵素阻害剤)
スタチン系製剤はHMGーCoA還元酵素阻害剤とも呼ばれています。
スタチン系製剤の働きは、HMGーCoA還元酵素といって肝臓でコレステロールが作られる時に働く酵素を阻害することです。
すると肝臓で作られるコレステロールの量が減るので、血液中から肝臓に取り込まれるLDLコレステロールが増えます。
その結果、血液中のLDLコレステロールが減少するのです。
陰イオン交換樹脂(レジン)製剤
胆汁は脂肪を分解するのに不可欠な液体で、肝臓で作られて胆のうに溜められています。
胆汁の中には胆汁酸が含まれており、陰イオン交換樹脂製剤はこの胆汁酸とくっつきます。
通常、胆汁は腸内に分泌された後、再び回収されて肝臓に戻り再利用されます。
しかし陰イオン樹脂製剤とくっついた胆汁酸は肝臓には戻れず、便として体外に排出されるのです。
すると新たな胆汁酸を作ろうとして、血中のコレステロールが使われるので、コレステロール値が低下するしくみです。
小腸コレステロールトランスポーター阻害剤
トランスポーターというのは、物質が通るトンネルのようなものです。
小腸コレステロールトランスポーターは小腸にあるトンネルだとイメージしてください。
この経路を遮断することで、食べ物や胆汁に含まれるコレステロールが腸から血液に吸収されるのを防ぎます。
吸収されなかったコレステロールはそのまま排出されるので、血中のコレステロール値が下がるというしくみです。
プロブコール
脂肪を分解するのに必要な胆汁酸は、コレステロールから作られます。
プロブコールはコレステロールから胆汁酸を作る流れを促進して、便として体外に排出されるコレステロールを増やします。
ほかには血中から肝臓にコレステロールを戻したり、LDLコレステロールの酸化を抑制して動脈硬化を予防する作用も持っているお薬です。
フィブラート系製剤
フィブラート系製剤は、肝臓でコレステロールやトリグリセライドが作られるのを抑える効果があります。
またトリグリセライドを分解する酵素を活発にさせる作用も持っているため、トリグリセライド値を下げる作用もあります。
善玉コレステロールであるHDLコレステロールを増やす作用も持っています。
多価不飽和脂肪酸(EPA)製剤
EPAとはイコサペント酸エチルの略です。
自然界では魚の油にEPAが豊富にふくまれています。
EPA製剤は肝臓の中で、トリグリセライドが多く含まれる物質が作られるのを抑える作用があります。
その結果トリグリセライド値を下げることができるのです。
そのほか動脈硬化を予防する作用もあると考えられています。
ニコチン酸誘導体製剤
ニコチン酸誘導体は、脂肪組織での脂肪の分解を抑える作用があります。
すると血液中に脂肪酸が放出されるのを減らし、中性脂肪が作られるのを抑えます。
さらにはLDLコレステロールの酸化を抑える作用も持っています。
コレステロールを下げる薬の副作用
脂質異常症にはいろいろな種類の薬があることが分かりました。
その中で特に気を付けたい副作用として、HMGーCoA還元酵素阻害薬の「横紋筋融解症」が挙げられます。
発生頻度は少ないものの、激しい運動をする方や腎障害をお持ちの方は注意が必要です。
筋肉痛や脱力感、尿の色が赤茶色になるなどの症状は、横紋筋融解症の初期症状かもしれません。
横紋筋融解症は早期発見がとても大事ですので、異変を感じたら必ず医師や薬剤師に相談してください。
そのほかの主な副作用には肝機能障害や過敏症、消化器症状が挙げられます。
コレステロール値と食事
コレステロール値と食事は、密接に関係しています。
コレステロール値が気になる場合「食事のどんな所に気を付ければ良いのか」について知っていきましょう。
コレステロールを下げる食品
ブリやサンマ、サバ、マグロなどの青魚には、不飽和脂肪酸のEPAとDHAが豊富に含まれています。
EPA/DHAはコレステロール値を下げ、動脈硬化を予防する作用があるので積極的に食べましょう。
食物繊維はコレステロールを体の外に出しやすくしてくれます。
食物繊維がたくさん含まれている食材は、キノコ類や海藻、こんにゃく、イモ類、野菜などです。
コレステロールが多めの食事を摂るときは、これらの食品も一緒に食べることを意識しましょう。
さらにはコレステロールが酸化されるのを防ぐために、ビタミンCやβカロテン、ポリフェノールなどの抗酸化作用のある栄養素の摂取もおすすめです。
参考:LDLコレステロール | e-ヘルスネット(厚生労働省)
コレステロールを多く含む食品
鶏卵や魚卵といった卵やレバーなどの内臓部分には、コレステロールが多く含まれています。
高LDLコレステロール血症なら、卵1/3個、低脂肪乳150mLが1日の目安です。
高トリグリセライド血症の場合は、卵2/3個、普通の牛乳180mLが1日の目安となっています。
動物性食品にはコレステロールが多く含まれているので、大豆製品や魚介類でたんぱく質摂取を心掛けてください。
コレステロールを上げる食品
お肉の脂身や鶏の皮、バター、クリームなどの乳脂肪分などには、コレステロール値を上げる作用のある飽和脂肪酸がたくさん含まれています。
マーガリンなどを使った食べ物や工場で作られた揚げ物類やスナック菓子などの市販の洋菓子には、トランス脂肪酸と呼ばれる油が多く含まれています。
トランス脂肪酸もコレステロール値をあげてしまうので、食べる量には注意が必要です。
これらの食品は間食として食べられることが多くあります。
バランスの取れた3食の食事をよく噛んでゆっくり食べることで、間食の機会を減らすのもコレステロール値の改善に効果的でしょう。
コレステロール値を下げる薬でよくある質問
ここからは、コレステロール値を下げる薬にまつわる疑問について解説していきます。
コレステロール値を下げる薬をやめたらどうなる?
治療途中でお薬を飲むのをやめると、一度正常に近づいたコレステロール値が再び上がってしまうことがあります。
自己判断で薬を飲むのをやめてしまうのは危険です。
医師と相談の上、お薬が必要な期間はしっかり飲みましょう。
コレステロール値を下げる薬はいつまで飲まないといけない?
どれくらいのコレステロール値を目標とするかは、患者さん一人ひとりの背景によって異なります。
脂質異常症の治療では、あくまでも「生活習慣の改善」が第一です。
お薬を飲むことでコレステロール値が改善しても、生活習慣を改善できていなければお薬をやめることは危険と考えられるでしょう。
医師と相談しながら、適切な時期まで服用を続けることが大切です。
ただし薬を服用していて体の異変を感じた場合は、副作用の可能性があります。
無理に服用を続けようとはせずに、すぐにかかりつけ医にご相談ください。
コレステロール値を下げる薬を飲み続けると認知症になる?
「どうして認知症が起こるのか?」は、まだ完全には分かっていません。
けれども脂質異常症の持病がある人は「脳血管性認知症」の発症率が高いことが分かってきています。
この理由として、以下の理由が考えられます。
脳血管性認知症とは、脳の血流が悪くなることで引き起こされる認知症のことです。
脂質異常症をほったらかしにしておくと、動脈硬化が進み認知症のリスクが高くなると考えられます。
高いコレステロール値とコレステロール値を下げる薬のまとめ
コレステロール値が高くなる大きな原因は、生活習慣の乱れです。
まずはバランスの取れた食事や、禁煙、定期的な運動で、乱れた生活習慣の立て直しを心掛けましょう。
生活習慣を改善してもコレステロール値が下がらない場合は、お薬を使う必要があります。
治療するにあたって、脂質管理の目標値は人によって異なります。
なぜならどの薬を使うかは、生活習慣や他の疾患といった個人個人の背景やどのコレステロール値が正常値から外れているかによって違うからです。
安易な自己判断は禁物です。
必ず医師と相談しながら薬物治療を進めていきましょう。