「胸が苦しいけど、これは危険な病気じゃないの?」
と不安に思われることがあるかもしれません。
実際に胸の苦しさをきたすような疾患にはどのようなものがあるのでしょうか。
この記事ではそんな胸の苦しさをきたす疾患について詳しく解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
- 胸の苦しさをきたす病気には様々なものがある
- 多くの場合精神的な要因によるものだが、重篤な病気の可能性もある
- 初めての胸の苦しさの症状の時は病院を受診するとよい
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胸が苦しい・圧迫感がある原因や対処法
胸が苦しくて圧迫感がある場合、多くの場合はストレスなどの精神的疾患です。
しかし、ときに心臓や肺の病気によって痛みを感じることがあります。
それぞれどのようなものなのか解説します。
精神的要因によるもの
精神的なものによる息苦しさは良くあります。
このような息苦しさを感じる場合、ストレスのせいであることも多いのですが、原因が分からないこともあります。
そのため、病院を受診したとしても診断がつかないことが多いようです。
多くの場合、他の疾患を除外して特に異常がなければ、精神的なものによる息苦しさではないか、という結論になります。
精神的なものによる息苦しさの場合、まずはストレスから距離を置くことが大切です。
ストレスを感じなければ次第に胸の症状は落ち着いていくでしょう。
それでも難しい場合には、抗不安薬など内服薬によって治療をする場合もあります。
心臓や肺に関する病気によるもの
胸の中には心臓や肺など重要な臓器があり、その異常で息苦しさを感じることがあります。
それぞれどのような病気なのか解説します。
狭心症
狭心症とは、心臓を栄養する血管が細く狭まることで起こる病気です。
冠動脈
心臓自体は非常に密な筋肉でできています。
筋肉ですから、動くためには多くの酸素をふくんだ血液が必要になります。
そのため、心臓から拍出された血液は、一部がすぐに心臓へ戻って必要な栄養を供給します。
この血管のことを冠動脈と言います。
- 冠動脈…心臓自体が拍出した血液のうちだいたい5%の量が流れている
- 身体全体の酸素消費量のうちだいたい15%が心臓で使用される
多くの酸素を必要とする心臓ですから、何らかの原因で血液の巡りが悪くなると途端に動きが悪くなります。
そうなると、自覚症状として痛みや息苦しさを感じるのです。
動脈硬化
心臓を栄養する冠動脈の血流が低下する原因のほとんどは、動脈硬化です。
冠動脈に動脈硬化が起こると、だんだん内腔が狭くなってきます。
狭くなった血管では血流が低下します。
それだけでは症状が出ないことが多いのですが、この状態で運動をしたり興奮したりすると、心臓の動きが活発になり、それに必要なだけの血液が十分に流れて来ず、痛みを感じるようになります。
これが狭心症の症状の出方です。
なお、高齢者や糖尿病の方は、重苦しい胸の苦しさだけを感じることもあります。
動いたときに胸の症状がある場合には狭心症に要注意です。
狭心症があるときは、すぐに治療が必要な場合があります。
気胸
気胸というのは、肺に穴が空いてしぼんでしまった状態を言います。
もともと肺というのは、何もしなければしぼむ構造です。
呼吸するには膨らむ必要があるため、肺の表面には臓側胸膜という膜が存在します。
一方、胸の内側には壁側胸膜という膜があります。
これらの臓側胸膜と壁側胸膜の間には胸水という水分がごく少量存在し、表面張力で膜どうしが密着する構造なのです。
これにより、胸郭が動くことと肺が引っ張られ、呼吸することができます。
【肺の仕組み】
肺の表面→臓側胸膜 胸の内側→壁側胸膜
・臓側胸膜と壁側胸膜の間には水分がごく少量存在
・水の表面張力によってそれぞれの膜同士が接着する構造
・胸郭が動いて肺が引っ張られると呼吸ができる
しかし、肺に穴が空いて臓側胸膜と壁側胸膜の間に空気が漏れ出すと、その密着がなくなり、肺がしぼんでしまいます。
しぼむ時に胸膜が引っ張られますが、胸膜には痛みを感じるセンサーがあるため、胸が痛むようになるのです。
また、呼吸しづらくなることで息苦しさも感じます。
これが気胸の症状です。
気胸を起こしやすいのは、20代前後の高身長の男性や、長期間の喫煙で肺を傷めている高齢者です。
思い当たる節があれば病院で治療をする必要があります。
胸膜炎
胸膜炎とは、胸膜に炎症が起こっている状態です。
前述の通り、胸膜には痛みを感じるセンサーがあり、炎症が起こると痛みを感じます。
また、炎症に伴って胸水の量も増加します。
胸水が増加すると、肺がだんだんと圧迫され、息苦しさを感じるようになります。
胸膜炎は、多くの場合は肺炎から移行します。
こちらも早期に受診しましょう。
心筋炎
心筋炎は、心臓の筋肉に炎症が起こる病気です。
心筋の動きが制限されるため、全身に送る血液の量が減少し、動くと息苦しさを感じることがあります。
多くの場合、風邪に引き続いて起こります。
最近では、コロナ感染に伴って起こる事例も多く見受けられます。
基本的には対症療法ですが、重篤になることもあるので、病院で慎重な経過観察が必要となります。
肺血栓塞栓症
肺血栓塞栓症は、肺動脈に血の塊である血栓が詰まることで起きる病気です。
血液は、心臓から出ると動脈を通って全身を巡り、静脈を通って心臓に帰ってきた後、今度は肺に送り出されます。
【全身の血の巡り】
心臓から出て動脈を通り全身へ
↓
全身から静脈を通って心臓に帰る
↓
心臓から再度出て肺へ
そのため、静脈に出来た血栓が飛んでしまうと、心臓を経て肺の動脈に詰まることになります。
深部静脈血栓症
静脈に血栓ができる原因として多いのが深部静脈血栓症です。
いわゆるエコノミークラス症候群と呼ばれる病気で、足をあまり動かさないことで血がよどみ、血栓を形成します。
その血液が、再度足を動かしたときに剥がれて肺まで届きます。
このため、動かない時間が続いた後、急に動くと発症することが多いのです。
発症すると、突然の息苦しさや胸痛を感じます。
早期の治療が必要なので、早めに受診しましょう。
肋骨の骨折によるもの
上記のように、内臓疾患の場合もありますが、肋骨が折れた際にも胸が痛むことがあります。
よくあるのは胸をどこかにぶつけた後ですが、ひどく咳き込んだ後にも肋骨が折れることがあります。
肋骨が折れた場合は、痛みを感じる場所が一点に集中していることがほとんどです。
また、触って痛みを感じるのも特徴です。
基本的には痛み止めで様子を見るしかありませんが、骨折が大きかったり複数だったりすると治療が必要な場合もあります。
胸が苦しいときは病院に行くべき?何科?
前述の通り、胸が苦しいときには重篤な疾患が隠れている可能性があります。
一度は病院を受診しておくと良いでしょう。
診療科は内科系であれば何科でもかまいませんが、可能であればより重篤な狭心症や肺塞栓症を得意とする循環器内科を受診されるのが望ましいです。
ただ、重篤な場合には一刻を争うので、救急車を呼びましょう。
様々な疾患を除外して、最終的にストレスによるものと判断できるときは、自宅で安静に過ごしてください。
胸が苦しい原因についてよくある質問
胸が苦しい原因に関して、よくある質問にお答えします。
胸の真ん中が痛いのですが、何か原因はありますか?
胸の症状があるとき、具体的にどの辺りがおかしいのか判別するのはとても重要です。
【場所別の疑われる疾患】
・胸の真ん中やや左寄り→狭心症などの心疾患
・胸の左右に局在→気胸や胸膜炎など
・胸の真ん中→狭心症や肺塞栓症など
特に真ん中やや左寄りですと、狭心症などの心疾患が疑われますし、左右に局在している場合は気胸や胸膜炎の可能性が高くなります。
胸の真ん中が痛いとなると、非典型的ながら狭心症や肺塞栓症などの病気が疑われます。
なお、ストレスの場合もあります。
寝起きに胸が苦しいのですが、原因は何ですか?
寝起きに胸が苦しい場合は、自律神経系の異常による心理的な症状か、もしくは冠攣縮性狭心症という特殊な狭心症の可能性があります。
寝ている間、自律神経系は非常に不安定になります。
これが起床時はより不安定になり、心理面に与える影響も大きいです。
冠攣縮性狭心症とは
・もともと冠動脈に狭窄がほとんどない
・動脈が痙攣することで血流が悪くなる
・狭心症の症状が出てくる
冠攣縮性狭心症とは、冠動脈にもともと狭窄がほとんどないにもかかわらず、動脈が痙攣することで血流が悪くなり、狭心症の症状が出てくることを言います。
特に自律神経系の乱れが起きる明け方に多いとされており、注意すべき疾患です。
こちらも検査をしてみないとはっきりとしたことは言えませんので、寝起きに胸の苦しさを感じるときは早めに受診しましょう。
更年期で胸が苦しいのですが、何か病気の可能性はありますか?
更年期障害の症状として、胸が苦しくなることがあります。
ただ、更年期は、老化に伴う様々な病気が出始める頃でもあります。
狭心症などの血管病も起こりうる時期ですので、動いたときに症状が出るなど、症状の出方に特徴がある場合は病院で精査してもらうといいでしょう。
胸の苦しみに加えて咳が出るのですが、何か病気の可能性はありますか?コロナですか?
胸の苦しみに加えて咳が出る場合は、何らかの呼吸器疾患である可能性があります。
もちろん、コロナも可能性の1つです。
他に、肺炎や肺炎から派生した胸膜炎などは、咳を伴う呼吸苦の際に考えなければならない疾患です。
早期に受診するようにしてください。
胸が苦しい・圧迫感がある原因 まとめ
まとめ
- 胸の苦しさをきたす病気には様々なものがある
- 精神的な要因によるものも多いが、重篤な病気の可能性もある
- 特に初めて感じるような症状の時は病院を受診する