「医師から高血圧になる可能性があると指摘され、自分の血圧が正常値かどうか、またどうすれば正常値を維持できるのかを知りたい。」
そのように悩んでいるのではないでしょうか。
たしかに、運動不足や食生活の偏りが高血圧のリスクとわかっていて、血圧が高いと言われていてもどの程度が正常値がは判断が難しいですよね。
この記事では、高血圧の定義や基準値、高血圧のリスクや解決方法に加えて、低血圧についても詳しく解説しています。
この記事を読んで、血圧の正常値について理解を深めていきましょう。
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血圧の正常値とは?
血圧とは上の血圧である収縮期血圧と、下の血圧である拡張期血圧に分けられます。
名称 | 内容 | |
上の血圧 | 収縮期血圧 | 心臓が収縮して血液を全身に送り出す際の圧力 |
下の血圧 | 拡張期血圧 | 心臓が収縮した後に血液が再び心臓に戻り 心臓が拡張して元の大きさに戻る際の圧力 |
収縮期血圧は心臓が収縮して血液を全身に送り出す際の圧力を指し、拡張期血圧は心臓が収縮した後に血液が再び心臓に戻り、心臓が拡張して元の大きさに戻る際の圧力を指します。
高血圧の診断には、この2つの血圧値の両方を考慮する必要があります。
血圧の正常値については日本高血圧学会から出されている高血圧治療ガイドライン2019のデータが参考になります。
診療ガイドラインとは、研究論文などのエビデンスに基づいて、最良と考えられる検査や治療法などを提示する文書のことです。
診療ガイドラインは、患者と医療者を支援する目的で作成されており、意思決定の際に、判断材料の1つとして利用されることがあります。
また、血圧の正常値、高血圧の定義は診察室で測定する血圧と家庭で測定する血圧で基準値が若干異なります。
これは白衣高血圧や測定環境の違いが原因として挙げられます。
・白衣高血圧
医療機関で測定した際に緊張や不安を感じることで、診察室での血圧測定時に一時的に高い血圧を示すことを言います。
・家庭での血圧測定
個人がリラックスした環境で行われることが多く、日常生活の中での血圧の実際の状態を反映することが期待されます。
そのため診察室での血圧測定と家庭で測定した血圧では、基準値が異なります。
ガイドラインでは血圧の正常値は年代や性別によらず診察室での血圧では収縮期血圧が120未満かつ、拡張期血圧が80未満であると定義されます。
家庭血圧では収縮期血圧が115未満かつ、拡張期血圧が75未満が正常値になっています。
ご高齢になってくると血圧が高くなりがちですが、血圧の正常値に男女、年代の違いはないということに注意が必要です。
高血圧の場合
高血圧の診断基準やリスクについて解説します。高血圧について理解することで治療の意義が明確になるので、ぜひ参考にしてください。
高血圧の定義・基準
高血圧とは、安静にしている状態での血圧が正常値よりも高い状態のことを指します。
一般的に高血圧だけでは無症状ですが、放置しておくと動脈硬化が進行してしまい、脳卒中や心臓発作のリスクが高まるため治療をすることが推奨されています。
基準値については高血圧治療ガイドライン2019から血圧の基準が発表されています。
分類 | 診察室血圧 | 家庭血圧 | ||
---|---|---|---|---|
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
正常血圧 | <120 かつ <80 | <115 かつ <75 | ||
正常高値血圧 | 120-129 かつ <80 | 115-124 かつ <75 | ||
高値血圧 | 130-139 かつ/または 80-89 | 125-134 かつ/または 75-84 | ||
I度高血圧 | 140-159 かつ/または 90-99 | 135-144 かつ/または 85-89 | ||
II度高血圧 | 160-179 かつ/または 100-109 | 145-159 かつ/または 90-99 | ||
III度高血圧 | ≧180 かつ/または ≧110 | ≧160 かつ/または ≧100 |
このうち、高血圧と診断されるのはⅠ度高血圧の基準である診察室血圧が140/90 mmHg以上もしくは家庭血圧が135/85 mmHg以上の場合です。
高血圧のリスク
高血圧は放置しておくことによって以下のような様々なリスクがあります。
心血管疾患リスクの増加
高血圧は心臓や血管に負荷をかけるため、心筋梗塞(心臓の血管が詰まることによる損傷)、脳卒中(脳の血管が詰まるか破裂することによる損傷)などの心血管疾患のリスクを増加させます。
腎臓疾患のリスクの増加
高血圧は腎臓にも悪影響を及ぼし、慢性腎臓病のリスクを高める可能性があります。
眼疾患のリスクの増加
高血圧は網膜の血管にダメージを与え、網膜症や失明のリスクを増加させることがあります。
心不全のリスクの増加
高血圧は心臓の負担を増やし、心臓の機能低下や心不全のリスクを高めます。
動脈硬化の進行
高血圧は動脈壁にダメージを与え、動脈硬化(動脈壁の厚くなり硬くなる状態)を進行させる可能性があります。
生活習慣病のリスク
高血圧の最も多い原因は塩分の摂りすぎです。
塩分の摂取量が増えると、体内の水分量が増え、血圧が上昇する傾向があります。
その他にも…
・生活習慣が乱れている場合→糖尿病、高脂血症、肥満、睡眠時無呼吸症候群など他の生活習慣病のリスクを増加させる可能性あり
・複数の要因が重なってしまうメタボリックシンドローム→腹部肥満、高血圧、高血糖、脂質異常などの複数の要因が同時に存在し、心血管疾患や糖尿病のリスクを増加させる
そのため、高血圧の診断基準だけではなく、他の要因がある場合にも注意が必要です。
ほとんどの高血圧は無症状で進行していきます。
多くの方は自覚症状を感じずにいるため、自分が高血圧であることに気づかないことがあります。
しかし、高血圧は心血管疾患や腎臓疾患などの深刻な合併症のリスクを増加させる可能性があるので、定期的な血圧のチェックが重要です。
高血圧の解決法
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高血圧と診断された場合には以下のような対策を検討する必要があります。
それぞれの内容について詳しく解説していきます。
減塩
高血圧対策には、食塩摂取量の制限が不可欠です。
健康な食事摂取目標として、食塩摂取は1日8g未満、または成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。
日本高血圧学会の指針では特に高血圧患者では1日の食塩摂取量を6g未満にすることが強く推奨されています。
減塩をするための対策について解説します。
1.全体的に薄味にする
2.かけしょうゆやかけソースの使用を減らす
3.漬け物や味噌汁の摂取量を減らしたり、ラーメンのスープを飲み干さない
4.塩分の少ない調味料を使う
5.香辛料や香味野菜、果物の酸味を利用する
6.外食や加工食品を控える
といった対策があます。
健康的な食事の摂取
減塩だけではなく、野菜、果物を積極的に摂取することも有効です。
野菜や果物、海藻などにはカリウムが豊富に含まれています。
カリウムには塩分の排泄を促進する効果があるので、血圧を低下させる作用があります。
ただし、腎臓の機能が悪いかたはカリウムの取りすぎによって血液中のカリウムが高くなってしまう場合があるのでかならず担当の医師と相談するようにしてください。
適度な運動
適度な運動を取り入れましょう。
有酸素運動(ウォーキング、水泳、サイクリングなど)は血圧を下げる効果があります。
一般的な目安としては、週に150分程度の有酸素運動を行うことが推奨されています。
これを週に3〜5回程度の日数で分散して行うと良いでしょう。
ただし、運動を始める前に医師に相談し、自身の体力や健康状態に合わせた適切な運動プランを立てましょう。
体重管理
適正な体重を維持することも重要です。
肥満は高血圧のリスクを増加させる要因の一つですので、適度な体重を保つために食事制限や運動を行いましょう。
体重の目安は、個人の身長や体格によって異なります。
一般的には、ボディマス指数(BMI)と呼ばれる指標を使用して体重の適正範囲を評価します。
BMIは以下の式で算出されます。
BMI = 体重(kg) / 身長(m)^2
BMIの値に基づくと25未満が正常体重ですので、BMI25を目標に体重設定することが推奨されます。
ストレス管理
ストレスは血圧を上昇させる要因の一つです。
リラクゼーション法やストレス軽減の方法(ヨガ、瞑想、深呼吸など)を取り入れることで、ストレスを軽減し、血圧をコントロールすることができます。
生活習慣の改善
高血圧の場合、喫煙や過度のアルコール摂取は血圧を上昇させる要因となりますので、これらの生活習慣を見直すことも重要です。
喫煙や過剰なアルコール摂取を避けましょう。
医師の指導を受ける
高血圧の管理には、医師の指導を受けることが重要です。
定期的な健康チェックや血圧のモニタリング、必要な場合の薬物療法など、医師と協力して適切な治療計画を立てましょう
これらのアプローチを組み合わせて、無理のない治療を長期間継続することが重要です。
低血圧の場合
低血圧とは高血圧とは逆に、安静にしている状態での血圧が正常値よりも低い状態のことを指します。
ここから低血圧の定義や基準値、低血圧のリスクなどについて解説していきます。
低血圧の定義・基準
低血圧は、一般的には収縮期血圧が100 mmHg未満の状態を指します。
具体的な数値よりも重要なのは、低血圧によって身体に症状や不快感が生じているかどうかです。
ただし、低血圧の明確なガイドライン上の定義はまだ存在していません。
低血圧の症状には、めまい、立ちくらみ、失神、倦怠感、頭痛、嘔気、動悸、発汗などがあります。
これらの症状は、一般的に低血圧と関連していることがありますが、若い女性などで朝寝起きが悪い症状が直接に低血圧と関連しているかどうかは科学的にはまだ明確にはされていません。
低血圧は、主に3つのタイプに分類されます。
・原因の特定できない本態性低血圧症
・原因疾患が関与する症候性(二次性)低血圧症
・立ち上がった際に見られる起立性低血圧症
低血圧の原因や症状の評価には、症状の有無や体位の変化、原因疾患の特定などが重要な要素となります。
低血圧の治療が必要な場合は、症状や病態に応じて、生活上の指導や原因疾患の治療、血圧上昇を目的とした薬物療法などが行われることがあります。
医師との相談を通じて、最適な治療方法を見つけることが大切です。
低血圧のリスク
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低血圧による症状は個人差がありますが、放置することによるリスクが存在します。
以下に低血圧のリスクについて説明します。
ふらつきや失神 | 脳への酸素や血液の供給が不十分になり、十分な血液が脳に供給されず ふらつきや立ちくらみ、重症な場合には失神することがあります。 |
嘔吐、吐き気 | お腹の症状がないにも関わらず、吐き気や嘔吐を起こしてしまう場合があります。 |
倦怠感や疲労感 | 全身の臓器に酸素や栄養素が効率的に供給されないことがあります。 これにより、倦怠感や疲労感が生じることがあります。 |
冷や汗 | 脳への血流が不足するため身体は脳への血流を増加させようと 心拍数を増加させたり、手足の末梢血管を収縮させます。 その過程で交感神経が活性化して冷や汗が出やすくなります。 |
心拍数の増加 | 血圧が低いために心臓はより努力して血液を送り出そうとします。 その結果、心拍数が増加することがあります。 |
脳機能の低下 | 脳は酸素と栄養素を必要としますが、低血圧の場合 これらの供給が不十分になることがあります。 長期間にわたって低血圧が続くと、脳機能に影響を与える可能性があります。 |
頭痛 | 低血圧によって脳への血液が不足することによって頭痛が出ることもあります。 |
転倒や怪我のリスク | 低血圧によりめまいやふらつきが起こると、転倒や怪我のリスクが高まります。 特に高齢者や体力の低下している人は、注意が必要です。 |
低血圧の解決法
低血圧を解決する方法はいくつかあります。
以下にいくつかの対策方法を示しますが、具体的な治療方法は個人の症状や原因に応じて医師と相談することが重要です。
水分と塩分の摂取
低血圧の一因は体内の水分や塩分の不足です。
適度に水分を摂り、食事に塩を加えることで血圧を上げることができます。
ただし、塩分の摂りすぎには注意が必要です。
食事を小分けにして頻繁に摂る
一度にたくさんの食事をすると、消化吸収のために血流が胃や腸に多く分布して、血圧が低くなってしまう場合があります。
1回の食事の量を少量にちて頻繁に摂ることで、血圧の安定を図ることができます。
圧迫ストッキングの使用
低血圧の原因の1つに血管の収縮を調整する機能が低下することによって足の血管がうまく収縮せず脳血流が不足することがあります。
圧迫ストッキングは、足に適度な圧力をかけることで、足先から心臓へ血液が戻るのを助ける効果があります。
これにより、血液が足から上半身に適切に循環し、低血圧を予防することが可能です。
適度な運動
適度な運動は血圧を正常範囲に保つのに役立ちます。
有酸素運動や軽度の抵抗運動を定期的に行うことで、血液の循環が促進され、低血圧の改善につながる可能性があります。
原因疾患の治療
低血圧の背後には他の病気が存在する場合があります。
例えば、甲状腺や副腎の機能不全などが低血圧を引き起こすことがあります。
原因疾患を適切に治療することで、低血圧を解決することができます。
薬物療法
一部の方に、低血圧の症状を軽減するために薬物療法が必要となる場合があります。
使用する薬剤は、原因疾患によって異なるので必ず医師の診断、処方を受けることが重要です。
血圧の正常値についてよくある質問
高血圧、低血圧の定義や基準、それぞれのリスクについて説明してきました。
ここから血圧の正常値についてよくある質問についてお答えしていきます。
血圧を下げるにはどうすればいいですか?
血圧を下げるためには以下のような方法を試すことがお勧めです。
食事習慣の改善
まず試みるべき方法です。
高血圧を改善する食事の内容としてDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食や地中海食があります。
高血圧で最も多い原因は塩分の取りすぎなので、食事の塩分の摂取を制限し、生野菜やバナナなどカリウム豊富な食品を摂取するようにしましょう。
さらに、魚やナッツ類を積極的に食べて良質な油を取るようにしましょう。
体重管理
適切な体重に維持することは血圧の管理に重要です。
肥満は高血圧の危険因子なので、運動やバランスの取れた食事を通じて、健康的な体重を保つようにすることがお勧めです。
適度な運動
ウォーキング、水泳、サイクリング、ランニングなどの有酸素運動や筋力トレーニングは高血圧や肥満の改善に有効です。
有酸素運動では週に150分以上が推奨されているため、継続することを目標に1日20-30分の運動を週に何回か取り入れるようにしてください。
ストレス管理
長期間のストレスは高血圧の原因となります。
入浴や瞑想、趣味や余暇を充実させることで、ストレスをためないようにしましょう。
アルコールと喫煙の制限
過度のアルコール摂取や喫煙は血圧を上げる要因となります。
適度なアルコール摂取や禁煙を心掛けることが重要です。
更年期の血圧の正常値はどれくらいですか?
更年期の血圧の正常値は、成人の一般的な血圧の基準に準じます。
健康な成人の場合、血圧の正常値は収縮期血圧(最高血圧)が120 mmHg未満であり、拡張期血圧(最低血圧)が80 mmHg未満です。
成人後の血圧の正常値は年代によって決まるわけではないため、注意するようにしてください。
血圧の下が高いときのリスクは何ですか?
下の血圧は拡張期血圧と言われ、末梢血管抵抗が上昇すると増加してきます。
拡張期血圧が高い場合は収縮期血圧が高い時と同じように、心血管疾患のリスクが増加してしまいます。
肥満、運動不足、喫煙者などの方で上昇しやすいことが知られており、収縮期血圧だけではなく拡張期血圧にも注意して管理をすることが必要です。
まとめ
血圧とは上の血圧である収縮期血圧と、下の血圧である拡張期血圧に分けられます。
高血圧の診断には、この2つの血圧値の両方を考慮する必要があり、高血圧と診断されるのは診察室血圧が140/90 mmHg以上もしくは家庭血圧が135/85 mmHg以上の場合です。
高血圧は放置することにより動脈硬化の進行や心血管疾患リスクが増加してしまいます。
そのため、食事や運動などの生活習慣の改善や薬物療法により適切に治療することが重要です。