コレステロール値が高いと出る症状は?脂質異常症や動脈硬化について解説

「健康診断でコレステロール値が高いと言われたけど、放置するとどんな症状が出るの?」

そんな悩みを抱えていませんか?

たしかに自覚症状がないと危機意識を持ちにくく、放置してしまう方も多いですよね。

そこでこの記事では上記の悩みを抱えている方に向けて、コレステロール値が高いと現れる症状について解説していきます。

健康的なコレステロール値や予防方法、薬に頼らない治療方法について詳しく解説していますので、コレステロール値のコントロールを目指している方はぜひ参考にしてください!

この記事のまとめ

・コレステロール値が高くなっても自覚症状は現れない
・コレステロール値が高いまま放置すると、黄疸腫や脂質異常症・動脈硬化など重大な疾患を引き起こす
・動脈硬化は狭心症・心筋梗塞・脳梗塞・脳出血といった命に関わる疾患になる原因である
・コレステロール値の治療法には食事療法・運動療法・薬物療法がある

目次

コレステロールが高いと出る症状

脂質の検査結果

健康診断の血液検査で「コレステロール値が高い」と指摘されても、自覚症状が現れることはありません

コレステロールは脂質の1種で、脳や肝臓、神経組織に存在します

「ホルモンや胆汁酸の材料」になったり、「脳の神経伝達」を行うなど、人間が生きていくためには非常に重要な物質です。

しかし、現代では簡単に必要以上の栄養を摂取できるため、多くの方がコレステロールを過剰摂取しています。

コレステロールは4つに分類されます。

種類役割
カイミクロン中性脂肪を脂肪組織に運搬する
VLDL肝臓で作られた物質を筋肉や組織に運搬する
LDLコレステロール
(悪玉コレステロール)
コレステロールを肝臓から末梢組織へ運搬する
HDLコレステロール
(善玉コレステロール)
コレステロールを肝臓へ運搬する

「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールが肝臓から身体の組織へとコレステロールを運び、「善玉」と呼ばれるHDLコレステロールが組織の中にあるコレステロールを再び肝臓へ運ぶという真逆の働きをしています。

血液中のLDLコレステロールが高い状態は「高コレステロール血症(高LDLコレステロール血症)」と呼びます。

脂質異常症の1種で、LDLコレステロール値が140mg/dl以上あると診断されます。

病名LDLコレステロール値
高コレステロール血症140mg/dl
境界域高コレステロール血症120~139mg/dl

高コレステロール血症の状態を放置すると、より重大な疾患を引き起こすリスクが高まります。

・黄疸腫
・脂質異常症
・動脈硬化

ここからは、高コレステロール血症を放置した場合にリスクの高まる上記の疾患について解説します。

黄色腫

黄色腫とは、皮膚や腱(けん)にコレステロールや中性脂肪などの脂質が溜まることにより、皮膚に色や形状の変化が現れる状態です。

遺伝による「家族制高コレステロール血症」の代表的な症状の1つです。

糖尿病などほかの疾患を合併していることも多く、それぞれの疾患が動脈硬化のリスクを高める可能性もあります。

黄色腫では、皮膚に見た目上の変化が現れます。

・目元に小さな盛り上がりを生じる(眼瞼黄疸腫)
・皮膚がやや黄色みがかった色調の変化がある
・肘や手の甲の関節・膝・かかとなどの関節に結節状のこぶが形成される
・アキレス腱などの腱が太くなるなど、皮膚に盛り上がりを生じる
・通常、痛みやかゆみはない

上記の症状がすべて現れるわけではなく、どの部位に症状がみられるかは様々です。

コレステロールなどの脂質代謝の異常によって起きた黄色腫は、脂質コントロールを図ることで治療を行います。

症状の出現した場所によっては手術で切除したり、レーザーで治療をすることもあります。

黄色腫は心筋梗塞などの命に関わる合併症を続発する恐れがあるため、黄色腫のような症状が現れた場合にはすぐに病院を受診して医師による診察を受けましょう。

脂質異常症

脂質の検査に丸印をつける

「高コレステロール血症」と「高脂血症」を総称して「脂質異常症」と呼びます

トリグリセリド(中性脂肪)が増加するほど、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減少していくとされています。

高コレステロール血症と同様に、脂質異常症にも自覚症状はありません。

しかし、治療をせずに放置すると動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞・脳梗塞・脳出血など、死に至る危険のある重大な病気を引き起こすリスクが高まります。

また、脂質異常症になる原因には、家族性のものや遺伝子異常・食生活・運動などの生活習慣によるものがあり、様々な原因が関与しているケースも多いです。

そのためなるべく早期に病院を受診して脂質異常の原因を特定し、医師や管理栄養士に指導を受けながら悪化予防や治療を進めていくことが大切です。

動脈硬化

心臓

LDLコレステロールが増加しすぎると、血管の内壁にどんどん脂肪が付着して、動脈硬化が進行していきます。

1.血液中のLDLコレステロールが増加すると、血管の内壁にアテロームと呼ばれる壁ができる。
2.血管壁は非常に薄いので、アテロームによって膨らんだ血管は、少しの刺激で破れてしまう
3.血管が破れると傷口を覆うために血栓ができる
4.血栓によって血管は塞がれ、血液の流れが悪くなりドロドロの状態になる。
5.破れなかった血管壁も徐々に血管を狭めて血液の流れを悪くしていき、血管の壁が厚く、硬く、もろくなる「動脈硬化」が進行していく。

HDLコレステロールは組織内にある余計なコレステロールを肝臓まで運ぶ役割があります。

血液中のHDLコレステロール値が高いと、血管の内壁に付着したコレステロールを減らす働きをしてくれるため、HDLコレステロールが低い状態も動脈硬化の進行につながります

動脈硬化が進行すると、狭心症や心筋梗塞・脳梗塞・脳出血など命に関わるような重大な疾患を引き起こすリスクが高まります。

そのため、LDLコレステロール値が高く、HDLコレステロール値が低い状態をそのまま放置するのは動脈硬化の進行を進めるためとても危険です。

コレステロール以外にも高血圧など下記の因子が多いほど、動脈硬化が進行しやすくなります。

高血圧
喫煙
加齢
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)
・性別:女性よりも男性の危険が高い
・家族歴:血縁者に動脈硬化性の疾患を患っている方がいる
慢性腎臓病
糖尿病
冠動脈疾患の既往
・タイプA性格:几帳面で競争心が強い性格

コレステロールの異常は、サイレントキラー(静かな殺人者)と呼ばれるほど自覚症状がないとされています。

健康診断の血液検査などでコレステロールを指摘された時点で早めの対処を心がけることが重要です。

狭心症や心筋梗塞

心臓の模型

LDLコレステロールの高値などにより心臓の血管の動脈硬化が進行すると、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を引き起こすリスクが高まります

狭心症は心臓の機能が完全に低下した状態ではありませんが、心筋梗塞は心臓につながる血管(冠動脈)が完全につまってしまい機能低下が起こります

その結果、激しい不整脈や著しい心機能の低下を生じ、突然死に至る危険もあります。

スクロールできます
疾患名発症機序症状症状の持続時間
狭心症心臓の血管が狭くなり、心臓の筋肉への血液のめぐりが悪くなっている状態胸痛・胸の圧迫感やしめつけ感数分以内に治まる
心筋梗塞心臓の血管に血栓(血液のかたまり)が生じ、血管が詰まる。血液が流れなくなった結果、心臓の筋肉細胞が死んでしまった状態激しい胸痛・胸の圧迫感やしめつけ感・呼吸困難・吐き気・冷や汗・顔色が悪くなる・脈の乱れ・放散痛(激痛が胃や腕、肩などに起こる)20分~数時間に及ぶことがある

狭心症や心筋梗塞の3大危険因子はLDLコレステロールの高値・高血圧・喫煙です。

健康診断でこれらの指摘を受けたら、食生活の乱れや運動不足・禁煙など生活習慣の乱れを改善し、虚血性心疾患の予防に努めましょう。

脳梗塞や脳出血

脳の模型

LDLコレステロールの高値などにより心臓の血管の動脈硬化が進行すると、脳の血管が詰まって脳梗塞になるリスクが高まります。

また、動脈硬化は血管の弾力性の低下にもつながるため、血圧が上がった際に血管が破れやすくなり、脳出血やくも膜下出血を引き起こしやすくなります

ちなみに、脳梗塞や脳出血のことを総称して「脳血管障害(脳卒中)」と呼びます。

脳卒中の症状は突然起きることが多いですが、下記のような前駆症状が現れることもあります。

・めまい
・頭痛
・片方の手足が動かない・しびれる
・顔の半分が動かない
・舌がもつれ、呂律が回らない

脳血管障害は発症すると死に至る可能性があり、命が助かっても半身不随や認知症などの重大な後遺症が残るケースも多いです。

ですが、初期に治療すれば後遺症が起きることなく完治する可能性もあるため、上記のような症状が現れたらすぐに救急車を呼びましょう。

脳血管障害を発生させる危険因子には、LDLコレステロールの高値以外にも、高血圧・不整脈(心房細動)・糖尿病・喫煙・肥満・飲酒などが挙げられます。

コレステロール値の高値や高血圧・不整脈・糖尿病を指摘された方は、病院での治療や保健指導を受けることが大切です。

そして、食生活や運動習慣・禁煙・節酒など生活習慣を改善して、健康の管理に努めていきましょう。

脂質異常症の診断数値

下記の基準に当てはまると、「脂質異常症」と診断されます。

検査項目検査値
(空腹時の血清中濃度)
疾患名
トリグリセライド
(中性脂肪)
150mg/dl 以上高トリグリセライド血症
LDLコレステロール
(悪玉コレステロール)
140mg/dl 以上高コレステロール血症
120~139mg/dl境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール
(善玉コレステロール)
40mg/dl 未満低HDLコレステロール血症
Non-HDLコレステロール170mg/dl以上高Non-HDLコレステロール血症
150-169mg/dl境界域Non-HDLコレステロール血症
(参考:脂質異常症 | e-ヘルスネット(厚生労働省))

ここからは、それぞれの検査項目について解説していきます。

HDLコレステロール(善玉コレステロール)

HDLコレステロールとは、「善玉コレステロール」と呼ばれるコレステロールの一種です。

血管の内壁に付着したコレステロールを肝臓まで運び、コレステロールを代謝させるという重要な役割を担っています。

この作用は動脈硬化の予防につながり、狭心症や心筋梗塞・脳梗塞・脳出血などの発症リスクを低下させます。

また、HDLコレステロールが低くなりすぎると血管や細胞膜が弱くなり、免疫力が低下することがあります。

HDLコレステロールが低くなる主な原因は、運動不足・肥満・喫煙で、中性脂肪(トリグリセライド)の高値と併発することが多いです。

状態検査値疑われるリスク
基準値男性:40~86mg/dl 女性:40~96mg/dl
低HDLコレステロール血症40mg/dl未満動脈硬化(狭心症・心筋梗塞などにつながる)・免疫力の低下・脳出血やがんになりやすい
異常高値100mg/dl以上 急激な上昇肝臓や肺などの疾患・アルコール過剰摂取・ステロイドやフィブラート系薬剤などの使用・遺伝的要因

HDLコレステロールの検査は、健康診断や人間ドックの基本検査項目に含まれています。

LDLコレステロールや中性脂肪と同時に検査することが一般的で、HDLコレステロールのみで動脈硬化のリスクや脂質異常症の有無を診断することはできません。

減量や運動の習慣・禁煙により、HDLコレステロールを上昇させることができます。

飲酒によりHDLコレステロールを上昇させる効果があるとされますが、飲酒は肝障害や高血圧などを増悪させる危険があるため、低HDLコレステロール血症の治療に飲酒は推奨されていません。

LDLコレステロール(悪玉コレステロール)

LDLコレステロールは、「悪玉コレステロール」と呼ばれる脂質の一種です。

肝臓でつくられたコレステロールを身体全体の組織まで運ぶ役割を担っています。

LDLコレステロールが高い主な原因は、食生活での飽和脂肪酸の摂りすぎです。

状態検査値疑われるリスク
正常範囲140mg/dl ―
高コレステロール血症140mg/dl以上動脈硬化(狭心症・心筋梗塞・脳梗塞・脳出血につながる)
境界域コレステロール血症120~139mg/dl

鶏卵の黄身や魚卵から摂取できるコレステロールはLDLコレステロールを上昇させますが、飽和脂肪酸よりは影響が小さいとされています。

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」では、コレステロール値の上限は設定されていません(参考:日本人の食事摂取基準2020年版)。

後述しますが飽和脂肪酸はバターやラード・生クリーム・肉の脂身・加工食品(インスタントラーメンなど)などに多量に含まれるため摂り過ぎに注意し、食生活の改善を心がけましょう。

中性脂肪(トリグリセライド)

中性脂肪(トリグリセライド)とは、肉や魚・食用油等に含まれる脂質や、体脂肪の大部分を占める物質です。

中性脂肪が高い主な原因は、甘いもの・脂っこいもの・飲酒・糖質などエネルギー量(カロリー)の過剰摂取と運動不足でエネルギーが有り余ってしまうことです。

中性脂肪が肝臓に蓄積しすぎると脂肪肝になる恐れがあり、放置すれば肝線維化・肝硬変へと進行していく可能性があります。

また、動脈硬化を直接的に早める効果はありませんが、LDLコレステロールを小型化し小さな隙間に侵入可能にしてしまうため、結果的に動脈硬化を進行させることにつながります。

状態検査値疑われるリスク
基準値30~149mg/dl
高トリグリセライド血症150mg/dl以上高トリグリセライド血症

中性脂肪には、乱れた食生活を改善し、習慣的な運動や体重の減量を行うことが有効です。

青魚に含まれるn-3系(ω-3系)多価値不飽和脂肪酸を摂取すると中性脂肪(トリグリセライド)を低下させる効果があります。

Non-HDLコレステロール

Non-HDLコレステロールは、LDLコレステロールを含む全ての悪玉コレステロール(リポタンパク・レムナントなど)の量を表した検査値です。

LDLコレステロール以外の悪玉は非常に少ないというのが一般的ですが、中性脂肪(トリグリセライド)の多い方はLDLコレステロール以外の別の悪玉コレステロールの量が増加しやすいとされています。

脂質異常症を詳しく把握するためには、中性脂肪(トリグリセライド)が高い方はNon-HDLコレステロールの検査値も併せて確認することが重要です。

Non-HDLコレステロールの基準値は90~149mg/dlで、脂質異常症と診断されるのはNon-HDLコレステロール170mg/dl以上の場合です。

状態検査値疑われるリスク
基準値90~149mg/dl
境界域Non-HDLコレステロール血症150-169mg/dl脂質代謝異常・家族制高脂血症・血管の詰まり・甲状腺ホルモンの低下(甲状腺機能低下症)
高Non-HDLコレステロール血症170mg/dl以上
異常(数値が低い)89 mg/dl以下栄養吸収障害・低βリポタンパク血症など

境界域の状態でも、前述した動脈硬化の他の因子(高血圧・喫煙・加齢など)に該当する方は動脈硬化が進行しやすいため注意しましょう。

Non-HDLコレステロールは高値でも低値でも明らかな疾患があるというわけではありませんが、健診結果などにより病院の受診を奨められた方は医師に相談してみることが大切です。

予防や治療方法

グッジョブ!する医師

LDLコレステロールの上昇を抑えるための予防や治療方法には食事療法・運動療法・薬物療法の3つがあります。

脂質異常症は「生活習慣病」と呼ばれている通り、乱れた食生活や運動不足など毎日の生活習慣を原因として引き起こされることが多いです。

ここからは、具体的な対策方法を詳しく解説していきます。

下記の記事を読んで、コレステロールの上昇を抑え動脈硬化を防ぐために、日常生活の見直し方や高コレステロール血症の治療方法について知っておきましょう。

食事療法

脂肪分の多い肉

LDLコレステロールの高い方がまず初めに取り掛かることは、飽和脂肪酸の摂取量を減らすことです。

脂肪には飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸の3種類あります。

不飽和脂肪酸には、LDLコレステロールを低下させる働きがあります

飽和脂肪酸を多く含む食品の摂取を避け、不飽和脂肪酸(多価不飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸)を多く含む魚料理や植物油をバランスよく食べることが大切です。

脂肪酸名食品
    飽和脂肪酸肉などの動物性脂肪・乳製品(バター・チーズ・ホイップクリームなど)・チョコレート・アイスクリーム・ヤシ油・パーム油・マーガリン など
      不飽和脂肪酸多価不飽和脂肪酸n-6系サラダ油・ごま油・大豆油・コーン油・紅花油・くるみ など
n-3系えごま油・魚油(DHA/EPA)・シソの実油 など
一価不飽和脂肪酸オリーブ油・なたね油・ヘーゼルナッツ・マカダミアナッツ・アーモンド など

マーガリンやショートニングを含む洋菓子・スナック菓子などは、動脈硬化を促進する「トランス脂肪酸」を多く含むため、なるべく控えましょう。

また、コレステロールを多く含んでいる食品の摂取量と頻度に関しても注意が必要です。

コレステロールや脂肪分の多い食品を食べ過ぎると、血液中のコレステロールが上昇する原因となります。

コレステロールを多く含む食品は、卵・レバーやあん肝などの内臓類・乳製品・シュークリーム・魚卵・うなぎなどです。

たくさんの野菜

そして、体内のコレステロールの排出を促す「食物繊維」を毎日積極的に食べることも重要です。

食物繊維を多く含む食品は、野菜(ゴボウ・青菜類・キャベツ・白菜など)・果物(柑橘類・バナナ・うりなど)・海藻・きのこ類・こんにゃく・豆類(大豆・納豆・おからなど)です。

野菜の摂取量は1日350gを目安としています。

飽和脂肪酸・コレステロールを多く含む食品をなるべく控え、食物繊維を積極的に食べることで、高コレステロール血症の予防・改善を目指しましょう。

運動療法

公園でヨガをする女性

運動することは中性脂肪(トリグリセリド)の低下・HDLコレステロールの増加につながり、LDLコレステロールの改善につながります。

HDLコレステロールには血液中のLDLコレステロールを回収する役割があり、HDLコレステロールが増えると回収できるLDLコレステロールの量も増加します。

運動不足はHDLコレステロールの低値を招き、結果的にLDLコレステロールの上昇につながります。

LDLコレステロールを低下させるために有効なのは、多くの脂肪を燃焼することのできる有酸素運動です。

運動内容・ウォーキング
・スロージョギング
・サイクリング
・ラジオ体操
・水泳、水中歩行
・太極拳
・ベンチステップ運動(ステップ台という踏み台を使用し、音楽に合わせて昇降運動をするエクササイズ)、エアロビクスダンス、社交ダンスなど太ももとお尻の筋肉を大きく動かす運動
時間・頻度・1日30分以上の運動を毎日行うことが望ましい
・短時間の運動を1日に何回か行うのもよい
・毎日運動するのが困難な場合、最低でも週に3回は行う(運動の合計時間が週に180分以上)
運動強度中等度かそれ以上の有酸素運動(楽に行える程度~少しきつめ)

ちなみに中等度の強度とは、「息が少し弾む程度の運動」です。

脈拍数の目安
運動の目安となる脈拍数(回/分)
         =138-(年齢/2)

いきなり激しい運動をすることは心臓や腎臓に負担が掛かり逆効果になる恐れがあるため、主治医にどの程度運動を行うとよいか確認しましょう。

高齢者や心疾患・脳卒中などの持病がある方や腰・関節などに痛みのある方は特に注意が必要です。

自分の健康状態や基礎体力・年齢・体重を考慮しながら、「長く続けられる」習慣を身につけていくことが大切です。

運動の時間を十分に確保できない場合は、早歩きや階段を使うなど日常生活での活動量が増えるよう工夫することをおすすめします。

日常生活で活動量を増やす工夫
・エレベーターやエスカレーターを使用せず、階段で昇降する
・早歩き(1分間に100m進む速度)で歩幅を大きくする
・車はなるべく使わず、徒歩や自転車で目的地に向かう
・掃除機を使わず、モップや雑巾などを使って掃除をする
・歯磨き中はかかとの上げ下げ運動をする
・電車の中や信号待ち、料理の時に「つま先立ち」をする

また、運動は内臓脂肪を減少させ、肥満の改善に役立ちます

体重が増えると内臓脂肪・中性脂肪の増加につながり、LDLコレステロールが高まる一因となります。

体重を減らすことで、動脈硬化の原因となる高血圧や糖尿病にも好影響があります。

減量の目安はBMI(ビー・エム・アイ)という世界共通の肥満度の指標で評価することができます。

BMI=体重(kg)÷[身長(m)の2乗]
日本ではBMI25未満を目標に減量を行うことが奨められています。
18.5未満:低体重 18.5以上25未満:普通体重 25以上:肥満

自分の適正体重を把握し、無理のない範囲で減量を行っていくことが重要です。

薬物療法

散らばった内服薬

食事療法と運動療法を積極的に行ったにも関わらず総コレステロール値・LDLコレステロール値やHDLコレステロール値・中性脂肪の数値が改善せず、動脈硬化の進行の危険がある場合は、薬物療法を行うことが検討されます。

脂質異常症の薬は「コレステロールを下げる薬」「中性脂肪を下げる薬」「コレステロールと中性脂肪の両方を下げる薬」の3種類に分けられます。

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効果種類成分名(商品名)作用副作用
コレステロールを下げるスタチン系製剤ロスバスタチン(クレストール)/ピタバスタチンカルシウム(リバロ)/プラバスタチンナトリウム(メバロチン)/シンバスタチン(リポバス、シンスタチン)/フルバスタチンナトリウム(ローコール)/アトルバスタチン(リピトール肝臓のコレステロール合成を抑制し、主にLDLコレステロールを低下させる横紋筋融解症(0.01%)、腹痛・吐き気などの胃腸症状、肝障害 など
陰イオン交換樹脂(レジン)製剤コレスチラミン/コレスチミドコレステロールを体外へ排出する動きを促進する比較的少ないが、たまに便秘・腹部膨満感・皮膚症状が現れる
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬エゼチミブ(ゼチーア)コレステロールの吸収を抑制し、血中コレステロールを低下させる比較的少ないが、稀に横紋筋融解症・アナフィラキシー症状・肝障害を引き起こす
中性脂肪を下げるフィブラート系製剤クロフィブラート(ビノグラック) ベザフィブラート(ベザトールSR) クリノフィブラート(リポクリン) フェノフィブラート(トライコア、リピディル) ペマフィブラート ( パルモディア)中性脂肪の合成を阻害する稀に横紋筋融解症を引き起こす
EPA製剤イコサペント酸エチル (ロトリガ)脂質の合成を抑えたり、血液を固まりにくくする抗血栓薬(ワーファリン)を内服している方が服用すると、出血しやすい
オメガ-3脂肪酸オメガ-3脂肪酸エチル (ロトリガ)肝臓からの中性脂肪の分泌を抑え、血液中の中性脂肪の消失を促す出血を伴う病気の方は血が止まりにくい。また下痢・吐き気・発熱・皮膚や白目が黄色くなる 
上記の両方を下げるニコチン酸誘導体製剤トコフェロールニコチン酸エステル(ユベラN) /ニコモール(コレキサミン) /ニセリトロール(ペリシット)肝臓での中性脂肪・リポタンパク質の合成を抑え、LDLコレステロール値を低下させるビタミンの1種であるため、副作用はあまりない

薬物療法は、脂質の値が改善するまで長期的に継続する必要があります。

特に家族性コレステロール血症では、食事療法・運動療法だけでは改善が難しいため積極的に薬物療法を行うことが必要です。

自分に処方されている薬や、今後処方される可能性のある薬の効果と副作用についてしっかりと把握しておきましょう。

コレステロールが高いと出る症状についてよくある質問

ここからは、コレステロールや脂質異常でよくある疑問について解説していきます。

どんな人が脂質異常症になりやすい?

脂質異常症になりやすいのは、主に偏った食生活や運動不足など生活習慣が乱れている方です。

また、下記の項目に当てはまる方も脂質異常症になりやすいといえるでしょう。

・たくさん食べ過ぎている(過食)
・動物性脂肪やコレステロールの多い食品を好んで食べる
・脂質や糖分の多い高カロリーな食品をよく食べる
・過剰に飲酒している
・喫煙している
・高血圧や糖尿病の持病がある
・遺伝的要因(家族コレステロール血症)
・更年期(女性ホルモンのエストロゲン低下によるもの)

脂質異常症の要因は生活習慣に関連した項目が多く、それらは行動を変えることでリスクを減らすことができます。

健康診断などの結果でコレステロールの上昇を指摘された方は、積極的に生活習慣を見直して予防・改善に努めましょう。

遺伝は関係ある?

遺伝的に血液中のLDLコレステロールが高くなることはあります

生まれつき血液中のLDLコレステロールが増加する状態で、これを「家族性高コレステロール血症」といいます。

LDLコレステロールを分解する役目のある「LDL受容体」に遺伝的な変異があり、LDLコレステロールをうまく分解できなくなることで起こります。

子供の頃から長期的にコレステロール値が高い状態が続いてしまうため、若年のうちから動脈硬化がじわじわと進行します。

家族性コレステロール血症には3つの特徴があり、このうち2項目が該当する場合に診断されます。

1.高コレステロール血症:未治療の状態でLDLコレステロールが180mg/dl以上
2.黄色腫または皮膚結節性黄色腫
3.二親等までの家族に家族性コレステロール血症の患者がいる、または冠動脈硬化症(狭心症・心筋梗塞)の発症

家族性コレステロール血症では、若いうちから動脈硬化が進行するため、30~40歳の若年でも狭心症・心筋梗塞・脳梗塞などの発症リスクがあります

ちなみに、心筋梗塞は死因の60%を占めています。

家族性コレステロール血症の患者は、食事療法と運動療法だけではなかなか改善しません。

そのため、医師と相談をしながら内服薬での治療と併用する必要があります

なるべく若いうちから治療を開始し、動脈硬化の進行を防ぐことが重要です。

脂質異常症で食べてはいけないものは?

脂質異常症と診断されたら、「LDLコレステロールを増やす食品」と「中性脂肪を増やす食品」は控えましょう

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LDLコレステロールを増やす食品バラ肉やベーコンなど脂肪分の多い肉・乳製品(バター・チーズ・ホイップクリームなど)・チョコレート・アイスクリーム・ヤシ油・パーム油・マーガリン・レバー卵・レバーやあん肝などの内臓類・シュークリーム・魚卵・うなぎ・いか・エビ など
中性脂肪を増やす食品アルコール飲料・牛肉や豚肉など脂質の多いもの・甘い菓子類・ジュース・甘みの強い果物・バター・クリーム

乱れた食生活は脂質異常症の大きな原因となります。

脂質異常症と診断されたら上記の食品をなるべく控え、バランスのとれた健康的な食生活にシフトしていくことが大切です。

病院へ行くべきタイミングはいつ?

定期的な健康診断などで「LDLコレステロール値や中性脂肪が基準値よりも高め」と指摘された時点で病院を受診することをおすすめします。

脂質異常症になると自覚症状がない場合でも動脈硬化は進行しており、最終的に狭心症や心筋梗塞・脳梗塞・脳出血を発症する可能性があります。

現在自覚症状がなく「脂質異常症である」と指摘された場合は一般的な内科、すでに心血管疾患の進行が疑われる場合は循環器内科や血管外科を受診しましょう。

脂質異常症を放置すると気づかないうちに悪化している危険があるため、病院を受診して血液検査を定期的に行い検査値の変化を把握しておくことが大切です。

コレステロール値が高いと出る症状についてのまとめ

コレステロール値が高い場合でも自覚症状は現れず、自分で気づくことはありません

しかし、黄疸腫や脂質異常症・動脈硬化など重大な疾患を引き起こすリスクが高まります。

特に動脈硬化は、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞・脳出血など命に関わる疾患につながる一因となるため注意が必要です。

コレステロール高値を指摘されたら早めに病院を受診し、定期的な血液検査でコレステロール値の管理を行うことをおすすめします。

そして健康状態やコレステロール値の動向によって食事療法・運動療法・薬物療法を組み合わせて長期的に治療を続け、コレステロール値を改善していくことが大切です。

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