
【医療コラム】気づきにくい高齢者の貧血
自分で気づきにくいのが、高齢の方の貧血です
あいクリニック平尾 院長の奥村です。貧血とは血液中の赤血球の数が減少したり、ヘモグロビン(血色素)の値が低下することです。ヘモグロビンとは赤血球中の酸素を体のすみずみまで運ぶタンパクです。世界保健機関では血液0.1リットル中のヘモグロビン値が男性13グラム以下、女性12グラム以下を貧血としていますが、加齢により赤血球数やヘモグロビン値が減少するため、日本では65歳以上の方は男女問わずヘモグロビン(Hb)値が11グラム未満を貧血としています。
貧血の症状の多くは動悸、息切れ、疲れやすいといったことですが、ご高齢の方は日常生活の活動量が少ないため貧血に気づかないことがよくあり、だるい・微熱がある・なんとなく元気がないといった症状のことがあります。また認知障害による精神神経症状、狭心症などの循環器症状、食欲低下などの消化器症状があり、調べてみたら貧血があったということも多いです。
原因として鉄分不足の鉄欠乏性貧血が最も多く、ビタミンB12や葉酸の欠乏も原因になります。これは年齢とともに食事量が減りタンパク質やミネラルが不足してくることが一因です。また痔による肛門からの出血や胃・腸からの出血が原因になることもあります。感染症や膠原病などの慢性炎症に伴う貧血・腎臓機能低下に伴う貧血・悪性腫瘍に伴う貧血・薬剤による貧血など二次性の貧血もあります。まれですが骨髄異形成症候群・多発性骨髄腫などの血液の病気による貧血があります。精密検査をしても原因不明の場合、加齢による老人性貧血といわれるものもあります。
年に一度は検診で貧血がないかをチェックし、体に吸収されやすいヘム鉄の多い肉・魚のタンパク質と鉄吸収を助けるビタミンCを毎日とることを心がけましょう。
ヘム鉄の多い食品
レバー
あさりの佃煮
煮干し
卵黄
植物性より、動物性の鉄分(ヘム鉄)の方が吸収率が高く、効果的に鉄分をとることができます。
一言メッセージ
貧血とピロリ菌は深い関係があります。ピロリ菌は胃がんや胃潰瘍の原因のひとつとされていますが、鉄剤に反応しない鉄欠乏性貧血の原因のこともあります。治療しても改善しない貧血のときはピロリ菌の検査もお勧めします。
関連→医療コラム「胃の不調」
執筆者プロフィール
あいクリニック平尾 院長 奥村 光絵 (おくむら・みつえ)
昭和大学医学部卒業
・日本内科学会認定総合内科専門医
・日本血液学会認定血液内科専門医
・日本総合健診医学会 日本人間ドック学会認定 人間ドック健診専門医指導医
・難病指定医
・日本医師会認定産業医
がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修修了
東京都かかりつけ医認知症研修修了
昭和大学藤が丘病院、NTT関東病院を経て当財団に入職。あいクリニック(多摩市)勤務後、あいクリニック平尾院長に就任。
2018年1月10日 カテゴリー(あいクリニック平尾): 医療コラム。
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