【ドクターコラム】ラジオと共にある暮らし

【ドクターコラム】
ラジオと共にある暮らし

みなさん、こんにちは。医師の佐々木です。

現代社会においては、すでにさまざまなコミュニケーションツールが普及し、受動的にテレビを視ることから進化を遂げ、視聴者が積極的に番組に参加できるような操作が、テレビリモコン上で簡単に行える時代になりました。またそれ以外にも、インターネット上でさまざまな電子媒体が登場しています。
まさに、一家団欒の中でテレビを視ていた時代からは、隔世の感があります。しかしそうした中で、最近その価値が見直されてきている『古いもの』があります。そう、それは『ラジオ』です。

ラジオは、視覚に頼らず、あくまで『聴くこと』によってのみ情報が得られるという点で、そもそも刺激も極めて限られたものとなっています。しかしながらこの『限られた』という側面において、テレビと比較し、脳内でのイメージの構築と増幅が促され、それが脳の賦活化(ふかつか)に繋がり、結果として高齢者の認知症対策としても優れていると、国内ではすでに複数の研究者が、ラジオの利点について言及しています(残念ながら、海外の英語論文において、その論拠を見出すことはできなかったのですが)。

細かい部分では各提唱者によって差異がありますが、概ねその要旨は以下のようなものです。そもそも、コミュニケーションにも大きく関わり、そのプロセスを起動させる引き金となるのは、視覚よりもむしろ聴覚であるということ。したがって、『ラジオを聴くこと』を契機とした聴覚情報の処理の開始が、そのまま聞き手の想像力も交えながら、最終的に脳全体の働きを強化させるというのです。さらに、ラジオを聴き続けることで、持続的な好影響も享受することができる・・・実際に、複数の被験者を使って、ラジオ聴取前後での脳内の器質的な変化に関し、MRI画像で効果を比較したり、また、特に奨められるラジオ番組として、具体的に『天気予報が最も脳を活性化させる』、と述べるものまでありました。

しかしながら前述のとおり、これらは未だ『ひとつの説という域を出ない』のも事実です。ですから、是非とも直ちに実践を、と推奨している訳ではありません。ただ、いささか個人的な見解にもなりますが、このような議論をきっかけに、半ば忘れ去られた存在でもある『ラジオ』を見直し、そして『聴くこと』に注意を払い、付随して集中力を高めることは、そう悪いことでもないように思います。

執筆者プロフィール

あいクリニック中沢 医師
佐々木 滋(ささき・しげる)

【専門】総合内科
日本外科学会認定登録医

(広報誌『あっぱれ』2024年夏号掲載)

 


2024年8月15日 カテゴリー(あいクリニック中沢): 医療コラム

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