【医療コラム】味覚障害

【医療コラム】味覚障害

高齢者に多い味覚障害。その原因は亜鉛不足かも。

あいクリニック中沢 院長の明石です。今回は「味覚障害」についてお話します。
高齢化に伴い「味を感じにくい」、「食べ物の味が変わった」「食事がおいしくない」という人が増えています。

原因は?

①薬物性(22%)
薬の副作用の場合は、内服後2~6週間で現れやすい。

②亜鉛欠乏性(15%)
血中の亜鉛の低下があり、偏食、不規則な食習慣、食品添加物などが原因。血清亜鉛値は69μg/dl以下が低値。

③特発性(15%)
血中亜鉛濃度などの検査が正常で、原因が不明な場合。その大部分は食事が原因となっている潜在的亜鉛欠乏症と考えられています。

④心因性(11%)
軽度のうつ病、神経症など。

⑤全身性疾患
感冒(かぜ)、糖尿病、腎不全、甲状腺機能低下、消化器疾患など。

⑥口腔粘膜疾患
カンジダ感染症、舌炎、舌苔、口腔乾燥など。

⑦その他
中枢・抹消神経障害など。

特に②,③,⑤において直接的、間接的に亜鉛欠乏が原因で、亜鉛欠乏は全体の約70%に及ぶと考えられています。

予防と治療

舌苔の除去や義歯などを含め口腔は清潔に保ち、規則的でバランスの良い食事を取りましょう。特に亜鉛を多く含む牡蠣やレバー、牛肉、乳製品、しいたけ、海草はおすすめです。しかし、食事から吸収される亜鉛は微量で、すでにおいしくないと感じている食事から十分な量の亜鉛を摂取することは困難と考えます。
昨年、原因の多くを占める亜鉛不足を治療する酢酸亜鉛製剤が承認され、内服加療で良い結果が出ています。なお、薬剤性味覚障害は原因となる薬の早めの中止・減量で回復しますが、大事な薬でもあるため自己判断せず必ず主治医に相談しましょう。「味覚障害は命に関わらない」と侮るのは禁物です。体重減少から体や認知機能の低下に関係するだけでなく、人生の価値そのものにつながるのです。

 

執筆者プロフィール

社会医療法人河北医療財団 副理事長
社会医療法人河北医療財団 多摩事業部 事業部長
あいクリニック中沢 院長

明石のぞみ (あかし・のぞみ)

聖マリアンナ医科大学医学部卒
日本内科学会 認定内科医
日本老年医学会 老年病専門医
日本リハビリテーション医学会 認定臨床医

あっぱれ 2018年春号掲載

 

 


2018年4月16日 カテゴリー(あいクリニック中沢): 医療コラム

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