【医療コラム】在宅医療、なぜ注目?

【医療コラム】在宅医療、なぜ注目?

最近、「在宅医療」という言葉を新聞などでもよく目にするようになりました。年間約1万2千件の訪問診療を行っているあいクリニックで、院長を務める濱谷が解説します。

そもそも、在宅医療って何?

「在宅医療とは、その名の通り自宅などの生活の場で繰り広げられる医療のことです。外来も入院も患者さん自身が足を運びますが、在宅医療で足を運ぶのは、医療従事者です。医師が定期的にご自宅に伺う訪問診療をはじめ、看護師・リハビリ専門職・薬剤師・管理栄養士・歯科医師・歯科衛生士なども訪問します。対象者は、加齢や病気・認知症などで通院が難しくなった方や、退院後の自宅療養を希望される方、がん末期の方やお看取り期の方などです」

在宅医療の良さとは?

「患者さんの希望が優先され、その方らしく過ごせるというのが一番のメリットではないでしょうか。入院されたことがある方はわかると思いますが、病院では治療が最優先されるため、どうしても生活が制約されます。出された食事を黙って食べ、ベッドで過ごす時間が多くなる。特にご高齢の方は、入院中に心身の機能が低下してしまったり、認知症が進んでしまうことも見受けられます。一方、在宅医療は暮らしの一部に医療が溶け込んでいます。患者さんの日々の生活の質を尊重するため、わたしたち医療職は、ご本人やご家族と一対一で向き合い、病気がある中でもなるべく快適に暮らすための治療をします。入院中は余命いくばくと心配された方が、ご自宅に戻るとこちらが驚く程いきいきとされたり、弱っていた方が趣味や家事で心身の機能を取り戻していく様子をこれまで何度も目にしてきました。治療と環境の力の相乗効果が在宅医療にはあるようです。もちろん、急激に病状が悪化し集中的な治療が必要な時には在宅から入院に切り替えることもできます。在宅医は病院側とも連携して包括的にサポートしますので、その点も安心していただきたいですね。

経済的なメリットも

また、病状や治療・検査の内容にもよりますが、在宅医療は入院に比べ経済的なメリットも大きいと言えるでしょう。医療費をはじめ、室料や食費・その他の経費が抑えられます。例えば、当クリニックで一般的な月2回の訪問診療を受ける場合、1割負担の方で1か月の費用は7~8千円程度です。今後、高齢者の急増に伴い社会保障費が膨大になることを考え、国も在宅医療を推進しているという側面もあります。住み慣れた地域で最期まで自分らしく過ごすための地域包括ケアシステムの構築には、看取りまで含めた在宅医療が欠かせません。

人生100時代、なるべく元気で過ごしたいものですが、多くの方に医療を必要とする時が訪れます。その時に、自分がどのような生活を続けたいのか。最期に過ごす場所はどこにするのか。その選択肢の一つとして在宅医療を知っていただければうれしいですね」

 

執筆者プロフィール

あいクリニック 院長 濱谷 弘康(はまや・ひろやす)
【専門】消化器外科
■認知症サポート医
■日本医師会 認定産業医
大学病院を経て2001年に入職。以来約20年間にわたり、外来診療から訪問診療まで多くの高齢者のケアに従事している。

あっぱれ 2020年春号掲載

 


2020年4月10日 カテゴリー(あいクリニック): 医療コラム

ブログカテゴリー

ブログ記事一覧

デイケア

2024.03.06
2月クラフト

デイケア

2024.02.26
1月初詣